金融庁が国内の主要な銀行などを対象に、顧客本位の投資商品を提供しているかどうかに焦点を当てた立ち入り検査を実施する方針であることが5日、分かった。聞き取り調査のほか、事前通告の上で支店での接客の様子を評価することなどを検討している。

  未発表であることを理由に匿名で語った関係者によると、検査では、各行が公表している顧客本位の業務運営方針が現場でどう運用されているか把握する。メガバンクなど主要行のほか、地銀にも対象を広げる可能性がある。取り組みが十分でない場合は対話を通じて改善を求めるほか、好事例は同庁が公表している金融レポートなどで紹介することを検討する。来年1月に個人を対象とした積み立て型少額投資非課税制度(つみたてNISA)が始まるのを前に、各行に取り組みを促すのも狙い。

  金融庁は個人の安定的な資産形成を促す安倍晋三政権の戦略で「貯蓄から投資へ」の流れを加速させるため、下地作りを担ってきた。2015年には、顧客本位を掲げたフィデューシャリーデューティー(受託者責任)として「商品開発、販売、運用、資産管理それぞれに携わる金融機関が徹底を図る」と行政方針に明記。金融機関が策定する「取り組み方針」については、今年3月に同庁がガイドラインを公表し、金融商品などについて顧客が理解できるよう分かりやすく情報提供するなどの7原則を掲げた。

  これまで、同庁は、金融機関の商品販売姿勢を再三批判してきた。金融庁の森信親長官は4月の日本証券アナリスト協会での講演で「顧客本位を口で言うだけで具体的な行動につなげられない金融機関が淘汰(とうた)されていく市場メカニズムが有効に働く環境を作っていくことが、われわれの責務」だと述べている。

  金融庁の広報担当者に取材を試みたが、現時点でコメントは得られていない。

  3月の発表資料では、主要行など18行を分析し、ガイドライン策定前に自主的に「フィデューシャリー宣言」を行った銀行を含め依然、顧客本位の運営とは言えない現状を指摘。運用が振るわずとも毎月配当するため元本が減るリスクがある「毎月分配型」が売れ筋投信の9割を占めていることや、投信の販売額と解約・償還額がほぼ同額で残高増に貢献していないことなどを問題視した。6月末時点で銀行や保険会社、証券会社など469事業者がガイドラインに沿った方針を策定している。

つみたてNISA

  つみたてNISAは、既存のNISAが年間上限120万円、非課税期間5年なのに対し、同40万円、期間20年と細く長い投資を促す制度設計になっている。さらに、対象商品は金融庁が決めた販売手数料ゼロ、低信託報酬など顧客のコストを極力抑えた投資信託・ETFのみとなる。

  同庁は投資初心者に向いているのは地道に投資を続けられるつみたてNISAのような商品と考えており、検査を通じてこうした考えを浸透させる意向。金融機関にとっては妙味が少なく、3月時点でつみたてNISAの基準を満たしていた投信は約50本と公募株式投信全体の1%未満だったが、7月の調査では制度開始までに少なくとも120本が適合する見通しとなった。

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