アルミニウムや銅などの検査データ改ざん問題に揺れる神戸製鋼所の川崎博也会長兼社長は12日、「品質不正によって神戸鋼の信頼度はゼロに落ちたと考えている。私をトップリーダーとして早い段階で信頼回復に努めて参りたい」と述べた。

  経済産業省の多田明弘製造産業局長と会談後、省内で記者団に対して述べた。神戸鋼がこの問題を10月8日に発表して以来、川崎氏が報道陣の前に出るのは初めて。川崎社長によると、多田局長からは、新たな不正の特定の調査を早期に完了させること、安全の検証結果を2週間程度をめどに公表すること、徹底的な原因分析と全社的な再発防止策を含む報告を1カ月以内に行うこと、の3点の指示を受けたという。

  川崎社長はデータが改ざんされたアルミや銅製品は約200社に納入されたが、そのうち100社程度で個別訪問による顧客への説明を終えたと説明。一方、海外グループ会社も含めた調査は継続中であるとして「今後、新たな不正事案が発生する可能性はあり、判明次第公表させていただく」とも述べた。アルミ・銅製品などにおいて、新たな疑わしい複数の案件があるとして、調査を進めた上で近く記者会見を開く考えを示した。経営責任については「調査委員会の検証が終わってから考えたい」と述べた。

  記者団に公開された多田局長との会談の冒頭で川崎社長は「ユーザーや消費者の皆さま、経産省の皆さまをはじめ多くの方々にご不信とご心配をおかけしており、重ねて深くおわび申し上げる」と謝罪。その上で「まずは出荷済みの不適合品の安全検証、確認が再優先課題と考えている。万全の体制で取り組んでいく」と述べた。

JIS基準下回る

  JR西日本の来島達夫社長は12日の都内での記者会見で、「N700A」型新幹線の台車用部品でデータが改ざんされた148個の神戸鋼のアルミ製部品が使用されていたことが判明したと指摘。日本工業規格(JIS)基準に沿ったものを求めているが、この水準をわずかに満たしていないとの報告がメーカー側からあったという。「十分な強度設計を行っているので、安全のレベルに問題はない」というが、早急に問題のある部品は交換する予定だと述べた。

  またJR東海の広報担当富久保晴彦氏も、同じ部品についてメーカーや神戸鋼からJIS基準を下回っているとの説明を受けたと話した。台車を支える部品など計310個が同基準を満たしておらず、今後の定期検査で全て交換する予定。

  神戸鋼の川崎社長は「契約の合意内容を確認する意味でもJISに準拠するという表現があり、JISの認証ではないため法令違反には当たらない」と述べた。

  神戸鋼は、銅やアルミ製品以外にも自動車ギアなどに使用される鉄粉や液晶材料などに使われるターゲット材でもデータ改ざんの製品を出荷していたことを確認したと11日に発表。一連の不正行為が日本の製造業全体への不信感も高めているとの見方に対しては、「われわれの会社の信頼低下だけにとどまらないことは十分に理解している。いち早く信頼回復に努力したい」と述べた。

  ジェフリーズのアナリスト、タン・ファム氏は12日のブルームバーグTVのインタビューで、今回の不正が「神戸鋼の終わりを意味するものではないが、現経営陣の終わりにはなるかもしれない」とし「結果として神戸鋼のばら売りという事態につながる可能性がある」と指摘。その場合、国内鉄鋼業界の再編が進展する可能性があると話した。JFEホールディングスであれば神戸鋼の鉄鋼事業の買収に乗り出す可能性はあるとして「業界再編の進展のためのシナリオとしてはとてもいい」との認識を示した。

  神戸製鋼の12日の株価終値は前日比4円(0.5%)高の882円と3営業日ぶりに反発した。前日までに2日間で株価は36%下落していた。

  野村証券の松本裕司アナリストは同日付のリポートで「これまでに明らかになったさまざまな悪材料はすでに株価に織り込まれたと考えられる」と指摘。一方、データ改ざんの対象製品がさらに広がる可能性や自動車などの主要販売先からのリコールが実施され、神戸鋼が負担する可能性もリスクとして残っているとして「想定し得るすべての悪材料が織り込まれたと判断するのは現時点では難しい」との見方を示している。

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