MUFGがグローバル化への挑戦、海外新卒におもてなしの心

  • 米国と英国から若手社員19人が来日、2015年入社の第1期生
  • 課題は「人材流出の可能性」、魅力ある職場が重要-CLSA証券

7月6日、米国と英国から19人の若い男女が気温30度を超える横浜に到着した。彼らは三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が2015年に海外で新卒採用した若手社員らで、約3週間の研修プログラムを受ける第1期生として来日した。これまで2年間、ニューヨークやロンドンなどの現場で実務トレーニングを受けてきたが、ここ日本で学ぶのはMUFGスピリットだ。

  横浜に集まった19人の内訳は米国(ニューヨーク、ロサンゼルス)からが14人、英国(ロンドン)が5人で、入社後は主に投資銀行やマーケット、法人顧客部門に配属されている。彼らは大学で金融工学や経済学を学んできた将来を嘱望される若者たちだ。

研修に集まった三菱UFJフィナンシャル・グループの海外新卒若手社員

Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg

  MUFGは、15年に国際的なブランド力向上と海外での優秀な人材確保を狙いに採用担当者が大学を回って学生を採用するキャンパスリクルーティングを強化した。グローバル企業として長期的に成長を目指すために、海外人材も中途採用だけでなく自前で育成するという挑戦だった。

  CLSA証券の黒田真琴シニアアナリストは、MUFGについて「優秀な人材を新卒から採用するのはコスト的にも良いこと」と指摘。学生もこれまで邦銀グループに入ろうとしても道はなかったが、「MUFGの取り組みが広がると邦銀のプレゼンスも高まる」とみる。課題は「人材流出の可能性。社員にとって成長の機会がある魅力的な職場であるかが重要」と話す。15年の第1期生採用は25人だった。

自分も成長

  研修はMUFGの歴史のほか、日本での同社のプレゼンスの大きさや国内外で進められている経営計画への理解を深める狙いがある。また、異文化を知るために研修所がある横浜から東京・丸の内の本社まで満員電車に乗ったり、将来一緒に働く可能性のある海外赴任予定の日本人社員と意見交換したりした。日本ならではの研修として、日本茶の稽古を通して作法や相手へのおもてなしの心に触れたほか、僧侶による講話では1粒の干しぶどうを3分間かけて味わい、一つのことに全力を傾けて対処することと時間に向き合う大切さを学んだ。

アンドリュー・ミトラさん

Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg

  三菱東京UFJ銀行ニューヨーク支店の外貨セールス部門で働くアンドリュー・ミトラさん(25)が初めてMUFGを知ったのは大学3年生のとき。米国の銀行との接触もあったが、採用に積極的で最初にオファーをくれたMUFGの門をたたいた。ミトラさんは「金融危機後に米銀などは業務縮小を余儀なくされたが、MUFGは健全性が高く強い。ここなら自分も成長できると感じた」と話す。

  MUFGのネットワークは国内1100拠点に対し海外は約50カ国に1200拠点を構え、グループ社員は15万人。営業純益(17年3月期)に占める国際部門の比率は41%に達する。日本でこそ屈指の国際企業だが、海外金融機関との比較ではまだ国内型にみえる。ブルームバーグのデータなどによると、海外大手の英HSBCホールディングスは世界71カ国に約6000拠点を展開し、従業員数は23万6000人。米シティグループは世界160以上の国と地域に約2億口座を有し、社員数21万4000人となっている。

価値観学んだ

  MUFGは4月からグループ経営を強化する「再創造イニシアチブ」で国際的な人材活用を掲げている。今回の横浜研修などを企画・運営した三菱東京UFJ銀グローバル人事室の堀田慶一室長は、海外から来た若手社員らに対して「日本で本社などいろいろなものを見て、自分たちが活躍できるステージの広さや可能性を実感してもらいたい」と述べた。横浜でのグローバル研修は来年以降も続けていく方針だ。

ゼイネプ・アリカンさん

Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg

  ニューヨーク支店で法人営業を担当するゼイネプ・アリカンさん(25)は、MUFGが国際的な金融機関になるとみているが、「ゴールドマン・サックスのようになる必要はない」と言う。なぜなら、今回の研修を通じて「銀行の歴史や価値観、社会性、信頼、誠実さなどを学んだがこれは非常に重要なこと。これを守ることが大事と思うから」と語った。

  研修最終日の7月25日、「10年後のMUFG」をテーマにプレゼンテーションが行われ、研修生からは「グローバルなフィールドで誰もが活躍できる金融グループにしていきたい」との発表も。採用から2年間にわたった研修は日本で締めくくり。米国と英国に帰った19人にはこれから厳しい競争が待っている。

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