日本銀行金融研究所の鹿島みかり制度基盤研究課長(46)が入行した1994年当時、女性職員は幹部候補の総合職も制服の着用が義務付けられていた。自前のブラウスにグレーのベストとスカートで、外出の際にはスーツ姿に。1日に何度も着替えを繰り返したこともある。着用義務が廃止になったのは99年だった。

  2002年に結婚し、娘2人を出産した。08年のリーマンショック時には帰れない日もあり、近くに住む両親に面倒をみてもらったことも。14年からは2年8カ月、国際通貨基金(IMF)へ出向した。出張で海外を飛び回る中、同じくワシントン勤務だった夫が6対4の割合で子育てを担ってくれた。「振り返るととても恵まれていた」と鹿島氏はいう。

鹿島みかり氏
鹿島みかり氏
Photographer: Shiho Fukada/Bloomberg

  制服着用をはじめ、古い慣習が残っていた日銀で女性の活躍が目覚ましい。5月には女性の活躍推進の取り組みが優良として、厚生労働省が認定する「えるぼし」の第3段階(三ツ星)を取得。「採用」「継続就業」「管理職比率」などの5分野全てで最高レベルの認定を受けた。管理職である企画役以上の女性の割合も15年時点の4%から23年までに10%に引き上げる予定だ。

女性支店長

  1986年入行の小高咲札幌支店長(55)は男女雇用機会均等法1期生。「当時は行内結婚したら女性が辞めるのが当たり前」だったが、「意識は明らかに変わってきている」という。結婚しても普通に勤め、どちらかが単身赴任といった例もある。結婚や出産で辞めるという発想も今はない。

  女性の日銀支店長は小高氏で5人目。業務システムの分野に長く、新日銀ネットの立ち上げにも携わった。高校3年になった長男が幼かった頃、病気になれば夫と交代で休み、北海道から親を呼び寄せてしのいだこともある。小高氏は「女性として困難に感じたことはあまりなかった」という。

  4人目の女性支店長である播本慶子横浜支店長(50)は、総務人事局でえるぼし取得につながる「女性の活躍推進に関する行動計画」を策定した。「すべての職員が能力を十分に発揮できるように」というくだりに思い入れがある。「女性だから男性だからというのではなく、いろいろなバックグランドを持った人が、さまざまな制約の中で力を発揮できるようにしていくきっかけになればいい」と語る。

  長男を出産後、1年の育休から復帰した際には「今までのように仕事に時間をかけられなくなる、という漠とした不安はあった」と話す。配属されたのは発券局。金融機関による現金業務の警備輸送会社への委託に向けたルール見直しに携わった。子どもの病気や保育園に入れる準備など、今までなかったような制約や経験の中で取り組んだだけに、「思い出深い仕事になった」という。

指導的地位

  専門特定職で入行した植田リサ金融機構局考査企画課長(46)は考査のプロを目指していたが、04年、総合職に鞍替えした。金融機構だけでなく、市場関連や発券業務など多様な日銀の業務に携わることでキャリアの幅を広げたいと思ったのがきっかけ。行内でも数少ない専門職から総合職へのコース転換経験者だ。

  育休、フレックスタイム、時短-。入行時に比べると断然、働きやすい職場になっている。採用担当も務めた植田氏は「日銀に行ってみようかと手を上げてくれる女性の数は増えている」という。男性職員の育児休暇の取得や、子どもの世話のための早退の事例も相次ぎ、女性の働きやすさにつながると思っている。

植田リサ氏
植田リサ氏
Photographer: Shiho Fukada/Bloomberg

  政府は2020年までに指導的地位に女性が占める割合を少なくとも30%程度とする目標を掲げているが、内閣府によると民間企業(100人以上)における係長相当職は16年に18.6%、上場企業役員は3.4%と依然、低水準にとどまっている。15年12月に閣議決定した第4次男女共同参画基本計画では実態に合わせて民間企業の部長職相当職は10%程度、上場企業役員は5~10%程度に成果目標を事実上、引き下げた。

  4人目の女性審議委員となった政井貴子氏の前職は、新生銀行初の女性執行役員。先例もなく手探りの部分もあったが、日銀では20年近い女性審議委員受け入れの蓄積が「非常にプラスに働いている」という印象を持つ。政井氏は「100点満点はないので今後も試行錯誤が続く」とした上で、「女性を一層戦力化していけるかどうかが課題だ」と語った。

  日銀の野村充総務人事局長は「華々しく活躍している女性幹部職員もさることながら、以前から日銀職員の半数は女性が占め、家庭や私生活との両立を図りつつ幅広い実務をしっかりと支えている」とした上で、今後も彼女たちがいきいきと働ける環境作りを心掛け、「一層の組織活性化につなげていきたい」としている。

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