トヨタが認める国産AIベンチャー、「アルゴリズム時代」を開拓

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  • PKSHA、PFNに出資、自動運転など未来のクルマ作り加速へ
  • PKSHA株は上場から2日連続で大幅上昇、投資家の期待感示す

自動運転の普及などで車の急速なIT化が見込まれるなか、トヨタ自動車が人工知能(AI)分野で国内ベンチャーへの資本参加を広げている。小粒ながら将来の車づくりに不可欠な最先端のノウハウを蓄積する新興企業は大手メーカーにとって無視できない存在となっている。

  トヨタは22日に東証マザーズ市場に新規株式公開(IPO)したPKSHA Technology(パークシャテクノロジー)に10億円を出資。今年8月には2015年に同じく10億円を出資していたプリファード・ネットワークス(PFN)に対して105億円を追加出資し、外部筆頭株主となった。両者に共通するのはディープラーニング(深層学習)の手法を用いた最先端の画像・言語処理などを得意とするITベンチャーで都内に本拠を置く日本企業であるという点だ。

PKSHA Technology's image recognition engine 'Vertical Vision.' Source: PKSHA Technology
PKSHA Technology's image recognition engine 'Vertical Vision.' Source: PKSHA Technology

  自動運転ではカメラやセンサーでとらえた信号や道路標識、障害物などの外部情報を把握したうえでアクセルやブレーキ、ステアリングの操作につなげる。千差万別な外部の情報を正確に認識し、適切な挙動を取る上でAI技術は人間の脳にあたる重要な機能を果たす。

  トヨタが設立からわずか数年、従業員は30人から100人程度の国内ベンチャーに出資を重ねる背景には伝統的な自動車メーカーの専門領域外の技術が車の競争力を左右するようになり、業界内で開発競争が激化していることがある。

  PKSHAの上野山勝也社長は今月のインタビューで、米IBMや日立製作所など車載向けのソフトウェア開発を手掛ける従来型の巨大企業はその巨大さゆえに、自動運転など新規事業に適切に対応できない「イノベーションのジレンマを抱えている」と指摘する。同社のようなベンチャーのメリットは大手よりも素早く特定の分野に集中できる点にあるとしたうえで、「我々は製品や事業領域、戦略を絞り込んでいる」と話した。

  上場初日のPKSHA株の終値は公開価格2400円に対して5840円となり、2日目の25日も前営業日比17%高(公開価格比2.9倍)の6840円とストップ高となり投資家の高い期待がうかがえる。同社の17年9月期の売上高計画は8億9000万円、営業利益は3億6100万円。前期単独との比較では94%増収、営業利益は2.3倍で、継続取引先の増加や新規アルゴリズムソフトウエアのリリースなどが寄与するとしている。26日は前日比3.1%高の7050円で取引を終えた。

高い専門性

  上野山社長は東証での上場会見で、自動運転と関係する自社の技術領域について現在は主に人が手掛ける「画像を見て、それを認識して分ける」作業を「完全にコンピューティングでやってしまう」ことと説明。トヨタとの協力については車が「将来的にはいわゆる大きなコンピューターになる」との見通しのなか「いろいろな連携ができないかというところを模索している」と述べた。

  いちよし経済研究所の藤田要アナリストはリポートで、PKSHAについて、AI技術分野を中心に自社開発のアルゴリズムを複数保有している上、アカデミック領域で高い専門性を有するメンバーが在籍している点が強みと評価。トヨタの出資で、自動運転などの研究開発で連携が深まる可能性があるとみる。

  一方、PFNはAIの重要な要素技術である深層学習の事業展開を目的に西川徹社長らが14年3月に創業した。同年10月からトヨタとモビリティー事業分野におけるAI技術の共同研究・開発を実施している。トヨタは、追加出資に際してのプレスリリースで「PFNが持つ世界トップレベルの知能化関連技術はトヨタにとって必要不可欠」だとしている。PKSHA、PFNともにトヨタとの研究の詳細については明らかにしていない。

独力ではなし得ず

  トヨタは人工知能技術の研究・開発を強化するため、米国に16年に新会社のトヨタ・リサーチ・インスティテュートを設立。5年間で約10億ドルを投じて安全性向上などに取り組む。ギル・プラット所長は7月のサンフランシスコでの会議で、AI技術の研究はトヨタが「独力でなし得ることではない」との見方を示し、どれだけ人を採用しても「われわれは多くのイノベーションを逃している」と話していた。

  上野山社長は米シリコンバレーでコンサルタントとして働いた経験から旧来型の製造業にもソフトウエア業界のノウハウに対するニーズがあると気づき、そこにビジネスチャンスを見いだしたという。

  PKSHAでは30人の社員の8割以上がエンジニアで専属の営業担当者は一人もいないため、顧客から訪問を受けているという。採用も75%強が社員自身の紹介だ。技術領域の専門性が高いため、求人広告を出しても望む人材が取れない一方で学会など技術者コミュニティーの「キーマンが何人か我々のなかにいれば、逆に人が人を呼ぶ好循環がうまれる」との思いがあると上野山社長は話す。

  35歳で自らも東大大学院で工学博士号を取得した上野山社長は、すべてのソフトウェアは最終的にAIに置き換わり、車もその例外ではないとみている。90年代後半のITバブル以降、多数のベンチャーを輩出したインターネットの時代は過ぎ去り、「今はアルゴリズムの時代だ」と話した。

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