イエレン議長が将来の手段と見なすQE、次期議長候補らは疑問視

  • 今週のFOMC、バランスシート縮小の計画詳細を決定へ
  • ウォーシュ元FRB理事やテーラー教授はQEに批判的見解

金融危機の炎が最初に揺らめいてから10年。米国は今週、先進国の先陣を切る形で異例の金融刺激策の出口戦略に着手する。世界経済を救うために各国・地域の中央銀行が実施したこの量的緩和(QE)策を完全に解除するには数年を要するが、政治的論争の的にもなっているQEプログラムの縮小・解除は、「グレート・リセッション(大不況)」の痛手から回復し、正常化に向かう道のりで重要な里程標として支持者からも批判者からも同様に歓迎されつつある。

  ただ分かっていないのはその後に何が来るかだ。かつては異例だった手段がもっと標準的となり、最終的には次のリセッション(景気後退)時に政策手段の信頼できる一部となるのか。イエレン連邦準備制度理事会(FRB)議長率いる現在の当局者はそう考えているようだ。それともQEは、危機の最悪の状況でしか注目されずめったに使われない手段として追いやられるのだろうか。トランプ大統領が金融当局者として起用を検討中とされる人々の中にはこうした意見もある。

  フィッシャーFRB副議長は既に退任する意向を発表しており、19日から2日間の日程で始まる連邦公開市場委員会(FOMC)が最後の出席となる。イエレン議長の任期は、トランプ大統領が再指名しない限り来年2月で切れる。

  QEの運命は投資家に非常に大きな意味合いがある。QEの経済的効果は数値化しにくいものの、金融市場への影響は並外れて大きい。大量の債券購入で当局のバランスシートは5倍の4兆5000億ドル(約500兆円)に拡大。長期債利回りは低下し、株価は上昇した。これが市場にひずみをもたらし、裕福な株主を過度に優遇したとの批判につながっている。

  準備に何カ月もかけて市場に計画を示唆してきたFOMCは今週20日、バランスシート縮小開始の時期を発表すると予想されている。欧州中央銀行(ECB)や日本銀行が資産購入を続ける中でも、米当局は月間100億ドルのゆっくりとしたペースで縮小に着手する考えだ。

  米国でのQEは3回のプログラムで実施された。1回目は危機の真っただ中の2008年終盤で、購入の重点は住宅ローン担保証券(MBS)に置かれた。元FRB副議長で現在はプリンストン大学教授を務めるアラン・ブラインダー氏は「QE1には『A』評価を与えるが、残りは『B-』だろう」と述べ、「QE1は極めて良いタイミングで、対象が絞り込まれていた」ため混乱した金融市場の秩序回復に役立ったが、「残りのQEの効果は小幅だった」と話す。

  イエレン議長ら当局者は経済の悪化が深刻な状況になれば資産購入を再開する可能性があると既に表明しおり、議長は16年にワイオミング州ジャクソンホールで開かれた年次シンポジウムで、資産購入が当局の金融政策手段の「重要な」部分になっているとの見解を示している。

  この見解に対し一部の保守派エコノミストは不安を感じている。ハーバード大学のマーティン・フェルドスタイン教授は電子メールで、QEは「『異例』の金融政策で、将来における通常の景気循環で必要とされないだろう」と述べた。フェルドスタイン教授は、金融当局がゼロ金利制約に直面するケースが今後もっと頻繁になるとの見解に反論し、「米当局が超低金利を支持するのをやめれば、ゼロ金利制約に見舞われるリスクはもはや重要でなくなるだろう」としている。

  FRB理事に指名される可能性のある人々の間にもQEを巡る懸念はある。FRB理事候補としてホワイトハウスが検討中と広く伝えられているカーネギーメロン大学のマービン・グッドフレンド教授は16年のジャクソンホールでの講演で「バランスシートを使ったさらなる刺激策の有効性には疑問の余地がある」とし、景気てこ入れに必要ならマイナス金利政策の採用を支持する考えを示した。

  イエレン議長の後任候補の1人とされるスタンフォード大学フーバー研究所フェローのケビン・ウォーシュ氏は、FRB理事時代にQE2の開始に反対だったものの、バーナンキFRB議長(当時)に敬意を表して賛成したことが10年11月のFOMC議事録に示されている。

  別の次期議長候補とされる同大学のジョン・テーラー教授もQEを激しく批判しており、当局がゼロ金利制約に突き当たって景気支援が必要な場合にはまず、長期金利の押し下げにつながる金融政策ルールとセットで、フォワードガイダンスを利用することが望ましいとしている。  
  
原題:Yellen Sees QE as a Tool of the Future But Her Successor May Not(抜粋)

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