EVブーム到来に期待、田中化研が電池部材の生産能力増強を検討

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Photographer: Qilai Shen / Bloomberg

電池の部材を製造する田中化学研究所(本社・福井市)は2020年以降の電気自動車(EV)の本格普及を見据え、リチウムイオン電池の正極材の生産能力拡大を検討している。16年には住友化学に対する第三者割当増資で資本増強しており、EVやプラグインハイブリッド車(PHV)も含めた環境対応車向けの部材供給体制の構築を図る。

  田中化研の嶋川守執行役員はインタビューで、今期(18年3月期)に福井工場の製造ライン増設などで5億円強の設備投資を見込み、今期末の正極材の販売数量を前期末比2割増の1万6000トンに引き上げる計画を示した。「足元ではEVを中心に需要は伸びてきており、状況によっては次の投資という考え方も出てくる可能性はある」と述べ、EVなどへの本格採用を見据えた新たな工場用地もすでに取得済みだという。

  主要国が排ガスなどの環境規制を強化する中、自動車業界ではEVの開発・投入を加速させており、ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンスは、40年までに新車販売に占めるEVのシェアが過半数に達すると予想する。今年7月、パリ協定で合意した地球の気温上昇を2度未満にとどめる目標を達成するため、英国とフランスの政府は40年までにディーゼル車とガソリン車の販売を禁止する方針を打ち出した。こうした中で8月にはトヨタ自動車マツダは資本業務提携し、EVの共同技術開発などに乗り出している。

  EVなどに用いられるコバルトやニッケルなど3つの元素を組み合わせた正極材の生産体制を強化した10年以降、需要を見込んでいたEVの販売が伸び悩み、パソコンなどの汎用品向けでは中国や韓国メーカーとの価格競争が激化。原材料価格の下落による損失も加わり、17年3月期まで6期連続の経常赤字を計上した。16年10月に住友化学に対して発行総額約66億円の第三者割当増資を実施して子会社となり、財務制限条項に抵触していた融資を借り換え、継続企業の前提の疑義を解消するという変遷をたどっている。

  嶋川執行役員は、電池ビジネスは成長産業とは言え、過去の轍(てつ)を踏まないように「付加価値の高い自動車用途にシフトしていくものの、減価償却を考えて設備投資にはある意味、慎重に取り組む」と語った。同社は正極材の販売では世界シェア数%にとどまるが、その材料となる「前駆体」の販売は同15-20%を占める。住友化と協力してEV用電池向けに、より安定した大容量の次世代正極材の開発も手掛け、市場拡大とともにシェアの維持・拡大を目指す。

  田中化研の決算資料によると、前期(17年3月期)の売上高約133億円のほとんどがリチウムイオン電池などの正極材だ。その9割以上を正極材のもととなる粉状の前駆体で販売しており、安全性の確保、低価格化、大容量化など顧客が求める性能に合わせて3つの元素の配分や形状を変える。主要な販売先は韓国のLG化学やL&F、丸紅など。

  電池部材メーカーの株価は今年に入って上昇している。29日までの年初来の上昇率は、田中化研が91%、電解質を製造するステラケミファは45%、セパレータ製造のダブル・スコープが31%などとなっている。

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