日本郵政株売り出し1.3兆円、個人投資家に照準-TV広告開始へ

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  • 野村、大和など引受証券が全国でテレビCM開始、新規口座獲得狙う
  • 政府保有株の売却規模は1.3兆円ー開示資料

Signage for Japan Post Co.2015. Japan's government is poised to raise the maximum 1.44 trillion yen ($11.9 billion) sought in the privatization of the nation's postal service and its banking and insurance units.

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

日本郵政の政府保有株売り出しで、野村ホールディングスなど主幹事証券がテレビ広告を展開する計画であることが分かった。個人投資家の需要を喚起するのが狙いだが、1.3兆円規模の巨大ディールをてこに新規顧客を獲得したい考えだ。

  複数の関係者によれば、売り出しの中心は国内の個人投資家となり、大和証券グループ本社、野村HD、ゴールドマン・サックスのグローバルコーディネーターや引受証券団は、今週にも全国でスポットCMの放送を開始する方向で準備を進めている。

  国内の証券会社では低迷しているリテール業務の収益拡大が課題となっており、今回のTV広告キャンペーンは、これまで証券口座を開いたことのない新規顧客を開拓、900兆円超の現金や預金を持つ個人から資金を取り込む絶好の機会だ。また、先週発表された日本郵政株の日経平均構成銘柄への新規採用も追い風だ。

  DZHフィナンシャルリサーチの田中一実アナリストは、「テレビCMにより証券会社は普段リーチできないところにリーチでき、新規顧客を開拓、ニューマネーを獲得することができる」と分析。また、「大きなディールで手数料収入など収益拡大のチャンス」が到来していると話した。

  日本では新規株式公開(IPO)や売り出しに際しTV広告が使われることは珍しい。巨額のコストがかかることや、金融商品取引法で証券会社など金融商品取引業者以外による有価証券の勧誘を禁じているほか、引受証券会社の発注であっても、リスクについての記載など細かな規制もあり制作が容易ではないからだ。

  野村HD、大和証G、ゴールドマンなどの主幹事は、テレビ広告のキャンペーンや日本郵政株の詳細などについてコメントできないとしている。

田舎に住む家族

  日本郵政グループは2015年11月、ゆうちょ銀行とかんぽ生命を含め3社上場を果たした。その際も引き受け主幹事団はブックビルディング(需要調査)期間中に異例であるテレビ広告キャンペーンを全国で展開した。

  当時の30秒のスポットCMでは、のどかな田園風景が広がる田舎に住む家族が映し出された。庭に柴犬が横たわり、軒先には大根がぶら下がり布団が干されていた。縁側では祖父母に孫、娘夫婦か、みんな笑顔でお茶を飲み、時には手をたたきながら幸福そうだった。

  「おやおや、皆さん、今話しているその話、もしかして日本郵政とゆうちょ銀行とかんぽ生命保険の3社が上場するって話じゃないですか?」とのナレーションが入ると、「株式に関するお問い合わせは、ご覧の証券会社まで」と、60数社に上る主幹事証券や販売会社の名前が映し出された。

  その後、犬、猫、壮大な山々、金色に実った田畑、仕事に精を出す人などが映し出されると、画面下に「投資に際しては自己判断でお願い申し上げます。株式は価格の変動等により損失が生じるおそれがあります」との小さな文字が映し出された。

個人投資家の動向

  愛知県あま市に住む川嵜留雄さん(72)は、日本郵政株について「大きく値上がりしていく可能性に大きな期待は持てないが、購入を考えている」と述べた。「政府がバックアップしており、規模も大きく安心感がある」、また「配当も高く安定的で長期で保有できそうだ」と語った。

  野村証券では15年の日本郵政の上場時、全国159の本支店で10月に、1日当たり平均で約2500件のリテール顧客による新規口座開設があり、そのペースが、前の年の2倍近くになった。三菱UFJモルガン・スタンレー証券でも、9月の新規口座開設数が前月比で55%増加したという。

  日本郵政は11日に政府保有株式の売り出しを決議した。財務省の発表資料によれば、国内外で追加売り出し分の上限を含め、約9億9000万株を売り出す。価格は9月25日から27日に決定する。北朝鮮情勢などで株式市場が大きく変動した場合は遅れる可能性があるという。

  野村HDの株価は11日、前日比10.3円(1.8%)高の579.9円、大和証Gは同4.5円(0.8%)高の599.6円で取引を終えた。

株価推移

  日本郵政の株価は上場後5.6%低下、一方、日経平均株価は同期間で約4.6%上昇している。同社は4月、子会社の豪物流会社トール・ホールディングスの業績不振を受けて、4000億円規模の減損損失を計上することを決めた。また、不動産事業を強化するため野村不動産ホールディングスの買収を検討していたが、実現しなかった。

  ブルームバーグの集計によれば、9人のアナリストは日本郵政の目標株価を平均で1501円に設定している。野村の廣兼賢治アナリストは、収益のほとんどがゆうちょ銀とかんぽ生命で決まってくるのに加え、マイナス金利などのリスク要因もあるため、日本郵政に対する投資家の関心は「高くはない」と述べた。一方で、収益構造や配当は「安定的」だとの見方を示した。

英語記事: Japan Post Sale Is Said to Target Individuals With TV Ads (1)

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