不動産投資信託(JーREIT)の相場が立ち直りつつある。国内外の政治や北朝鮮リスクを背景に世界の株式が不安定になる中、平均利回りの上昇などを好感し、個人投資家が買いを入れた。日本の場合、株よりREIT(リート)の方が日本銀行の資産買い入れ策の影響が小さいとの判断も影響している。

  ことしの東証REIT指数は8カ月中、6カ月で下落。世界的な金利上昇による利回り面での相対的な魅力低下が懸念され、7月14日には2016年1月以来の安値となる1620.38(終値)まで下げ、年初来下落率は13%に達した。ただ、8月以降は7月の安値を割り込んでおらず、TOPIXが6日の取引で3カ月ぶりの安値を付けたのに比べ、底堅さを見せている。

  Jリートの下げ止まりに需給面で一役買ったのは個人だ。東証が公表する投資部門別売買動向によると、7月は前月の104億円の売り越しから5200万円の買い越しに転換。同データには新規公開(IPO)や増資に伴う購入金額分が反映されず、個人は売り越しになりやすい傾向がある中、買い越しは2011年11月以来、5年8カ月ぶりだった。7月はJリートの新規上場などがなかったことも個人が既存銘柄を買う動きにつながった。8月分データは12日に公表予定。

  埼玉県ふじみ野市在住の会社員、鈴木信雄さん(62)は資産の9割以上を日本株で運用していたが、小売株投資での失敗もあり、投資用マンションの売却を機に5年ほど前からJリートに投資している。「株は北朝鮮問題や円高など見えない部分に追いつけない。リスクを負わないと運用できないが、株よりはるかに少ないリスクのリートなら容認できる」と言う。鈴木さんがリートで重要視するのは利回りが最低3%、格付けの良さ、エリアが首都圏であることやインバウンド関連などだ。

  保有リートの分配金をためては新たな銘柄を追加する手法で、現在は星野リゾート・リート投資法人森ヒルズリート投資法人など13銘柄を保有、資産の8割をJリートが占める。鈴木さんは「投資スキームがよく分かり、良い商品だ。今は利回りと値上がり期待があり、『買い』ではないか」とみて、「分配金が届いたら、次はどのリートに投資するかを考えたい」としている。

東京・大手町のビル群
東京・大手町のビル群
Photographer: Yuya Shino/Bloomberg

  東証REIT指数の予想配当利回りは4.1%。不動産証券化協会が示す年間利回りでみると、2012年の4.6%以来の高水準にある。日本の10年債利回りはゼロ近辺、東証1部の配当利回りは1.6%。

  銀行や建設会社に勤務後、リタイア生活を送る村川久さん(73)のJリートへの投資経験は10年以上で、現在も日本ビルファンド投資法人など20銘柄程度を保有する。「リートは投資額から一時的に下がる場面があっても、内容が良ければ回復できる」とみており、資産比率はJリートと日本株が半々。Jリートは中長期、日本株は短期スタンスで運用し、昨年の成績はトータルでプラス10%、ことしはプラス2ー3%と言う。

  長年務めた薬品会社を3年前に退職した横浜市在住の男性(63)は7月にJリートを買った1人。ケネディクス・オフィス投資法人など買い候補としていた3銘柄を中心に約1000万円を投じた。一度の投資金額としては昨年6月に英国の欧州連合(EU)離脱が国民投票で決まり、相場が大幅下落したとき以来の規模だった。

  円資産8割、外貨資産2割を基本に運用し、円資産では長く日本株中心に投資してきたが、高齢化による日本経済の成長期待の乏しさ、安倍政権や日銀の政策に対する期待低下などから株式の比率を6月にかけて下げた。「代わりに債券の代替としてリートを買っている」とし、総資産に対するJリートの比率は以前の15%から4割まで増加、地域分散などで17銘柄を保有する。

  対照的に、日本株の比率は6割から25%に低下。「日銀の保有比率が高い銘柄はバリュエーションが高くなり過ぎ、下がったときしか買えない。今の日本株には買える銘柄がほとんどない」と分析。Jリートに対する日銀政策の影響度は「株ほどではない」が、日銀がいつ売るのか不透明で、「日銀総裁はそろそろ手じまいの仕方も明らかにすべきだ」と話している。

  不動産投資のコンサルティングやJリートの分析を行うアイビー総研の調査では、16年度のJリートの投資家層は70ー79歳が17%と調査を開始した12年度以降で最高となった。60歳以降のリタイア層では45%と半分弱に達し、シニア世代の退職後の資産運用対象となっている。

  モルガン・スタンレーMUFG証券の竹村淳郎アナリストは、7月の個人買い越しが市場に与えた影響について「小さくない。彼らの売り圧力が足元でなくなっているのはREITの需給にとって良い話」と指摘。現在のREIT価格の水準は「絶対値として下がりにくいところまできている。これ以上下がるなら、バリュエーションの観点で底割れとなり、よほどのことがないとどんどんと下がっていく水準ではない」との見方を示した。

  6日の東証REIT指数は前日比0.2%安で始まり、一時0.7%安まで下落。その後は下げ渋り、0.1%高の1661.47と4営業日ぶり反発して終えた。

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