インフレ期待という「アンカー(いかり)」に揺らぎが生じているのではないか。

  インフレ期待は安定的でしっかり定着していると、過去何年間も主張してきた米金融当局者だが、消費者や企業、投資家の予想物価上昇率に小さいながらも憂慮すべき下振れを認め始めている。

  バンク・オブ・アメリカ(BofA)メリルリンチの世界経済調査責任者、イーサン・ハリス氏(ニューヨーク在勤)は、「金融当局者らはインフレのアンカーがややスリップしたのを認識しつつある」と語った。
  

  これは懸念材料だ。それというのも、インフレ期待は家計や企業がどのように振る舞うかを方向付け、実際のインフレ率が最終的にどのような数値になるかを決める要素であるためだ。物価低迷に慣れた消費者はモノやサービスの値上げに拒絶反応を示し、労働コスト上昇をカバーする値上げができないと心配する企業側は、賃上げを避けようとするだろう。米金融当局が2%のインフレ目標を達成しようにも、こうした流れが制約となって悪循環に陥る。

  連邦準備制度理事会(FRB)のブレイナード理事は5日、ニューヨークのエコノミック・クラブで行った講演で、長期のインフレ期待を測る「信頼度が極めて高い単一の指標はない」と指摘。それでも、2008-09年の「危機前に比べ、基調的なトレンドインフレが現時点で低めとなっている可能性が各種の指標で示されている」と論じた。

  将来の物価の進路は19、20両日の連邦公開市場委員会(FOMC)でイエレンFRB議長らが金融政策を議論する際に大きく取り上げられる公算が大きい。当局者は金利据え置きを決める一方で、4兆5000億ドル(約497兆円)に上るバランスシートをゆっくりと縮小させる計画の開始を打ち出すと広く予想されている。

  ブラックロック・インベストメント・インスティチュートで経済・市場調査責任者を務めるジャン・ボアバン氏は、「14年以降、インフレ期待は下降している」とし、労働市場の逼迫(ひっぱく)にもかかわらず、「インフレ率がこのところ鈍化している大きな理由の一つだ」との考えを示した。

原題:Fed Officials Admit They’ve Lost Some Credibility on Inflation(抜粋)

最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE