軍事衝突なら円はどうなる、北朝鮮最悪シナリオを市場関係者が分析

  • 当初は円高で一致、その後の展開では見解分かれる
  • 日本人のレパトリエーションが発生するかどうかがポイントとの指摘

Japanese 10,000 yen note

Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg

北朝鮮と米国の軍事衝突が現実となり、日本が巻き込まれる事態となった場合、円はどうなるのか-。米朝間の緊張が増す中で、最悪のシナリオに至った際の円相場に関する市場関係者のシミュレーションはさまざまだ。

  野村証券投資情報部の木下智夫チーフ・ マーケット・エコノミストは、国内投資家の反応や米国経済の行方などに不透明要因が多く、分析はかなり難しいと指摘する。木下氏を含め市場関係者の多くは北朝鮮情勢を巡る緊張が高まる局面では円の上昇が続くとみている。ただ、実際に武力衝突が起こった場合の影響については、以下のように見解が分かれている。

  • 低金利の円を借り入れ、高金利通貨に投資していたトレーダーがすぐにポジションの解消に動くことで、円が押し上げられる
  • 日本株の約3割を保有する海外投資家が、武力衝突の日本への被害や企業業績への打撃に萎縮し、日本から資金を引き揚げる
  • 同様の理由で日本人が国外に資金を退避させる
  • 日本の保険会社や企業が保険金の支払いや被災による資金需要を賄うために、海外の資金を日本に還流させる
  • 米国経済への打撃を織り込む形で米国債利回りが低下し、ドル安になることで円高が進む
  • 軍事支出が増えるとの思惑が米経済見通しを高め、ドルが上昇するのに伴い円安になる

  三菱UFJモルガン・スタンレー証券の植野大作チーフ為替ストラテジストは、英国の国民投票で欧州連合(EU)離脱派が勝利した時でさえ数時間で8円近く円高が進んでおり、日本が軍事衝突に巻き込まれる事態となれば、「8円ぐらいの円高ショックが走ってもおかしくない」と指摘する。ただ、円高の「初期反応」の後は、日本からの資本逃避の連想などから「急激に円安に切り返すと予想。「ドル・円は10円以上、場合によっては倍返しぐらいドル高・円安に振れる可能性もある」と語る。

  JPモルガン・チェース銀行の佐々木融市場調査本部長は、2011年の東日本大震災を上回るダメージを日本が受ける事態となれば、対外証券投資などを通じて積み上がってきた海外投資家の円ショートポジションの巻き戻しが起こると分析。「日本の受けるダメージが大きれば大きいほど、円高が進む」とみている。

  日本の政府や企業、個人が海外で保有している資産から負債を差し引いた対外純資産残高は2016年末時点で349兆円と、過去2番目の高水準。日本は1991年以来26年連続で世界最大の純債権国だ。

  佐々木氏は、「日本が攻撃を受けるような事態になれば、それは米国やそのほかの国にとってもかなりの脅威になる」と指摘。内外の短期勢のポジションで最も大きいのは円ショートであり、日本は世界最大の純債権国であることから、「個人も含む世界中の投資家がポジションを手仕舞えば、円買い需要が一番大きくなる」と分析する。

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