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【FRBウオッチ】緩慢な雇用悪化に気付かぬ当局、繰り返す政策破綻

  • 雇用者数の6カ月平均は14年9月の26万5000人増でピークアウト
  • フルタイム就業者総数はピーク経過か、利上げどころか利下げ視野に
A pedestrian walks past the Marriner S. Eccles Federal Reserve building in Washington, D.C., U.S..

A pedestrian walks past the Marriner S. Eccles Federal Reserve building in Washington, D.C., U.S..

Photographer: Andrew Harrer/Bloomberg
A pedestrian walks past the Marriner S. Eccles Federal Reserve building in Washington, D.C., U.S..
Photographer: Andrew Harrer/Bloomberg

8月の雇用者数が15万6000人の純増にとどまり、減速トレンドが明確になってきた。パウエル米連邦準備制度理事会(FRB)理事は8月25日にジャクソンホールでCNBCと会見、「労働市場が引き締まりつつあることを踏まえれば、インフレ率の若干の上昇が期待されよう」と述べていたが、長期トレンドからの乖離(かいり)は否めない。

  同理事は金融政策を決める連邦公開市場委員会(FOMC)の主流派の一角を占めており、こうした楽観シナリオに沿って、執行部は年内もう1度、来年3度の追加利上げをメインシナリオとして掲げている。金融政策当局者は既存データを基に将来を予想しながら政策を立案すると述べており、8月の雇用統計だけで政策を大きく変えることはないだろう。

  もっともFOMCの執行部はインフレ率の低迷を背景に追加利上げに慎重になっており、頼みの労働市場の後退が続けば、追加利上げの論拠を失うことになる。トレンドを把握するため事業所調査に基づく非農業部門雇用者数の月間増減の6カ月平均(下記チャートの緑線)を見ると、現下の景気拡大局面では2014年9月に記録した26万5000人増でピークアウトしている。

米雇用は緩やかな下降トレンド

  前回の景気拡大局面では06年4月に記録した25万9000人増でピークアウト。その1年8カ月後に景気後退に陥っていた。現下の景気拡大局面では6カ月平均がピークアウトしてから3年経過したが、雇用者数はなお一定の純増幅を維持している。

  これは緩やかな経済成長ペースが息の長い景気拡大につながっているほか、低金利政策が影響しているようだ。しかし、景気循環が消えることはない。雇用統計で家計調査に基づくフルタイム就業者数をみると、8月は前月比で16万6000人減少、これで2カ月連続マイナスとなった。どうやらフルタイム就業者の総数は今年4月の1億2598万7000人でピークを付けたようだ。

  家計調査のフルタイム就業者数は事業所調査の非農業雇用者数に先行する傾向が認められ、フルタイム就業者総数のピークアウトは、事業所調査の非農業雇用者総数のピークアウトを先見している可能性がある。

フルタイム就業者数は4月ピーク

  フルタイム就業者総数の減少がさらに進めば、ヘッドラインの雇用者数の伸び鈍化も一段と鮮明化し、いずれ前月比で純減となる。そうなればFOMCは利上げどころではなく、利下げの決断を迫られる。前回の拡大局面では、FOMCは06年6月に政策金利を5.25%まで引き上げた後、1年3カ月にわたり同水準に据え置き、景気後退入り3カ月前の07年9月に大幅利下げに追い込まれた。

  現下の景気拡大期では、政策金利が1~1.25%という極めて低い水準にあることから、景気循環ペースも緩慢となり、フルタイム就業者数が既にピーク圏に達するなかでFOMCはなお利上げをメインシナリオとしている。

雇用のピーク圏で利上げ打ち止め

  その一方で、なお緩和的な金融政策もあって、金融市場は膨張を続けており、そのバブル膨張を最も良く表す株価指数は異様な高みに到達。前回の景気後退期に至るまでの金融政策は緩和政策によりバブルを膨張させ、最終的にきつい利上げによってバブル破裂から景気後退を招くパターンを繰り返してきた。

金融政策が招くバブルと景気後退

  これに対し今回は異例緩和により異常なバブル膨張を招き、自然破裂に任せる形になってきた。さらに景気成熟期においても、なお緩やかな利上げにとどめるという新機軸は、副作用を一段と高めているようにみえる。

(【FRBウオッチ】の内容は記者個人の見解です) 

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