日本マクドナルド社長、ママとの対話やポケGOで業績回復

協力工場での期限切れ鶏肉の使用発覚のほか、サンデーチョコレートからプラスチック片、フライドポテトから人の歯など相次いだ異物混入。2014、15年は日本マクドナルドホールディングス(マクドHD)にとって試練の年となった。どん底に落ちた業績を回復させたのは外国人女性社長のサラ・カサノバ氏(52)だ。

サラ・カサノバ社長

Photographer: Akio Kon/Bloomberg

  諸問題により客離れが起きて売り上げが落ち込み、15年12月期には業績が上場以来最低の水準に落ち込み、100店舗以上が閉店を余儀なくされた。同社株を49.9%保有する米国の親会社が株式の売却を一時検討する事態にも発展した。

  外食チェーン店のコンサルティングを手掛けるアイフジタインターナショナルの藤田一郎代表取締役は、日本の「マクドナルドはこれで終わりだと思った。周りの人もそういう風に真剣に考えていた」と話す。「会社のイメージが悪くなってしまったので、チェーン店の名前も変えた方がいいという意見も多かった」という。

  カナダ籍のカサノバ氏は13年に原田泳幸前社長の後任として社長に就任。海外のマクドナルドで経験を積んだマーケティングのプロだ。同氏は15年以降47都道府県に足を運び、「タウンミーティングwithママ」と称したイベントを開催し、一連のスキャンダルで反応が特に大きかった子持ちの女性たちと直接会って何を改善すべきか聞いて回った。

消費者と積極的に対話(岐阜県、2015年12月)

Source: McDonald’s Holdings

  カサノバ氏は9月上旬のインタビューで、異物混入などの問題が「私たちに顧客の声を聞きに行かせた」とし、「それまで私たちは顧客が欲しがっているものを与えるのは上手ではなかった」と振り返った。

  商品に関する情報の開示や店舗の清潔さを求めた母親たちの声をもとに、店舗やウェブサイトの刷新やメニューを改善。和風の味を取り入れた「しょうが焼きバーガー」や、裏メニューとして提供した「マックチョコポテト」など、消費者やライバル企業を驚かせるような斬新な商品作りに力を入れた。昨年大流行したスマホゲーム「ポケモンGO」ともいち早く連携し、来客数の増加につなげた。

  食の安全性を高めるため、期限切れ鶏肉の使用が明るみに出た中国の協力工場からの輸入をやめ、ハンバーガーの材料となる牛肉やチーズ、パンがどのようにして生産されているのか工場の様子を動画にまとめてウェブサイト上に掲載した。さらに母親たちを集めた工場見学ツアーも開催した。

マックチョコポテト

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  「誰もがマクドナルドに関する奇妙なうわさをいろいろ耳にしたことがあるでしょう?」とカサノバ氏は笑う。マクドHDはこうしたうわさにも一問一答形式で対応した。同社の食品の製造過程に関しては「過去のどんな時よりも透明性が高まっている」という。

  一連の努力によって同社の象徴である「黄金のM型アーチ」は再び輝きを取り戻している。8月までの既存店売上高は21カ月連続で増加し、下期には12年上期以来5年半ぶりに店舗数が純増に転じる見通しだ。戦略的な閉店は終えて今後は店舗増加の勢いを保つ予定。成長戦略を策定中で、来年の2月の公表を予定している。

  米マクドナルドは今年4月、日本法人の株式を売却しない方針に転換すると発表。業績の回復や今後の戦略に対して楽観視していることを理由に挙げた。マクドHDは5月、今期(17年12月期)の純利益見通しを従来予想比71%増の145億円に上方修正。さらに8月には200億円に増額した。

  いちよし経済研究所の鮫島誠一郎アナリストは電話取材で、店舗やメニューを刷新し主婦の声も聞くという地道な努力を重ね、一発逆転を狙わなかったことが奏功したと述べた。その上で、V字回復の後「どうやって成長路線に乗せるかが課題」と指摘した。

  この復調は国内では珍しい外国人の女性社長によって達成された点も注目に値する。プライスウォーターハウスクーパースよると、04年-16年に国内では456人の最高経営責任者が任命されており、このうち女性は3人と割合は1%に満たない。世界の上場企業2500社を対象にした調査では、同期間に117人の女性最高経営責任者が誕生しており割合は3.1%だった。

  ゴールドマン・サックス証券のキャシー・松井チーフ日本株ストラテジストは「外国人女性が日本企業の管理層にいることは珍しく、そのなかでトップを務める女性はさらに珍しい」と電話取材で指摘した。「日本社会にとっては良い兆候であり、日本語が流ちょうでない女性でもできることを証明した」と述べた。

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