クレイグ・ベンター氏が用意する特別医療診断サービスは受けてみてはいかがだろうか。ゲノム(全遺伝情報)解析、全身MRIスキャン、心臓CT、骨密度の検査、認知症診断テストなど、すべて含めて料金は2万5000ドル(約280万円)。腫瘍や脳の異常を早期に発見し、未然に防ぐことが狙いだ。

  医療ベンチャー企業ヒューマン・ロンジェビティー(HLI)を設立したベンター氏は「われわれは医療革命を主導している。ゲノム解析にかけては世界の誰よりも優れていると自負している。弊社には最も正確なデータがある」と主張した。

クレイグ・ベンター氏
クレイグ・ベンター氏
フォトグラファー:Joshua Lott / AFP via Getty Images

  ベンター氏はヒトゲノムのマッピングに貢献し、21世紀で最も著名な科学者の1人とされる。投資家の視線も熱く、HLIは創設4年ですでに5億ドル(約550億円)、そのうち今年だけで2億ドルの資金を調達した。調査会社ピッチブックによると、HLIの企業価値は約19億ドル。ベンター氏は、最終的に新規上場を果たす前にベンチャーキャピタルからの資金調達をもう1回実施する予定で、計画が進んでいると話した。

  ベンター氏によると、診断を受けた約1000人のうち40%に「深刻な病気」が見つかった。受診者の一部は上海を拠点とする医療ツーリズム新興企業クオンタム・クリニクスを通じてやって来た中国人で、中国の富裕層は受診に多額の出費もいとわないという。HLIと2016年にパートナーシップを結んだクオンタムは、向こう1年に約50人の中国人受診者を送り込む予定だ。

  だが、40%という病気発見率について、医療上「速やかな」対応が必要な加齢に伴う病気が見つかった割合は8%だけだったと、今年に入りHLIの科学者らがウェブサイトに報告書を掲載。一部の医師からは、これほどの包括的な検査の必要性を疑問視する声も上がっている。カリフォルニア大学サンフランシスコ校の心臓専門医イーサン・ワイス氏は、HLIの検査で左心房肥大を心疾患のリスクとしている点を取り上げ、「一生の間に心房細動にかかるリスクは高めかもしれないが、それが価値ある情報だとは現時点で明確でない」と指摘。「人々の恐怖心に訴えて売り込もうとするやり方は好きではない」と論じた。

  HLIの目標は膨大な数の遺伝子情報や臨床的特徴を収集し、持続的な事業につなげるデータベースを構築することだが、そこへ行き着く前に政府主導の大掛かりなプロジェクトが始まってしまうとの懸念もある。ハーバード大学とマサチューセッツ工科大学(MIT)のブロード研究所で遺伝子学を研究するダニエル・マッカーサー氏によると、英国や米国では今後3年間に50万人-100万人以上のゲノム情報を収集することが計画されている。

  顧客基盤を拡大しようと、HLIは価格の引き下げに動いた。5月にはメニューを絞った7500ドルのコースを設定し、その後ウェブサイトの期間限定で2500ドルのサービスも登場させた。ベンター氏は大企業からの契約獲得を目指しており、こうした企業との提携を通じて「文字通り数万人」の顧客を呼び込みたいと語った。

原題:Save-Your-Life Test for $25,000 Draws Rich Patients and Skeptics(抜粋)

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