【インサイト】日銀の出口戦略彩る二つの顔―ジャクソンホールに向け

Bloomberg

日本銀行が大規模緩和からどのように出口に向かうか、近いうちに詳細について明らかにすることはないだろう。一方、最近の政策決定会合の議事要旨では「金融政策のいわゆる出口について関心が高まっている状況」についての議論もみられる。しかし、黒田東彦総裁や他の審議委員も出口に向けての考えについて、公には限定的にしか述べていない。あまりに詳細にかつ早期に出口について表明すること自体が、金利や為替に悪影響を与え2%のインフレ目標をさらに困難にし、金融市場の騒乱の引き金になる可能性もあるだろう。従って、ブルームバーグ・インテリジェンスは、日銀は当面二つの顔-内部での活発な議論と外部でのポーカーフェース-を持ち続ける必要性があると見込んでいる。

  消費者物価指数の6月の前年比上昇率が0.4%と2%目標にほど遠い状況で、金融緩和を直ちに手じまいし始める可能性は低い。しかし、日銀のバランスシートは国内総生産(GDP)の9割を超え、リスクがないとは言えない。現行の金融政策の継続に警鐘を鳴らした2人の審議委員が去り、25日の米ワイオミング州ジャクソンホールの米カンザス連銀主催の年次シンポジウムでのイエレン米連邦準備制度理事会(FRB)議長による「金融の安定性」についての講演を控えている。黒田総裁や欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁の同会合への参加も伝えられ役者がそろい踏みする中、市場の期待をどう管理し、金融政策の第2の柱である「金融の安定性」の位置付けをどうするかが、日銀に重くのしかかってくるだろう。

  • 黒田総裁は出口に関する詳細な議論は「時期尚早」と繰り返し述べている。中銀などの当局の発言は市場へのインパクトが大きく、時には市場参加者の群集行動に拍車をかけ、自己実現型の危機を生む可能性がある。以下では、日銀がなぜ出口戦略の詳細について口をつぐむのか、その理由の手掛かりとなりそうな過去の三つのエピソード-運用部ショック・VaRショック・欧州債務危機-を紹介する。
  • 1998年11月、米格付け会社の日本国債格下げや、補正予算に伴う国債増発12兆5000億円のうち旧大蔵省の運用部による引き受けを縮小し10兆円以上を市中消化するとの方針の発表により、長期国債利回りは急上昇、運用部による買い切りオペの中止や速水優総裁(当時)による日銀の国債大量保有が「自然な姿ではない」との発言もあり、99年2月まで混乱は続いた。98年9月に日銀が行った短期金利の誘導目標の0.25%への切り下げは帳消しとなり、99年2月には0.15%への再切り下げに追い込まれた。
  • 2003年、長期金利が0.4%程度まで低下した後、邦銀の一部の日本国債売りをきっかけに、1.6%まで急上昇した。市場リスクの予想最大損失額を算出するVaR(Value at Risk)へのリスク管理手法への移行が、群集行動による投げ売りを生むきっかけとなったとみられる。同様の金利上昇が仮に現在起これば、日銀の資本相当にあたる8兆円を超える損失が出る可能性もあった。黒田総裁は5月に、長期金利が1%上昇した場合、日銀保有の長期国債の評価損は23兆円に達するとの見方を示した。
  • 11-12年の欧州債務危機では、長期金利の急上昇と国債のデフォルトリスク上昇の悪循環が、伝染効果を通じて経済のファンダメンタルの悪化以上の市場による国債の売りを呼んだ。市場は危機の発生について重要な早期警戒のシグナルを送るが、群集行動により状況を悪化させる場合もある。
  • 以上から考えると、たとえ政府や日銀の小さな政策変更でさえ、市場の群集行動により予想外の効果をもたらすリスクがある。従って、黒田総裁の現状の費用便益分析の結果は、出口戦略のカードを手元に持ちつつ、ポーカーフェースを続けるということにあるのではないかと、ブルームバーグ・インテリジェンスでは想定している。

原文の英字記事はこちらをクリック
JAPAN INSIGHT: Two Faces for BOJ as It Shapes Exit Strategies

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE