【コラム】インフレ巡る不確実性認めたイエレン議長を称賛-D・モス

米連邦準備制度理事会(FRB)のイエレン議長はまだ、インフレを巡る既存の経済モデルの正しさを信じている。だが、この考えを変える可能性は排除していない。

  イエレン議長は26日、全米企業エコノミスト協会(NABE)年次会議での講演で、インフレが伸び悩んでいるだけでなく、さらに鈍化しているケースもあるのはなぜかという、各国・地域の金融当局者を困惑させている問題に取り組んだ。不確実性を認めた議長を称賛したい。

  議長は現代経済のメカニズムを巡る想定の一部に誤りがある可能性を認めた。誤りがあることを前提とはしていないが、そうした可能性を受け入れる用意はあるというわけだ。政策の急転換は呼び掛けておらず、インフレと労働市場、そしてインフレ自体に関する当局者の理解に欠陥があることが判明すれば、政策を再調整する責務があるとする。

  連邦公開市場委員会(FOMC)は今でも、インフレ率が再び上向き始め、2%の当局目標の前後で安定化すると信じている。このシナリオの下では、金融政策の一段の引き締めが必要だが、それは大幅なものではなく、これまで進められてきたように、ゆっくりとしたペースで行うことになるだろう。

  議長が講演で指摘したように、インフレが経済モデルの想定に反して伸び悩んでいる要因には次の2つが考えられるかもしれない。まず、低い失業率と賃金やインフレを結び付ける経済モデルは必ずしも誤りがあるわけではないというものだ。先のリセッション(景気後退)を経て、インフレが上向き始める失業率の水準が以前よりも低くなった可能性がある。

  その一方で、金融当局者がもっと根本的なレベルでインフレを誤って理解している可能性もある。議長は「堅調な労働市場の実態にもかかわらず、先行きのインフレを抑制する要因の一部をわれわれの計量経済学モデルが恐らく見落としていることで、インフレ力学の理解のための枠組みが多少抜本的な形で不正確である可能性がある」と語った。

  インフレが近いうちに再び高進し始める可能性は当然あり、それが景気刺激の解除を続ける論拠だ。他方で、あまりにも急速に刺激策を打ち切ってしまうリスクもある。インフレについて理解するためさらなる取り組みが求められているのは明白だ。

  来年2月で任期満了のイエレン氏が来年のNABEの年次会議に出席しているか、出席するとしてもどんな肩書かは分からない。それでも今回の講演は公共への貢献として大きな意義があったと言えるだろう。

(ダニエル・モス氏はブルームバーグ・ビュー向けに経済について執筆・編集。このコラムの内容は必ずしもブルームバーグ・エル・ピー編集部の意見を反映するものではありません)

原題:Yellen Knows Enough to Admit What She Doesn’t Know: Daniel Moss(抜粋)

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE