主要政党党首が8日、テレビ討論などにそろって臨み、衆院選(10日公示、22日投開票)に向けた論戦が始まった。安倍晋三首相(自民党総裁)はフジテレビの番組でアベノミクスは目標達成まで7合目まで来たと述べ、成果を強調。希望の党代表の小池百合子東京都知事は一般国民に景気回復の実感がないと指摘した上で、規制改革などの「スピードが遅い」と批判した。

  安倍首相は同番組で、国内総生産(GDP)の拡大や有効求人倍率の改善などをアベノミクスの成果として列挙。「登山は7合目からが厳しい、少子高齢化という最大のチャレンジにいよいよ取り掛かる」と語った。公明党の山口那津男代表も今後の政策課題として「子育てや社会保障の基盤をしっかりさせる」と述べた。

党首討論に臨む安倍首相と山口公明党代表、小池希望の党代表ら
党首討論に臨む安倍首相と山口公明党代表、小池希望の党代表ら
Photographer: Akio Kon/Bloomberg

  希望の小池氏は「一番足りない部分は成長戦略だ」と指摘。日本維新の会代表の松井一郎代表(大阪府知事)もアベノミクスは「5合目か7合目で足踏みしている」と述べ、規制緩和が不十分と述べた。立憲民主党の枝野幸男代表は安倍政権下で格差が拡大したと指摘。共産党の志位和夫委員長も家計消費など「経済の土台の部分が冷え込んでいる」と語った。

  安倍首相が9月25日に衆院解散を表明後、小池知事らによる希望の党結成と民進党候補者の合流を巡る混乱で野党再編が進んだ。今回の衆院選では自民、公明の連立与党に対し、選挙協力を進める希望と日本維新、立憲民主と共産、社民両党の3極が戦う構図となっている。

消費税

  衆院選の争点の1つとなるのは消費税だ。安倍首相は2019年10月に消費税率を10%へ引き上げる際に増税分の一部の使い道を変更し、教育無償化などの財源に充てる新方針を打ち出し、衆院解散に踏み切った。消費税率は当初、15年10月から10%に増税する予定だったが、首相は2回にわたって延期している。

  安倍首相はNHKの番組で使途変更する理由について、子育てや介護への不安を解消するのが狙いと説明。ただ、景気回復は「十分だと考えていない。十分に消費税を上げることができる状況をあらゆる政策を総動員してつくっていきたい」とも述べた。公明の山口氏は増税時に「消費が冷え込まないような工夫をしなければならない」と述べ、10%増税時の食料品などへの軽減税率導入の意義を訴えた。

  これに対し、希望の小池氏は同番組で「デフレ経済が十分治っていない中で増税ということは一旦、立ち止まるべきだ」と述べ、増税凍結を主張。消費増税の3党合意を主導した旧民主党出身の枝野氏は、現在の経済状況などを考慮すると「今決められているのを予定通り進めるのは反対」と語った。共産の志位氏も増税中止を求めた。

北朝鮮

  安倍首相が解散に踏み切った理由として、もう一つ挙げているのが緊迫化する北朝鮮情勢への対応だが、希望の小池氏がNHKの番組で「外交安全保障については安倍政権を支持する」と明言するなど、明確な対立軸にはなっていない。

  日本記者クラブの討論会で首相は、国連安全保障理事会が採択した制裁決議により、「時を経るとだんだん事態が緊張していく可能性もある」と指摘。11月に予定している日米首脳会談などを前に、「しっかりと圧力をかける」という政府方針への国民の信を得たい、と語った。

  立憲民主の枝野氏はNHK番組で、「脅威からわが国の領土、領海、領空、そして国民を守るという点において安倍政権の外交安全保障政策を支持する」と述べた。共産の志位氏は北朝鮮の核・ミサイル開発は「断じて容認できない」として国連安保理決議の厳格な実行が必要と述べたが、「先制的な軍事力行使は絶対にやるべきではないと米国に求めるべきだ」と語った。

  一方、日本記者クラブの討論会では、森友学園、加計学園問題への首相の対応も取り上げられた。希望の小池氏は、これまでの首相の説明について「十分な納得が国民の間にいってないのではないか」と指摘。首相は「一部説明が足りない点、あるいは姿勢については反省すべき点はあると思う」としつつ、これまでの国会審議で「私が関与したと言った方は一人もいない」と述べた。

憲法

  今回の衆院選は自民党が憲法改正案の国会提案、発議、国民投票の実施を政権公約で掲げており、結果次第で国会での議論が加速する可能性がある。

  安倍首相は7日夜のネット討論で自衛隊の存在を憲法に明記したいと改めて強調。公明の山口氏は9条改正については自民党内で具体案が集約されていないことから、その議論を「見守っていきたい」と述べるにとどめた。

  希望の小池氏は憲法9条改正について「憲法全体を見直す中において避けられない議論だ」と発言。安倍首相に対して自衛隊の存在を明記すると「防衛省と自衛隊の関係は法的にはどうなるのか。逆に自衛隊の方が上位にくるのではないか」と質問した。安倍首相は防衛省との関係は「変わらない」と述べ、「シビリアンコントロール(文民統制)をしっかりと明記していけば、よりくっきりとしたものになっていく」と語った。

  一方、立憲民主の枝野氏は「憲法を不磨の大典とは思っていない」としながらも、自衛隊の存在明記は「今さら条文に書かなければならない必要性はない」と語った。

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