日産自動車は電気自動車(EV)「リーフ」の新型車を9月に公開する。米テスラなど強力なライバルが台頭し、世界的なEV普及の機運が高まる中でフルモデルチェンジでてこ入れを図るが、中古車の下取り価格の低さなど新たな課題も浮上し、新型はEVの盟主の地位を維持できるかの試金石となる。

新型リーフのイメージ画像
新型リーフのイメージ画像
(出所:日産自動車)

  日産自のこれまでの発表資料によると、新型リーフは9月6日に公開予定で、EVのエネルギー効率や航続距離に大きく影響する空気抵抗を考慮した「抜群の空力と未来を予感させるデザインで、爽快(そうかい)な走りを提供する」としている。自動運転技術「プロパイロット」を搭載し、駐車操作をすべて自動で制御できるシステムも取り入れる。

  早くからEVを次世代エコカーの本命と位置づけていた日産自は2010年に世界初の量産型EVとして初代リーフを発売。これまでの販売実績は当初の計画を下回っているが、EVなど電動車の販売をメーカーに義務づける環境規制が今後欧米や中国で導入され、英国やフランスが40年までにディーゼルやガソリン車の販売を禁止する方針を打ち出すなど追い風が吹いており、新型車への期待が高まっている。

  一方、不安材料も浮上している。テスラが普及価格帯の「モデル3」の受注を大きく伸ばすなど競争が激化しているほか、発売から6年以上が経過した現行リーフの中古での買い取り価格(リセールバリュー)の低さを指摘する消費者の声も出ており、日産自も対応を迫られそうだ。

中古は35万円台から

  自動車評論家の国沢光宏氏は初代リーフを発売当初に購入した。走行中に排気ガスを出さないクリーンで斬新なイメージに魅力を感じたほか、震動や騒音が小さいモーター駆動独特のスムーズな走りも気持ちよく、「高級だし楽しいし質感はある。すごくいい車」と高く評価していた。

  状況が変わったのは購入から4年目ぐらいのことだった。新車時は満充電で160キロメートルだった航続距離が目に見えて短くなってきたのだ。今では100キロぐらいまで減り、空調を使うとさらに距離が大幅に縮まるため遠出が難しくなった。

  国沢氏の印象では、日常的な使用での電池の劣化では日産自が定める保証の範囲に到達せず無償交換の対象にまずならない。日本では有償による交換プログラムの詳細はウェブで公開されていないといい、電池性能への顧客の信頼の低さが中古車価格の低迷につながっていると考えているという。

  大手中古車販売サイト「カーセンサー」では修復歴がない走行距離2万8000キロメートルの11年式リーフが本体価格35万円台で販売されている。リーフの発売当初の価格との比較で9割超の値落ちとなる。16年式のモデルでも110万円を切る車が出ている。現行リーフの最新モデルの価格は約280万円から456万円。

  国沢氏は、初期型リーフの中古市場での価格は他の車と比較しても「めちゃくちゃな値落ちで財産としての価値はほぼない」とし、新型については「同じことをされるのは嫌だから買う気はとりあえずない」と話した。

  日産自・広報担当のニコラス・マックスフィールド氏は電子メールでの取材に対し、日本でも公式なリーフの電池交換プログラムはあると指摘。ディーラーを訪れたユーザーには料金を提示し、交換を望めば1日で対応するとしているが交換部品の調達にはさらに時間がかかる可能性もあるとした。その上で「マスマーケットでのEVのリーダーとして顧客のニーズを満たして信頼感を高めることに取り組みたい」とした。

ライバルを超える値下がり率

  ブルームバーグ・ニュー・エナジー・ファイナンスによると、EVなどの電動車はガソリンなど内燃機関車と比べ中古価格の値下がりペースが速い。電池の性能評価方法がなく中古車の需要が低いことなどが背景にあるとしている。リーフはテスラの「モデルS」、米ゼネラル・モーターズ(GM)の「VOLT」、トヨタ自動車の「プリウスPHV」など競合のEV、プラグインハイブリッド車と比べて走行距離1万-4万キロ手前まですべての時点で値下がり率が最も高かった。

主要EV・PHVの新車購入後の値下がりペース。緑色のリーフが最も値落ちが激しい。
主要EV・PHVの新車購入後の値下がりペース。緑色のリーフが最も値落ちが激しい。

  自動車調査会社、オートデータによるとディーラーの値引きの原資となる販売奨励金は米国で16年が1台当たり1万7550ドル(約193万円)、17年は1万6343ドルとベースの車両価格(約3万ドル)の半分を超える規模となっている。

  高級EVで人気を集めてきたテスラが3万5000ドルからの価格で投入した新車「モデル3」は既にリーフの累積販売台数を上回る45万台以上の受注を得ており7月から納車を開始した。しかし、競合他社にも課題はある。テスラにとっては生産能力が最大のネックで現在の受注分の生産を完了するのは早くて18年末になるという。昨年市場投入されたGMのEV「BOLT」も立ち上がりの売れ行きはいまひとつだった。足元の月次の販売ではリーフを上回った。

アドバンテージどう生かす

  国沢氏は、日産自にはEVの先駆者としてのアドバンテージがあるという。代表的なものとして国内の販売店に張り巡らさせた急速充電器のネットワークを挙げる。トヨタやホンダがEVを出しても充電場所で困るが、「日産なら何のストレスもなくどこでも乗れる」といい、その強みを生かすためのサービス改善を図るべきだと述べた。

  具体的にはリチウムイオン電池が劣化して車載用としては使えなくなっても別の目的に用いることは可能で価値は残るため、日産自が性能が落ちたバッテリーを買い取るシステムを築くなど顧客のために「ちゃんとリセールバリューを維持するような方法を考えるべきだ」と話した。

  自動車調査会社、IHSマークイットの安宅浩アナリストは新型リーフについて、より長い航続距離や自動運転機能など旧モデルになかった最先端技術で「市場における競争力は増す」とする一方、新型車への評価は価格や航続距離、デザインについての発表を待ちたいとした。

最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE