【インサイト】FRB資産縮小、円安と日銀の国債買い入れの追い風に

黒田東彦総裁

Bloomberg

米連邦準備制度理事会(FRB)の資産縮小ペースの見通しは日本銀行にとって、短期金利引き上げと同様に重要な意味を持つ。FRBの資産縮小が米国の長期金利を上昇させれば、日本の長期金利は上昇圧力に直面することになる。それに伴い、日銀は10年物日本国債金利をゼロ%程度に維持させるために、買い入れを加速する必要があり、6月時点で年率換算60兆円台まで低下していた買い入れペースは、めどとしている80兆円に―少なくとも一時的には―近づくとブルームバーグ・インテリジェンスは見ている。今後、FRBの資産縮小と利上げがスムーズに行われれば、緩やかな円安が日銀金融政策運営での追い風となろう。

  • 米国長期金利の上昇に伴い、日本の長期金利は上昇する傾向がある。日銀のイールドカーブ操作によってその影響幅は低下したものの、相関係数は金利操作の導入後も低下していない。
  • 米国債10年物金利と日本国債10年物金利の月次平均の変化幅の相関係数を、日銀の国債購入ペースの拡大決定後(2014年11月)からイールドカーブ操作導入前(16年8月)までの期間と、導入後から直近までの期間(16年9月から17年7月)を比較すると、導入前の0.73に対し、導入後も0.70とほとんど変化していない。
  • 一方、ブルームバーグ・インテリジェンスの試算によると、金利操作導入前は米国金利が100ベーシス上昇すると、37ベーシスの日本の金利の上昇につながったが、導入後は12ベーシスの上昇と影響幅が弱まっている。
  • 米連邦公開市場委員会(FOMC)は20日に政策金利を据え置く一方、4兆5000億ドル(約500兆円)のバランスシートについては段階的縮小を10月に開始することを発表し、年内あと1回、来年3回の利上げ予測を維持した。米国の10年物国債利回りはこの一週間で10ベーシス上昇した。
  • 中央銀行からの量的緩和のペース減速やバランスシートの縮小のサインは、短期よりも長期金利により強く影響する。
  • 日銀のイールドカーブ操作の導入は、日銀による国債購入ペースの変化と日米の長期金利の変化幅との関係を強めた。日本国債金利が米国債金利の上昇に伴って上昇する際、日銀はゼロ%の10年金利目標を維持するために買い入れを加速させる必要がある。
  • 日銀のマネタリーベースの月次変化量(季節調整値)と米国債10年物金利の変化幅の相関をみると導入前はほぼゼロだったにも関わらず、導入後は0.57と相関が強まっている。日本国債10年物金利の変化幅との相関は導入後も0.37にとどまっている。
  • 一方、イールドカーブの変化による為替への影響は、日銀のイールドカーブ操作の導入後高まっている。
  • ブルームバーグ・インテリジェンスの試算によると、米国国債の10年物-2年物のイールドカーブ・スプレッドが対日本国債で100ベーシス上昇(米国債イールドカーブのスティープ化、もしくは日本国債イールドカーブのフラット化)した際に、円は対ドルで8%減価する傾向がある。日銀のイールドカーブ操作導入時(16年9月)の3%減価から影響は強まっている。
  • 17年6月にFOMCが決定し、公表した「政策正常化の方針と計画」によると、FRBの資産縮小は毎月60億ドルから始め、3カ月ごとに60億ドルずつ縮小幅を拡大し、最終的には300億ドルに達する。モーゲージ証券については、毎月40億ドルから始め、3カ月ごとに40億ドルずつ縮小幅を拡大し、最終的には200億ドルになる。
  • ピーターソン国際経済研究所のサーベイによると、FRBの量的緩和第一弾の際の名目GDP1%の資産購入による米国債10年物金利への影響は78から91ベーシスの範囲の低下で、平均を取ると83ベーシスとなる。
  • 資産縮小の効果も同程度(83ベーシスの金利上昇)と仮定すると、FRBの資産縮小による米国債10年物金利の上昇幅は、18年末で20ベーシス、19年末で45ベーシスとなるとブルームバーグ・インテリジェンスは見ている。
  • この試算を前提に、ブルームバーグ・インテリジェンスの標準シナリオではFRBの資産縮小によって、日銀は18年末までに2兆円、19年までに4兆円、長期金利を維持するために国債を追加購入する必要があると想定する。米長期金利上昇による円安効果は18年末で1.6%、19年末で3.6%となる。
  • 今年の12月の利上げと、毎年2回の利上げの効果も織り込むと、18年末で9兆円の追加国債購入、7.6%の円安効果となる。
  • 8月に黒田東彦日銀総裁による「今後数カ月、国債利回りを維持するために買わなければならない国債の量は減っていくだろう」との発言はあったものの、本日のFRBの声明によって、むしろ足元では国債の購入量は増える可能性があるとブルームバーグ・インテリジェンスではみている。

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