東芝の有報提出期限、上場廃止リスクは低下か-株価は楽観織り込む

  • 延期されていた有価証券報告書の提出、10日の期限迎える
  • 監査法人の承認が得られない場合はなお上場廃止リスクも

デービッド・アインホーン氏率いるヘッジファンド運営会社グリーンライト・キャピタル、エフィッシモ・キャピタル・マネジメント、キング・ストリート・キャピタル・マネジメントーー。東芝株を保有する投資家の目は、同社の監査を担当するPwCあらた監査法人の一挙手一投足に注がれている。

  東芝が2017年3月期の有価証券報告書(有報)を提出する期限の10日を迎えた。PwCあらたが適正意見を示せば、東芝株は上場廃止を免れるかもしれない。

  株式市場では強気派が優勢だ。日刊工業新聞や日本経済新聞は今週、東芝の有報に対してPwCあらたが「適正」意見を出す見通しと報じ、これを受けて東芝株の上昇の勢いが強まった。東芝株の信用売り残高は4月以来の水準に低下し、株価は過去3営業日で13%上昇した。

  サンフォード・C・バーンスタインのシニアアナリスト、マーク・ニューマン氏(香港在勤)は電話取材で、「東芝株が上場廃止になるとは思わない。日本にとって極めて重要な企業で、東京証券取引所は上場維持に努めるだろう」と語った。

  ブルームバーグがまとめたデータによると、経営難に陥った企業に焦点を当てるヘッジファンドのキング・ストリートは東芝株の保有比率を5.8%に高め、第4位株主となった。グリーンライト・キャピタルは4-6月に東芝株を取得、エフィッシモは筆頭株主だ。  

  こうした動きは、東証は少なくとも当面、東芝の上場廃止を回避するだろうという見方が強まってきたことと一致する。東証には上場廃止を判断する上で裁量の余地が十分にある。

  日経が報じたようにPwCあらたが限定付適正意見を示せば、東証の上場廃止基準に触れることはない。不適正意見という最悪のシナリオが現実となったとしても、東証は市場の秩序維持を踏まえて必要と認めた際にだけ上場廃止に踏み切るが、日本取引所グループ広報・IR部の青沼見和調査役によれば、この判断は東証の裁量に任されている。

  青沼氏は「市場秩序の維持が困難と判断するのはケース・バイ・ケース。一律に申し上げるのは難しい要件」と電話取材で語った。

監査の意見東証の対応上場廃止のタイミング
無限定適正意見ーーーーーー
限定付適正意見該当規則なし該当規則なし
不適正意見上場廃止、直ちに上場を廃止しなければ市場の秩序を維持することが困難であることが明らかであると東証が認めるとき個別に判断
意見不表明上場廃止、直ちに上場を廃止しなければ市場の秩序を維持することが困難であることが明らかであると東証が認めるとき個別に判断

  グリーンライト・キャピタルはコメントを控えた。エフィッシモとキング・ストリートにもコメントを求めたが、これまでのところ返答はない。
  
  香港拠点のヘッジファンド、オアシス・マネジメントのセス・フィッシャー最高投資責任者(CIO)は7日、東芝株が上場を維持する可能性があるとの見方を示した。

  もっとも、監査法人の有報承認をもって東芝問題が終わるわけではない。日本取引所グループ傘下の自主規制法人が東芝の内部管理体制確認書を精査した後や、東芝が18年3月末までに債務超過の状態を解消できなければ、東芝株は上場廃止になる可能性がある。米原子力事業で発生した巨額損失の穴を埋めるため、東芝は半導体メモリー事業の売却を試みているが、合弁相手の米ウエスタンデジタル(WD)が行く手を阻む。
  
  東海東京調査センターの石野雅彦シニアアナリストは電話取材で、状況に「変わりはない」とした上で、東芝株が上場廃止になるか否かは「はっきりしていない」と語った。6月に東芝の投資評価を一時停止した同氏に、調査を早期再開する考えはいまのところない。
 
  東芝は9日、16年度有報と17年度第1四半期報告書を10日に公表する予定と発表する一方、現時点でPwCあらたから監査報告書を受領(じゅりょう)していないことも明らかにした。PwCあらたの広報担当者は、監査規則にのっとって判断すると語った。
  
  会社役員育成機構(BDTI)のニコラス・ベネシュ代表理事は、上場廃止の「リスクは低下しているのではないか」と電子メールで回答。「東芝株は足元で上昇している。現時点で東芝は重大な岐路に立たされ、監査法人と合意に達しなければならないことを認識している」と語った。
 

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