同床異夢の消費税解散、財政再建派も積極派も「第一歩」と評価

  • 「増税を明言」「消費税15-20%へ」-再建派の土居慶応大教授
  • 「支出拡大」「補正予算15兆円を」-積極派の藤井京大教授

安倍晋三首相が衆議院解散の大義と位置付けた消費税の使途変更は、財政再建派と積極派の双方から一定の評価を得ている。再建派は増税を確約した点を、積極派は支出拡大につながる点を前向きに受け止める。

  再建派で財務省の財政制度等審議会委員を務める土居丈朗慶応大学教授は26日のインタビューで、予定通りの消費増税を明言した首相の決断を「大きな一歩」と支持した。ただ、使途変更については、今後も増税に際しては歳出拡大をしなければ理解を得られないという「あしき前例」になる可能性があると懸念も示した。

  積極派で内閣官房参与の藤井聡京都大学大学院教授は27日のインタビューで、支出拡大につながる使途変更を表明したことに「なすべきことに向けての第一歩」と期待を示した。本来は消費税は凍結すべきだとしつつ、首相が増税を決断した以上は「補正予算による景気対策が必須」と主張。今年から2年連続でそれぞれ15兆円規模の補正予算を組み、増税時の景気の腰折れに備えなければいけないと話した。

  政府は2019年10月に予定される消費税率10%への引き上げで見込まれる5兆円台半ばの増収について、約4兆円を財政健全化、約1兆円を社会保障の充実に充てる方針だった。しかし首相は25日の会見で「おおむね半々」の割合に変更すると表明。国の借金返済分を残しつつ支出を拡大し、再建派と積極派の双方に配慮した形となった。

消費税

  将来的な消費税の在り方について、土居氏は社会保障の持続性を保つために20年代半ばまでに「最低でも15%」、社会保障の水準を維持するのであれば20%まで引き上げる必要があると説明。「消費税は成長を阻害しない」とも指摘し、首相が進める法人減税と消費増税の組み合わせは「極めて理にかなった税制」だと述べた。

  一方で藤井氏は、景気を冷やす可能性があるため「デフレ期には消費税は0%でも良い」と語り、税制は所得税と法人税を基本とするべきだとの立場を取る。景気に合わせて税収が増減するが「政府は経済を安定化させるための装置」とし、景気後退局面では国債も活用しながらかじ取りをするべきだと語った。同時に、世界的な法人税率の引き下げ競争に歯止めをかける必要性も訴えた。

  安倍首相が予定通りの消費増税を訴える中、最大のライバルと目されている小池百合子都知事が率いる希望の党は増税には慎重だ。土居氏は「自民党は増税をかなり表立って言って選挙に臨んだ」とし、勝利した場合は首相が宣言した通り19年10月に消費税率を引き上げるとの見通しを示す。藤井氏は、今後大型補正の議論が出てくるかどうかを注視する必要があると説明した。

PB黒字化目標

  借金返済分が縮小するのに伴い、首相は財政健全化目標として掲げていた20年度の基礎的財政収支(PB)黒字化は困難になるとし、先送りする方針を表明した。

  土居氏は、首相は予定通り配分してもPB目標が達成できないため、使途変更を目標先送りの弁明として活用した可能性を指摘。延期は1-2年程度にとどめるよう求めた。藤井氏は、目標には債務残高対国内総生産(GDP)比を据えるのが筋であり、PB黒字化は「手段であり、目標たり得ない」と述べた。

  首相は財政健全化計画で定められている社会保障費の伸びを5000億円に抑制するという「目安」は今後も維持するとの考えを示した。土居氏は、増収分の使途変更で借金返済に充てる財源が減る中、支出の抑制は「なおさら重要になる」と支持。藤井氏も、社会保障費抑制は高齢者に偏っている社会保障費を各世代にバランスよく配分する制度改革と「極めて整合的」と述べた。

  教育無償化を巡っては、社会保険料を上乗せする「こども保険」や、教育財源に限定した「教育国債」を発行する案が自民党内で浮上していた。藤井氏は、こども保険は「増税と同様の効果を経済に与えるので賛成できない」と述べ、デフレ下では教育国債の発行が望ましいと話した。土居氏は、教育国債を「次世代へのツケ回し」と否定し、こども保険は負担と給付の仕組みとしては次善の策と容認する考えだ。

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