仮想通貨で利益を上げるには、臆測を巡らせてビットコインを売買するよりも手っ取り早い方法があるとヘッジファンドは思いついた。新規仮想通貨公開(ICO)に先だって投資することだ。

  テクノロジー企業によるICOで、ヘッジファンドは有利な価格や条件を引き出し、多くの場合はICO後すぐに売り抜けている。この行為は合法だが、1990年代の新規株式公開(IPO)ブームでまん延した取引をほうふつとさせる。当時も優遇された投資家の多くが、売り抜けで大きな利益を得た。

  ICO投資を手掛けるマルチコイン・キャピタル(テキサス州オースティン)のマネジングパートナー、カイル・サマニ氏は「エコシステムにとって健全なことでないし、かなり悪質だ」と話す。「著名ファンドが投資すれば小口の投資家を呼び込みやすくなるだろうと期待して、割安な価格が提供されている。いわゆるグレーターフール理論だ。適正価格ではなくても自分より愚かな投資家がいるなら買うという考えだ」と指摘した。

 

  例えばメッセージアプリのキック・インタラクティブ(カナダ・オンタリオ州ウォータールー)が先週実施したICOを見ると、ヘッジファンドが桁外れに優遇されている。ブロックチェーン・キャピタルとパンテラ・キャピタル、ポリチェーン・キャピタルの3社はキックのICO前に合わせて5000万ドル(約56億3000万円)を投資し、30%の割引を受けていた。保有分の50%をいつでも売ることができるため、大きく値下がりしても利益が出る可能性は高いし、値上がりすれば他の投資家より大きな利益を得られる。

  このICOでキックは117カ国の1万人余りから計1億ドル前後を集めた。

  ICOを実施する新興企業はしばしば、著名ヘッジファンドからの出資を発表して投資を呼び込もうとする。しかしあまり広く知られていないのは、こうしたICO前からの投資家や、場合によっては新興企業の創業者らが、ICO後すぐに売却して利益を確定できるという事実だ。

  デジタル・アセット・リサーチのシニアアナリスト、ルーカス・ヌッツィ氏は「これが業界の問題点であり、質の悪いICOが圧倒的に多い理由だ」と話した。

原題:Hedge Funds Flip ICOs, Leaving Other Investors Holding the Bag(抜粋)

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