次期FRB議長候補の顔ぶれ紹介-ハト派、タカ派多士済々

  • イエレン、コーン、パウエル、ウォーシュ、テーラーの5氏を比較
  • トランプ政権にとってプラス・マイナスどちらの人材かも検証
Photographer: Andrew Harrer/Bloomberg

トランプ米大統領が次期連邦準備制度理事会(FRB)議長に選考する候補が絞られてきた様子だ。具体的には、大統領が面談したとされる現職のイエレン議長、コーン国家経済会議(NEC)委員長、パウエルFRB理事、ウォーシュ元FRB理事の4人に加え、テーラー元財務次官だ。

  明白な最有力候補と言える人物はおらず、以下に比較するこの5人以外の候補が指名される可能性もまだある。大統領は今月中に人選の判断を下す見通しだとしており、指名の発表後は来年2月のイエレン議長の任期満了をにらんで、上院での指名承認に向けたプロセス始動となる。

イエレン氏

タカ派かハト派か:2014年2月の就任以降、低金利政策を維持してきたイエレン議長(71)は、緩やかな引き締めと、やはり緩やかなバランスシート縮小を一貫して支持してきた。アマースト・ピアポント・セキュリティーズのチーフエコノミスト、スティーブン・スタンリー氏はイエレン議長について、「超ハト派」だが「タカの羽も多少生えつつある」と評した。

イエレン議長

Photographer: Andrew Harrer/Bloomberg

  イエレン議長は先月、インフレ率が金融当局の目標である2%を下回っている正確な理由は分からないと認めた。低インフレは金利を「緩やかなペースで調整する論拠を強める」とする。

規制に関する見解:イエレン議長は07-09年の金融危機を受けた銀行規則の強化を擁護してきた。8月には「規制の枠組みの調整は小幅にとどめるべきだ」と語った。

プラス面:トランプ大統領は7月の米紙ウォールストリート・ジャーナル(WSJ)のインタビューで、自身が低金利を望むと話した上で、イエレン議長は「低金利政策を講じてきた人物だ」と付け加えた。

マイナス面:イエレン議長はオバマ前大統領が指名した民主党員であり、オバマ氏が主導した規制政策をトランプ政権は変更したい考えだ。また、イエレン議長は学者だが、現政権はビジネス経験者を主要ポストに起用するのを好んできた。

コーン氏

タカ派かハト派か:手掛かりは乏しいが、コーン氏は少なくともイエレン議長と同じくらいハト派である公算が大きい。ゴールドマン・サックス・グループ社長を務めていた15年、「インフレが2%に近づくか、近づいているとの何らかの兆候がない中で、利上げの正当な論拠はない」と述べ、イエレン議長の利上げ方針に疑問を投げ掛けた。

コーン氏

Photographer: Andrew Harrer/Bloomberg

  コーン氏(57)は16年3月の講演で、透明性向上に向けた米金融当局の動きについても、「非常に確定的なフォワードガイダンスが市場に大いなる混乱をもたらした」として批判していた。

規制に関する見解:コーン氏は今年2月、規制の巻き戻しがホワイトハウスの中心的な優先課題だとし、「米国の雇用拡大のためには規制緩和を進め、規制のプロセスを減らす必要がある」と論じた。

プラス面:トランプ大統領の税制改革案推進を手助けしてきたコーン氏は、低金利を選好し規制緩和を推し進める大統領の二つの目標に合致した人物と考えられる。一方、大半の共和党当局者はもっとタカ派的だ。

マイナス面:バージニア州シャーロッツビルで起きた暴力事件を巡る大統領の発言を公然と批判したことで、コーン氏が指名される見通しは後退した。最も論争を呼んだ取引にゴールドマンが従事していた当時の経営幹部であり、危機前に住宅市場の冷え込みを想定した取引の管理も支えていた。指名承認の公聴会に臨むことになれば、こうした経緯が徹底的な精査の対象となるのは確かだ。

パウエル氏

タカ派かハト派か:ブルームバーグ・インテリジェンス(BI)の「Fed Spectrometer」に照らせば、パウエル理事は金融政策面で中立的とされる。12年の就任以降、連邦公開市場委員会(FOMC)で反対票を投じたことはなく、エコノミスト30人を対象とした今年3月の調査では米国のセントラルバンカーの平均より若干ハト派とされた。

パウエル氏

Photographer: T.J. Kirkpatrick/Bloomberg

  パウエル理事(64)は8月の段階で、低インフレを「ミステリー(謎)」と呼んだイエレン議長のコメントを先取りするような発言をしており、低インフレによって金融当局は利上げに辛抱強くいられると話した。パウエル理事は12年の量的緩和(QE)第3弾開始に非公式に疑念を口にしたが、バーナンキFRB議長(当時)が推進するこの措置に最終的に賛同した。

規制に関する見解:パウエル理事は今月、危機後の改革の成果を保護したいと述べつつも、「もっと効率的にできるだろう。それがまさにわれわれが積極的に取り組んでいるプロセスだ」と付け加えた。

プラス面:政治ニュースサイトのポリティコによれば、ムニューシン財務長官はパウエル理事を支持しているという。ドイツ銀行のチーフエコノミスト、ピーター・フーパー氏はリポートで、「パウエル氏は共和党員であり、FRBとFOMCを熟知している上、金融経済に関する見識が印象的だ」と記した。

マイナス面:米金融当局の大幅刷新を念頭に置くトランプ政権にとって、パウエル理事が象徴する「継続性」は魅力的でないかもしれない。キャピタル・エコノミクスの米国担当チーフエコノミスト、ポール・アシュワース氏はリポートでパウエル理事について、金融業界の規制を強化した10年制定の金融規制改革法(ドッド・フランク法)を「おおむね支持しているように見受けられる」と論評。それは、規則を減らしていこうとする現政権の計画に相反すると指摘した。

ウォーシュ氏

タカ派かハト派か:ウォーシュ氏は取り沙汰されている候補者の中で最もタカ派的な部類に属する。ウォーシュ氏は今年1月、米金融当局が最大限の雇用と物価安定の目標達成に近づいていると語り、従来の目標から「金利がとても離れていると見受けられる理由を説明してほしい」と話した。

ウォーシュ氏

Photographer: Daniel Acker/Bloomberg

  ウォーシュ氏(47)は、高水準にある資産価格について金融当局として懸念を抱くべきだとし、「あまりにも油断が感じられる」と言明。「株式市場や債券市場のボラティリティー(変動性)の指標が過去に照らして低位にあるのを目にした場合、私がセントラルバンカーであるならば、安心していられない」と論じた。FRB理事を務めていた際には、QE2に反対を表明したものの、バーナンキ議長の下での団結姿勢を示すため、結局、賛成票を投じた。

規制に関する見解:ウォーシュ氏は7月、規制削減などを通じたトランプ政権の成長戦略を支持する論説を共同執筆した。金融当局の規制は「現時点で、大手銀行を細かく管理し、その利益率を実質的に抑制している」との見解を示した。

プラス面:規制を巡るウォーシュ氏の立場はトランプ大統領とぴったりと重なるため、微調整よりも大幅刷新に動く公算の方が大きい。アマースト・ピアポントのスタンリー氏は、イエレン議長よりハト派的でないが「ウォーシュ氏が金利で教条主義的と受け止められたことは皆無だ」と話す。ウォーシュ氏には個人的なコネもある。ウォーシュ氏の妻は米化粧品会社エスティローダーのグローバルプレジデントを務めるジェーン・ローダー氏で、同氏の父親はトランプ大統領の友人であるロナルド・ローダー氏だ。

マイナス面:候補者の中でウォーシュ氏は最年少で経験も最も少ない。インフレ率が当局目標の2%を下回って推移している状況で、同氏がFRB理事当時に抱いていたインフレ懸念は見当違いだったことが分かった。金融危機の前にウォーシュ氏がウォール街のイノベーションを応援していたことなどを理由に、リベラル派は同氏のFRB議長指名の可能性に反対を唱えている。

テーラー氏

タカ派かハト派か:候補者の中で最もタカ派的な1人であるだろう。成長率とインフレ率に基づいて、設定すべき政策金利を説明した「テーラー・ルール」の考案者のテーラー氏(70)は、ルールに沿った政策運営を提唱し、金融当局があまりにも自由裁量を行使してきたと主張。資産購入を含む非伝統的政策も効果がなかったとする。テーラー氏は1月、金融当局の利上げは「やや後手に回っている」と批判した。

テーラー氏

Photographer: Sam Hodgson/Bloomberg

  経済の潜在成長率の想定にも左右されるが、テーラー・ルールを厳格に適用して政策運営していた場合、イエレン議長のこれまでの任期の大半の時期を通じて、政策金利は実際よりも高めに設定することが求められていただろう。

規制に関する見解:テーラー氏は規制削減が成長促進策の鍵だと述べてきた。「経済の立て直しには足かせを外す必要があり、それは規制改革や税制改革、予算改革、金融改革を意味する」とブログに記している。

プラス面:テーラー氏は過去4つの政権で働いた経歴を持つ。フォード、カーター、ブッシュ(父)政権では経済諮問委員会(CEA)のスタッフやメンバーで、ブッシュ(子)大統領は財務次官(国際担当)に起用した。テーラー・ルールは米金融当局を含む世界の主要な中央銀行当局者が広く参考にしている。

マイナス面:BIのエコノミストは、テーラー・ルールをさまざま形で適用した場合でも、高めの金利を意味するのは「ほぼ確実だ」とみる。トランプ大統領が国内総生産(GDP)伸び率を3%に押し上げたいなら、テーラー氏起用はそれを「一段と困難なものとするだろう」という。

原題:Trump’s Short List for Fed Chair Features These Hawks and Doves(抜粋)

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