女性目線で売り上げ増、カルビーのフルグラで切り開いた新市場

更新日時
  • 働く母の担当者が慌ただしい朝の時短強調した販促で売上高8倍に
  • 日本の女性労働人口、共働き世帯はともに全体の4割を超える

カルビー・フルグラ事業本部の網干弓子氏(42)が一児の母となって育児休暇から復帰した2012年、上司から受けた指令は「フルグラの売り上げを100億円まで伸ばせ」だった。前年の売上高は37億円。この商品の企画を任されたばかりの同氏にとって求められた目標は「大きな壁」と感じたという。

  だが、大きな壁に見えた100億円は通過点にすぎなかった。16年度の売上高は当時の約8倍の292億円。カルビーの株価は直近で4000円前後と、12年の時点から約4倍だ。麦などの穀物を主原料にナッツやドライフルーツなどを加えたグラノーラの一種「フルグラ」はカルビーが1991年から作り続けている製品だったが、大ヒット商品に変身した背景には、現在はフルグラ事業部の企画部長として働く網干氏の女性ならではの視点を生かしたマーケティング戦略の見直しがあった。

  網干氏らはマーケティング戦略を一から見直し、シリアルだけでなく朝食市場全体の中でのグラノーラの位置づけを調査。朝食の主導権を握る主婦の間でグラノーラは子供向けの甘いシリアルと同様の扱いで「手抜き」というネガティブなイメージを持たれていたことを突き止めた。

  慌ただしい朝、牛乳を注ぐだけで簡単においしく栄養を摂取できるグラノーラのよさをアピールするため、「賢く時短」というキーワードで販促活動を繰り広げ、手抜きと思われがちなシリアル食品のイメージの払拭(ふっしょく)を目指した。

Yumiko Aboshi

Photographer: Akio Kon/Bloomberg

  「どんな人でも平等に24時間しかない」と語る網干氏も、平日には朝早く起き、朝食作りや家事、子供の見送りなど済ませて出社する働く女性の一人。自身は「半分マーケッター、半分主婦」で、「主婦の自分がなぜこの商品を購入したのかと考える」と心がけているという。そういった感性を背景に、時短というメリットを強調する手法にたどり着いた。

  店頭で主婦に試食してもらう一方で男性にもアピール。通勤中の会社員向けに東京・丸の内の東京国際フォーラムで「朝食屋台村」を開催し、簡単に栄養価の高い朝食が取れる魅力を訴えた。この戦略が奏功し販売の急拡大につながったという。

  ゴールドマン・サックス証券のキャシー・松井チーフ日本株ストラテジストは「消費者の大半は女性であり、商品企画に女性の考えを取り入れることの有用性に多くの企業が気づき始めている」と話す。時短商品は女性の消費者以外からも注目を浴びている。ユーロモニターの松永芽恵アナリストは、従来は子供向けが中心だったシリアルが、近年では時短につながる健康的な商品として、働く単身世帯や共働きの大人からも人気が高まっていると話した。

フルグラ

Photographer: Akio Kon/Bloomberg

  フルグラの販売増は女性の社会進出の拡大にも重なる。総務省の統計によると16年の20-30代の女性の就業率は平均72%と10年前と比べ7.3ポイント増加。さらに、厚生労働省の資料では共働き世帯数は97年を境に専業主婦世帯を上回り、16年では全体の約40%にあたる1158万世帯が共働きとなった。クレディ・スイス証券の森将司アナリストは、働く女性が増える中で「簡単に作れて栄養価のある朝食の需要がある」と指摘した。

  米アマゾン・ドット・コムのカスタマーレビューではフルグラが朝の時短につながったとのコメントがあり、「忙しいビジネスマンにおすすめ」、「簡単で、美味しくて、栄養バランスも良いので気に入ってます」と評価されている。

  カルビーは中国のネット通販サイトでフルグラの販売を開始するなど海外への本格進出も視野に入れている。18年夏には京都に新設する工場でも生産が始まる。森氏は、アジア向けに輸出することで新たな成長機会が生まれる可能性があると予想しており、「今年、来年は非常に大事な年」と述べた。網干氏は「朝食の際にごはん、パン、それともフルグラ、と並べる国民食にしたい」と語った。

  (更新前の記事で第二段落の16年度の売上高の数値を訂正しています)

(第9段落にアマゾンでの消費者の評価を追加します.)
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