ボンドが愛したスポーツカー、SUVの時代に再び花開くか

  • ロータスの株式51%を中国の浙江吉利が取得
  • 浙江吉利はボルボ・カーも買収-ロータスは電気自動車に強み
中国の大富豪が英自動車メーカーを救済

英イングランド東部にある広大な工場敷地内に組み立て施設がさびれたようにぽつんとたたずんでいる。スポーツカーメーカーのロータス・カーズの再建がうまくいかなかった象徴だ。ロータスはスパイ映画「007」で主人公ジェームズ・ボンドの愛車として登場したこともある。

イングランド工場

フォトグラファー:Simon Dawson / Bloomberg

  ロータスのエンジニアリングは高く評価され、同社が設立したコンサルティング会社の顧客には米ゼネラル・モーターズ(GM)やアストンマーティン、テスラなど自動車メーカーが名を連ねた。だがスポーツカーからスポーツタイプ多目的車(SUV)に人気がシフトし、ロータスは低迷した。

ロータスのガレスCEO(左)と李書福氏(右)

写真:Chris RatcliffeとCharles Pertwee / Bloomberg

  ロータスは2009年、当時の最高経営責任者(CEO)が描いた野心的な計画の下で、組み立て施設の建設に着手。新たに5つのモデルを投入し、ラインアップ拡大を想定していたが、金融危機と世界的なリセッション(景気後退)で同社は失速。12年はロータスの英ディーラー網での月平均販売台数がわずか11台というありさまだった。

  ロータス救済に動いたのは、ボルボ・カーを買収した中国人富豪、李書福氏だ。ロータスの株式51%は李氏の浙江吉利控股集団に5100万ポンド(約77億円)で売却された。6月に発表されたこの出資は今月中に完了する見込みだ。

  ロータスは1952年にエンジニアでレーサー、起業家のコーリン・チャップマン氏が設立。フォームミュラワン(F1)やインディなどの自動車レースで次々と成功を収め、イギリスの人気テレビシリーズや映画でも取り上げられた。007シリーズの「私を愛したスパイ」ではロジャー・ムーア扮(ふん)するジェームズ・ボンドがロータス「エスプリ」でイタリアの海沿いを走った。

  チャップマン氏は82年に54歳で心臓発作のため亡くなる。米デロリアン・カーがエンジ二アリングを取り入れようとロータスを起用したが、デロリアンは破綻。87年にはGMがロータスを買収したが、93年にはイタリアの起業家ロマーノ・アルティオリ氏に売却した。

  その3年後、アルティオリ氏の孫の名前にちなんで名付けられた「エリーゼ」が登場。ようやくベストセラーカーが生まれた。浙江吉利からの資金を得て、新型エリーゼを2020年に米国で発売できる可能性があると、ロータスのジャンマルク・ガレス現CEOは言う。

製造現場 

フォトグラファー:Simon Dawson / Bloomberg

  中国以外ではほぼ無名だった浙江吉利は、ボルボ・カー買収後、13年にはロンドン・タクシー・インターナショナルも買い取った。電気自動車との関わりも長いロータスは、テスラが08年に発売した同社初の電気自動車「ロードスター」をエンジニアリング面で支えた。ロードスターはロータスのエリーゼがベースだ。

  ガレスCEOは、電気自動車は素晴らしい機会になるかもしれないと指摘しながらも、軽量と偉大なスポーツカー特有のコーナリングといったロータスらしさを失ってはならないと話す。一方で、浙江吉利からの資金でSUVさえも生産できるかもしれないと示唆した。

ロータス「エキシージ」の検査ライン

フォトグラファー:Simon Dawson / Bloomberg

  英国の欧州連合(EU)離脱は懸念材料だ。関税面でロータスの業績に響くかもしれない。離脱後の通商協定次第だが、「もちろんソフトランディングを望んでいる」とガレスCEOは述べている。

原題:Chinese Billionaire Plots Rescue of a Great British Carmaker(抜粋)

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