日銀の長期金利操作1年、概ね順調も下振れ時に不安-円高なら放置か

  • 金利を下げ過ぎないように操作するのが今後の課題-BNPパリバ
  • 景気が悪い時の金融引き締め的なオペ減額は悪手-モルガンMUFG

日本銀行が長短金利操作(イールドカーブコントロール・YCC)付き量的・質的金融緩和を導入して1年になる。この間に起きた長期金利の上昇局面では抑制効果を発揮し、足元ではコントロールに安定感が増している。ただ、市場関係者は、地政学的リスクや円高進行などで金利に強い低下圧力がかかった場合の対応には不安が残るとみている。

  長期金利の誘導目標は昨年9月21日のYCC導入時に設定した「ゼロ%程度」。今年2月と7月に0.1%を超える局面があったが、国債買い入れオペの一時的な増額や指し値オペで金利上昇を抑えた。オペ日程の事前通知策を導入した後は安定感を強めた。マイナス0.1%に接近した昨年9月は、買い入れオペを減らしても金利の押し上げ効果は限られたが、その後に起きた「トランプ効果」による米長期金利の大幅上昇に助けられて水準をプラスに戻した。

  BNPパリバの井川雄亮金利ストラテジストは、「外部環境に助けられたこともあったが、一年でかなり安定してきた」と評価する。一方、「国債買い入れオペは今のペースを続けるといずれ限界が来るため徐々に減額を続けるだろうが、マネタリーベースの増加傾向は維持しないといけない」と指摘し、「金利を下げ過ぎないように操作するのが今後の課題」と言う。

  国債発行残高に占める日銀の保有比率は4割に達する。市場の需給逼迫(ひっぱく)が慢性化し、一回の国債買い入れオペが金利に与える押し下げ効果は大きくなっている。日銀の黒田東彦総裁は8月のインタビューで、「買わなければならない国債の量は減っていく」との見方を示しており、買い入れペースは来年、日銀が示すめど「保有残高の増加額年間約80兆円」から半減するとの見方もあるが、保有残高自体は増えていく。

  今月の市場では、北朝鮮問題に伴う世界的なリスクオフと低インフレを背景に米金利低下とドル安・円高が進み、長期金利がマイナス0.015%と昨年11月以来の低水準を付けた。マイナス幅が拡大していけば日銀は国債買い入れの減額で金利を押し上る必要があるが、それによる日米金利差縮小と量的緩和効果の削減が円高を加速させるリスクもある。一方、金利下振れを放置すれば誘導目標の引き下げを迫られる可能性もあり、日銀はジレンマを抱えている。

  モルガン・スタンレーMUFG証券の杉崎弘一債券ストラテジストは、「米国経済が良い時はYCCの強みが出るが、逆に行った場合、オペを減額できるのか。景気が悪化している時に金融引き締め的な減額をするのは悪手になる」と指摘する。

  みずほ証券の上野泰也チーフマーケットエコノミストは、長期金利がマイナスで定着しそうな場合に日銀が取る対応として債券市場で最も多い予想は国債買い入れの「小幅減額」だとして、「長期金利低下を本気で止める意思が感じられず、円高材料にならない程度の減額にとどめ、実態としては金利低下を放置するだろうとの見方が含まれている」と指摘する。

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