東芝は10日、先送りしていた前期(2017年3月期)の有価証券報告書を提出した。綱川智社長は、残された大きな経営課題は債務超過解消のためのメモリー事業売却のみとなったとの認識を示し、優先交渉先に決めた産業革新機構などの「日米韓連合」以外とも協議を進めていることを明らかにした。

  米原発事業での損失に関して東芝と一時意見が対立していたPwCあらた監査法人は、有報に概ね問題なしとする限定付き適正意見を付けた。前期決算は最終損益で1兆円規模の赤字、6000億円近くの債務超過となった。

  綱川智社長は会見で、「これで当社の決算は正常化した。三つの経営課題のうち一つが解決できた」と述べた。米原発事業リスクもすでに遮断しており、残るはメモリー事業売却だと指摘した。その上で売却方針は変えず、合弁相手で対立している米ウエスタンデジタル(WD)や鴻海精密工業とも、間口を広げ協議を進めていると明かした。

  東芝は2期連続で債務超過となり上場廃止基準に抵触するのを避けるため、稼ぎ頭のメモリー事業の売却を急いでいるが、4月に分社化した東芝メモリの売却手続きは遅れている。訴訟合戦に発展したWDとの対立などが障害となり、6月21日に選んだ「日米韓連合」との売却契約がいまだ締結されていない。

  綱川社長は6月下旬の「目標までに合意に至らなかった」ため交渉先を広げたと説明。年度内の売却完了は可能で、そのために最善を尽くすと強調した。特にWDについてはメモリ事業の競争力強化のための投資計画などで、意見が合えば参加も「やぶさかではない」とし、良好な関係への回復に期待感を示した。

有価証券報告書  

  有報や四半期報告に関する10日の発表によると、前期の連結純損益は9657億円の赤字と製造業で過去最大となった。3月期末の債務超過額は5529億円。あらたは限定付き適正とした理由について「未修正の重要な虚偽表示が存在していた」ためとしている。一方、内部統制監査には不適正意見を付けた。

  有報の当初提出期限は6月末だったが、PwCあらたとの間で米原発子会社ウェスチングハウス(WH)の巨額損失を認識した時期を巡り協議が難航し8月10日に延期していた。東芝は16年4-12月期はあらたの意見表明がないまま提出しており、通年についても不表明や不適正意見なら上場廃止基準に抵触する恐れがあった。

  東芝については、東京証券取引所が現在、過去の不正会計問題を起こした内部管理体制が改善され適正になったかどうかを中心に上場維持の可否を審査している。

  同時に提出した4-6月期純利益は前年同期比37%減の503億円だったが、半導体事業の好調で営業利益は同期間として過去最高の967億円となった。6月末の債務超過額は5043億円に改善した。この四半期は監査法人から限定付き結論とする評価を得た。

  エース経済研究所の安田秀樹アナリストは、「ようやく出せた。限定付き適正意見で済んで良かった」との認識を示した。その上で「これで上場廃止のリスクがなくなった訳ではないが、とりあえず目先の課題をクリアできたということでいいだろう」と指摘した。

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