三菱商CFO:投資余力高まる「うれしい誤算」、石炭高で計画比倍に

  • 来期までの3年間で見込む営業キャッシュフローは2兆円に拡大へ
  • 損失懸念のある資産売却にめど、今後の入れ替えは投資がポイントに

三菱商事の増一行最高財務責任者(CFO)は、2019年3月期までの3年間で投資に回すことのできる資金が当初計画と比べて2倍に膨らみそうだとの見方を示した。製鉄用石炭(原料炭)価格の上昇などを受けて、計画を上回る利益が見込めるため。大型の投資案件にもより対応しやすくなっている状況といい、市況変動の影響を受けにくい非資源分野を中心に資産を積み増す方針。

増一行CFO

Photographer: Akio Kon/Bloomberg

  増CFOは18日のインタビューで「うれしい誤算だが、投資余力はこの1年で高まっている」と述べた。前期(17年3月期)からの中期経営計画では、運転資金を除いた営業キャッシュフローを3年間で1兆円稼ぐ計画だった。ところが、想定以上の原料炭価格の上昇もあってオーストラリアの石炭子会社が稼ぐ利益が好調なことに加え、サケマス養殖事業など非資源分野も総じて順調に推移していると説明。2兆円に上振れそうとの見通しを示した。

  総合商社各社は市況変動に左右されない収益体質の構築を目指して非資源分野の利益の底上げを進めている。しかし、保守的に想定した原料炭や鉄鉱石などの資源価格が高値で推移していることで、各社の4-6月期の業績には追い風となっている。

  三菱商事の前期の営業キャッシュフローは7035億円。17年4ー6月の2161億円と合わせてすでに9000億円超に達した。有利子負債残高を増やさないため、中計期間中はキャッシュフローと資産売却から得る資金の範囲内で投資と株主還元に充てる計画。

  当初見込んでいた1兆円の営業キャッシュフローの使途のうち、配当金額を除いた7000億円を投資に充てることを計画していたが、キャッシュフローが2兆円に増える見通しとなったことで、負債削減を進めたとしても投資余力は1兆4000億円程度に高まっているという。

  同社は、16年3月期に資源分野で多額の減損損失を計上し初の赤字決算となったことから資産の入れ替えを進めている。19年3月末までに資源価格などの市況変動の影響を受けにくい事業の資産と、資源分野を中心とする資産との比率を約7対3にすることを目指す。資源関連の投資残高は増やさずに非資源関連を積み増し、資源関連で想定される最大の損失が発生したとしても、赤字には陥らない資産構成となる。現時点での比率は開示していない。

今後は投資がポイント

  増CFOは「現在は売却が先行しているが、資産の再構成のために今後は投資がポイントになる」と説明。現中計期間中で目立った大型投資は2月にローソン子会社化のために株式公開買い付け(TOB)で1440億円を投じた案件にとどまるが、「潜在的な投資案件を詰めており、選別をかけて非常に慎重に進めている」と述べた。 

  JPモルガン証券の森和久アナリストは「大型の案件についても売却を決めるなど資産入れ替えの進捗(しんちょく)は順調でポジティブに捉えている」と指摘。「今後は成長期待の持てる投資に注目が集まるが、大型案件になると買収価格が高くなるケースもあり、そのリスクをどのように管理するかが重要」との見方を示した。

  6月には豪州の二つの発電用石炭(一般炭)権益を1000億円規模で売却を決めたと発表。米メキシコ湾で保有する石油の探鉱開発生産案件については経済性が合わないと判断し、年内の売却を目指して相手先企業と交渉に入った。同開発案件については17年4-6月期に180億円の減損処理を実施しており、増CFOは「これで大きな損失が出そうな売却案件についてはめどがついた」と語った。

  株主還元については「長期保有の株主に十分に報いたい」として配当金での対応が基本になると説明。前期は年間配当を1株当たり80円と前の期と比べて30円引き上げたが、今期予想は80円に据え置いた。利益成長に合わせて増配する累進配当を方針としており、仮に業績が大きく落ち込んでも減配はしないため「配当の予測は非常に慎重に行っている」という。

  一方、前期実績で29%だった配当性向は「十分だとは思っていない」として、今期業績の達成確度や来期の業績動向も勘案して「安定して利益を出せるようであれば、配当を引き上げる余地は出てくる」とも述べた。

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