すし大衆化進めた鈴茂ロボ、職人凌駕するシャリ-成長ネタは海外

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  • 1号機誕生は1981年、政府の減反政策が開発のモチベーションに
  • 海外売上高比率は22%、「近いうち国内と逆転」と小根田会長
あなたが食べているすしはロボットが握ったのかも

高級な印象がつきまとうにぎりずしを庶民の口に近づけた回転ずしの普及は、ロボットの活躍抜きには語れない。鈴茂器工はおよそ40年前、コメ離れに歯止めを掛けようとすしロボの開発に乗り出した。製品需要は今や海外にまで広がり、売上高の伸びは回転ずし市場全体を上回る。

  菓子の製造装置メーカーだった鈴茂創業者の鈴木喜作氏は大のすし好きで、毎晩仕事帰りになじみのすし店に通った。会社の将来性を考え、主食ビジネスへの転換を模索する中、日本政府が当時始めたコメの減反政策に憤りを覚える。コメの消費拡大を狙って目を付けたのがすしロボで、開発着手から5年後の1981年、1号機を商品化させた。

すしシャリを握るロボット

Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg

  小根田育冶会長はインタビューで、「職人の技を機械化することで、すしの大衆化を図ろうと開発に取り掛かった」と説明。職人らの猛烈な反発を浴びるが、時価商売で製造原価の計算もままならない業界に経営やコストの概念を根気強く話し、徐々に理解を深めていった。「当時はまだはしりだった回転ずし業界に機械を入れ、回転ずしの進歩と同時にすしロボの進化があったと言っても過言ではない」と小根田会長は振り返る。

  回転ずしのルーツは、58年に東大阪市で開店したベルトコンベアの旋回式食事台を設置する「廻る元禄寿司」だ。この技術特許が切れた70年台後半以降、回転ずし店は急速に広がる。2000年前後からは従来の30ー40席の小型店から大型化し、回転レーンも「O型」からボックス席の設置が可能な「E型」に変化。いちよし経済研究所の鮫島誠一郎アナリストは、「E型レーンとなり、大量に常に寿司がレーンを回っている状況にするにはロボットの貢献は大きかった」とみる。

  日本フードサービス協会によると、16年の外食産業の市場規模は前年比0.1%増の25兆4169億円。飲食店全体では1.8%増だったのに対し、回転ずしを含むすし店は4.4%伸びた。マルハニチロが男女4000人以上を対象に行ったすし店利用に関するアンケートでは、回転ずしが74%、回転ずし以外は25%にとどまっている。「実際に食べておいしいと感じるのはシャリ。いかにふっくらと握られているかが一番大事で、3年や5年修行した板前よりもすしロボの方がいい商品ができている」と小根田会長は胸を張った。

鈴茂ロボで出来上がったにぎりずし

Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg

  いちよし経済研によれば、国内回転ずし市場の規模は6000億円を超え、11年度との比較ではおよそ2割増えた。この間、鈴茂の売上高は63億円から94億円へ49%増加。回転ずし業界自体の成長やスーパーなどでの店内調理の増加、人手不足による省人化機械へのニーズが事業環境の追い風となっている。18年3月期も増収増益が予想される中、株価の年初来上昇率は58%と東証ジャスダック指数の25%をアウトパフォームする。

  同社は海外ビジネスの強化に注力している。17年3月期で22%だった海外売上高比率は「近いうちに国内と逆転する。海外にある程度ウエートを置くような形になる」と小根田会長は見通しを語った。訪日観光客の増加や15年のミラノ万博などをきっかけに和食への関心が一段と高まり、現在はアジア、欧州、北米など78カ国で販売している。

回転ずしチェーンの厨房

Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg

  鈴茂製品を使う英回転ずしチェーン大手、YO!のロビン・ローランド最高経営責任者(CEO)は「鈴茂の機械は回転ずしを民主化し、すばらしい日本食を手に取りやすくした」とし、YO!では「1年に700万人が来店する。自動化が必要」と話した。

  いちよし経済研の鮫島氏は、国内での「すしブームは8合目」との認識だ。上場する大手回転ずしチェーン5社の店舗数は約1700店、国内で7万7000人に1店舗の計算で、5万人を切ると一段と競争が激化すると分析。関係企業にとっては海外市場の拡大が鍵、とみている。

  飲食店格付けのミシュランで最上級の三つ星を10年連続で獲得、日米首脳会談の夕食会も行われた東京・銀座のすきやばし次郎本店店主の小野禎一氏は、回転ずしと職人の握るすしは「全く別のジャンルではないか」と指摘。大量にシャリだまが必要な回転ずしではロボットは有効だが、「職人の作る本物のすしだまとは違う。仕込みが一番重要で、ロボットにはできない」と言う。

  31日の日本株市場で鈴茂株は一時1.2%高の2562円と反発。同日午前時点でジャスダック指数採用749銘柄のうち、年初来上昇率は114位となっている。

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