ニューヨークのメトロポリタン美術館にある会員向けダイニングルームは長年、たくさんの展示室や通路が入り組む広大な館内で見つけるのが非常に困難な場所だった。同美術館のシニア・バイスプレジデント、クライド・ジョーンズ氏は「おいしい食事を提供する美しいスペースが館内にあり、しかも混んでなかった」と話す。

  一部の人にとって、ダイニングルームの最大の魅力はそこだったろう。もう一点は、美術館の会員になれば誰でも、アッパーイーストサイドのこの静かなレストランをゲストとともに訪れ、ガラス窓の外いっぱいに広がるセントラルパークを楽しめるということだ。これほどの素晴らしい眺めは、ニューヨークのレストランシーンの中でも指折りだろう。

  しかし、ギリシャやローマ、アフリカ、オセアニア、米州と幾つもの展示室を抜け、館内奥にあるエレベーターで4階まで行かないとたどりつかないレストランに、にぎわいはない。

最高の席は窓の近く
最高の席は窓の近く
写真家:Daniel Dorsa / Bloomberg

  しかも、幾つもの展示室を通らないとたどりつけないということは、レストランの営業は美術館が開いている時間に限られる。平日の昼間に長いランチ時間をとれる会員ならいいが、そうでない人には使い勝手が悪い。(金曜日と土曜日の夜は美術館が遅くまで開館しているので、ディナーの営業もしている)。

  何年もの間、ダイニングルームの存在は美術館会員の多くにもあまり知られていなかった。だが今年6月、同美術館は初めて、会員でなくても予約ができることにしたと発表。レストラン名も「メンバーズ・ダイニングルーム」からメンバーズを外した。美術館の赤字問題が騒がれた時期と時期的に一致したが、ジョーンズ氏は直接の関係はないと主張。「本質的な部分は、当館の訪問者と会員に食事の選択肢をどう提供していくかということだ」と話した。

マグロの一品は高価な前菜の一つ
マグロの一品は高価な前菜の一つ
写真家:Daniel Dorsa / Bloomberg

  会員であるかないかは、実は大した違いではなかった。基本会員の年会費は100ドル(約1万1300円)で、美術愛好家の大半に支払いは可能だろう。

春タマネギとローストチキンの一品
春タマネギとローストチキンの一品
写真家:Daniel Dorsa / Bloomberg

  だが、メンバーズ・ダイニングルームはその価格がニューヨークの上流層向け。ディナーの前菜は16ドルからで、主菜は37ドル。28ドルのヤシの芽の一品もあるが、こちらは前菜として頂く方がしっくりきそうだ。

  ジョーンズ氏はダイニングルームは「高級レストランを志向している」と語る。その上で、近隣の高級店と比べれば 「ダイニングルームの方が安いことがよくある」と付け加えた。

  ダイニングルームからの眺めは息をのむ美しさだ。どのテーブルからでもセントラルパークやニューヨークの高層ビル群が見える。一方、内装はそれほどでもない。木製パネルの壁とテーブル席は1993年の建築当時から変わっていない。ホテルのカンファレンスルームのような趣で、美術館の中にあるのに壁には絵もかかっていない。

内装はちょっと堅い感じ
内装はちょっと堅い感じ
写真家:Daniel Dorsa / Bloomberg

  サービスは暖かく、手際もいい。しかし、メニューには食通に人気がありそうな品々が並んでいるものの、内容やその味は近隣の高級レストランに匹敵するとは言えない。

イタリア産ソフトチーズとトマトの一品
イタリア産ソフトチーズとトマトの一品
写真家:Daniel Dorsa / Bloomberg

  ジョーンズ氏はメニューは季節や美術館のプログラムに応じて「常に変わる」と話す。「オランダ絵画展を開催中なら、オランダの影響があるメニューになるかもしれない」という。

ヤシの芽の一品
ヤシの芽の一品
写真家:Daniel Dorsa / Bloomberg

  もちろん、食べ物はレストランの一部でしかないだろう。ある土曜日の夕方に訪れると、窓に顔をぴったり付けた孫と食事する祖父母や、夕日が高層ビル群に沈むのをカクテル片手に楽しむ老齢のカップルら、254席あるダイニングルームの少なくとも半分の席が埋まっていた。

原題:Now Anyone Can Eat at the Hidden Restaurant in NYC’s Met Museum(抜粋)

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