地銀が金融庁規制で外債回避も、消去法で代替資産選好-独自調査

更新日時
  • 「規制に手足を縛られ、日銀に首を絞められている」と専門家
  • 国債保有残高は半年前から10%減、運用スタンスが多様化

Yuan bank notes and U.S. dollar bills

Bloomberg

国内の超低金利環境に加えて金融庁の外債保有への警戒姿勢が追い打ちとなり、地銀の運用難に拍車がかかっている。ブルームバーグの調査によると、収益確保に魅力ある商品として株や債券に取って代わる代替資産(オルタナティブ)投資を挙げた地銀が5行と、外債の3行を上回った。消去法的に商品を選んでいる銀行もあり、専門家からは地銀の窮状を指摘する声も上がっている。

  調査は8月に実施し、今後の運用方針について聞いた。今年度後半の円債投資環境について、回答を寄せた11行のうち7行が「厳しくなる」、4行が「変わらない」と回答。保有債券の平均残存期間は8行が「現状維持」、3行が「短期化したい」とした。

  回答行の一つは「魅力のある商品が少なくなってきており、手詰まり感が高まっている。消去法的に投資商品を選択する傾向がさらに高まっていけばいずれかの市場でバブルがはじける可能性も高まり、さらにリスクが取りづらい環境になる」との意見を寄せた。みずほ証券の香月康伸シニアプライマリーアナリストは、前年度までは低金利とはいえ国内金利が徐々に低下しており運用妙味もあったが、「今年度はこれまでの10年と違って益出しツールがないところからスタートした」と指摘する。

  長期金利の指標となる10年国債利回りは、今年度に入ってマイナス0.01%からプラス0.1%の幅に張り付いており、収益機会がなかった。日経平均株価も小幅上昇にとどまっている。海外に目を向けても、10年米国債利回りは5月に2.41%を付けて以降、現在は2%付近まで下がってきているが、動きは小さい。米金利が思ったほど上がらずドル高が進まなかったため、香月氏は「外債、外国株もさえず、今年度の決算を作るのは難しそうだ」とみる。

買うものなし

  収益確保の観点で魅力が出てきた商品を聞いたところ(複数回答)、「外債」が3行、「オルタナティブ」が5行、「日本株」が1行、「その他」が2行。「なし」との回答も1行あった。国債、社債を含む円債を魅力的とした回答はなかった。単純比較はできないが、昨年3月の同様の調査で、外債はオルタナティブと同数で最多の8行が魅力的な商品として挙げていた。

  オルタナティブ投資とは、債券や上場株式など伝統的資産に取って代わる資産に投資したり、マルチアセットなど非伝統的な手法で運用すること。投資対象の例として私募の不動産投資信託(リート)や未公開株(PE)ファンド、インフラファンドなどがある。流動性に欠ける分、比較的高いリターンも期待できる。「オルタナティブ」と回答した地銀は、具体的な対象や運用手法までは明らかにしていない。

  外債志向が後退している背景には、金融庁が導入する新たな金利リスク規制の影響もある。地銀など国内専業の国内基準行は2019年3月末、一部地銀を含む国際基準行には18年3月末から導入予定の新規制では、外債の金利リスクを円債に比べて厳しく見るようになる。南都銀行は「金利リスク抑制という観点で、円債より外債を売る方が効果が高い」と、外債比率を下げる計画だ。調査では、6行が規制の導入で運用環境が「厳しくなる」「やや厳しくなる」とし、影響はない(5行)を上回った。

  今年の調査に参加した千葉銀行は「円債も外債も買うものがない。本当に難しい環境だ」としている。香月氏は地銀の窮状を「規制に手足を縛られた状態で日銀に首を絞められているようなものだ」と例えた。

  ただ、調査からは運用スタンスの多様化も垣間見えた。海外の金利環境について、年度初めの予想に比べて「改善」が4行、「悪化」が3行、「予想通り」が4行とばらけた。昨年11月の米大統領選挙でのトランプ氏選出をきっかけに米金利が急上昇(価格は下落)したことの影響について「大きかった」としたのは5行、「小さかった」が4行、「その他」が2行だった。米国債の保有残高による違いが表れたとみられる。

  国債中心の保守的な運用を行ってきた地銀だが、日銀データによると、7月末時点の地銀による国債保有残高は28兆7000億円と、1月の32兆円から10%も減少している。

多様化

  外国証券残高で地銀4位の南都銀行は、調査に「マイナス金利政策の導入により円債運用の投資効率が大幅に低下する中、これまでの国債中心から外債や投資信託へシフトする運用の多様化を図っている」とのコメントを寄せた。一方、千葉銀行は、リターンが小さい時に積極的なリスクを取る必要はないとして、国債の償還による待機資金を無理に再投資しない方針を示した。

  香月氏は地銀について「運用環境は相当厳しく、比較的長い年限のところまで円債で取りに来ているところもあれば、トレーディングで日銭を稼ぐところ、海外を含めて投資するところと、力点はさまざまだ。これまでのように地銀全体を同じような投資行動をするグループとしてひとくくりにしにくくなっている」と総括した。

  調査は一定額以上の国債を保有する15社に依頼、11社から回答を得た。回答を寄せた金融機関は以下の通り(50音順)。▽群馬銀行▽静岡銀行▽千葉銀行▽中国銀行▽八十二銀行▽横浜銀行(以上国際基準行)、▽京都銀行▽常陽銀行▽東邦銀行▽南都銀行▽福岡銀行(以上国内基準行)

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