元野村の在米日本株マネジャー、独自アプローチで日本企業に変革迫る

  • RMBの細水氏は「中庸」姿勢-対決し過ぎても友好的過ぎても駄目
  • フェイスの日本コロムビア完全子会社化に参戦、オプトや昭文社も

日本初のレコード会社だった日本コロムビアは今月、株主の米RMBキャピタル・マネジメントが反対した株式交換を通じ、音楽・映像配信のフェイスの完全子会社となった。数カ月にわたり株式交換方式に異論を唱えたRMBの細水政和ファンドマネジャーは敗れたものの、日本のコーポレートガバナンス(企業統治)を悲観せず、小型株を中心に日本株に強気の姿勢を維持している。

  野村証券勤務時にシカゴ大学に留学後、同地で日本株ポートフォリオマネジャーに転じた細水氏が小型株に注目するのは、コーポレートガバナンス改善を呼び掛ける安倍政権の下で、改革の裾野が大企業以外にも広がると考えるためだ。

Masakazu Hosomizu

Source: Masa Hosomizu

  同氏は先月のインタビューで、「ガバナンスには不満はある。だが、大企業が変化する中、中小企業もそれを見てもっとガバナンスを強化していくだろう。アップサイドがある」と話した。ガバナンス改革が進めば当然利益成長が進み、「現時点より高いバリュエーションも正当化できるようになる」という。

  第2次安倍政権の始動で日本経済の回復、構造改革の進展に期待が高まった2013年にRMBで日本株ファンドの立ち上げを任された細水氏は、独自のアプローチで日本企業に変革を促す。やみくもに主張を突き付けるアクティビストや対話型ファンドとは一線を画している。

  企業に対し友好的に物を言う「『フレンドリーアクティビズム』をやっていたが、それも行き過ぎた」と同氏は振り返る。対話を重ねつつ、「どうしても意見が合わない時には『プロキシーファイト』もする。経営者とけんかしようとは思わないが、友好的過ぎるのも良くない。なるべく中庸を取る」と話した。

  フェイスによるコロムビア完全子会社化計画では、RMBは両社の株主として株式交換方式に反対を表明。交換比率が低く抑えられた可能性があるとして、現金による公開買い付けでの実施を4月に主張した。5月末には株式交換契約の中止やコロムビア取締役会の賛同を得られることなどを条件に、友好的な株式公開買い付けを同取締役会に通知したが、同社は6月中旬、RMBの提案に応じれば、かえって企業価値や株主の利益を毀損(きそん)する恐れがあると発表。フェイスによる株式交換を通じたコロムビア完全子会社化は今月1日完了した。

負けは分かっていても

  細水氏は、両社は「非常に面白い会社。フェイスの技術はとても高く、キャッシュは持っているが、株式市場に評価されていない」と分析。一方、コロムビアは日本の現代音楽の歴史を代弁するような企業で、「バリュエーションがこれほど安くていいのかと問題提起したかった」と言う。コロムビアへの株主提案を行う前に同社やフェイスと議論を重ねたものの、折り合わず、「負けは分かっている戦いでもやる価値はあるとの判断」で臨んだ。

  いったん負けても、企業が細水氏の期待に最終的に沿う例も出てきた。インターネット広告のオプトホールディングは今年1月、指名・報酬諮問委員会の設置を決めるとともに、2月には自己株取得および消却を発表。いずれも同氏が促してきた行動だった。また、昭文社は5月、報酬諮問委の設置を取締役会で決議。これについても同氏は歓迎するとともに、指名委の設置も引き続き求めて経営陣と対話を継続すると同月にコメントした。

  フェイス広報担当の弘重康成氏は、コロムビアとの株式交換契約には「株主から91%の賛成を得た」とし、「今後起こる事業の展開や再編についていち早く対応するのがいい」との判断から現金を手元に残す判断を下したと説明。コロムビア広報担当の宮原淳氏も株式交換という手法が両社にとって最適なやり方だったと考えていると述べた。オプトと昭文社からはこれまでのところ、コメントは得られていない。

  細水氏は「経営者の意識や世の中の考え方を変えるには時間がかかる」としながらも、「着実に進展しているというところがミクロのレベルでも確認できているので、むしろ確信をますます強めている」と述べた。

  細水氏は東京大学を卒業後、1998年に野村証券に入社。支店勤務を経てシカゴ大学に留学後、05年にシカゴの小型株運用会社の日本株ポートフォリオマネジャーに転じ、その後UBSウェルスマネジメントの出身者らが設立したRMBに移った。年金など長期資金を運用するRMBの預かり資産は約81億ドル(9000億円)。細水氏は大型株も含め、買い持ちのロングオンリーファンドを運用。成長性のある割安株を購入し、通常2年は売却しない投資スタイルを貫いている。

 

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