環境相:中部電に武豊石炭火力新設の見直し要求-低効率発電の廃止も

  • 脱炭素の世界潮流で石炭火力は「極めて高い事業リスク」:環境相
  • パリ協定実現に向け新懇談会を発足、年度内に成果目指す:経産相

山本公一環境相は1日、中部電力が計画する武豊火力発電所(愛知県武豊町)新設の見直しを求める意見書を世耕弘成経済産業相に提出した。山本環境相は地球温暖化抑止の観点から、他の燃料に比べて二酸化炭素(CO2)排出量の多い石炭火力発電の新設計画に厳しい立場を示しており、中部電は計画の変更や撤回を迫られる可能性もある。

  問題となっているのは武豊火力発電所5号機。老朽化した2-4号機(重原油、出力計112.5万キロワット)を廃止・撤去し、出力107万キロワットの石炭火力1基に建て替える計画。中部電は2015年2月に計画を公表し、18年に着工、22年に運転開始を目指していた。山本環境相は意見書で、同計画のCO2排出削減の道筋が描けない場合には、「再検討を含め、あらゆる選択肢を検討すること」を要求。事業を実施する場合は、低効率の他の火力発電の休廃止など代替となるCO2削減策をとるよう求めた。

  石炭火力は、商用化されている最先端技術を用いても1キロワット時当たりのCO2排出量は、ガス火力発電のおよそ2倍に上る。電力業界は15年末のパリ協定合意後にCO2排出抑制の自主的枠組みを設け、経産省も省エネルギー法に基づく発電効率基準を設定し石炭火力の環境負荷低減を後押ししている。ただ福島原発事故をきっかけに全原発が停止して以降、石炭火力の新設計画が相次ぎ、26年度には発電電力量に占める石炭の構成比は33%と、ガス発電を抜き最大になる見通しだ。

  環境省はパリ協定合意以前に、武豊火力を含めた5つの石炭火力の建設計画について「是認し難い」との意見を表明。パリ協定合意後も石炭火力の新設計画が相次いだことから、山本環境相は3月に中国電力JFEスチールの計画する蘇我火力(千葉市)についてCO2排出削減できない場合には「再検討すべきだ」と踏み込んだ意見を表明していた。武豊火力に対して2度目となる意見書でより厳しい見解を示した。

遅れや撤回の動き

  国内では石炭火力の建設計画に遅れや撤回の動きが出始めている。関西電力は1月に赤穂発電所(兵庫県赤穂市)の石炭への燃料転換計画を、電力需要が減少し投資回収が当初計画よりも遅れるとの判断から取りやめた。3月にはJXTGホールディングス(旧・東燃ゼネラル石油)と共に東京湾岸で検討していた市原火力の新設計画を撤回。高砂火力(兵庫県高砂市)の建て替え計画を推進する電源開発は、売電を見込んでいた関西電との交渉がまとまらず、同計画の環境影響評価の手続きを4月に一時中断した。

  山本環境相は1日の記者会見で、「中部電に限らず、各電気事業者は脱炭素に向かう世界の潮流の中で、石炭火力には極めて高い事業リスクが伴うことをしっかり自覚していただきたい」と指摘。日本はパリ協定に関連して温室効果ガスを30年に13年比26%減、50年に同80%減とする目標を掲げており、「石炭火力発電が新増設されることは目標達成に容易ならざる結果を生み出す」と危機感を示した。

  一方、石炭火力発電の高効率化や海外輸出を推進する世耕経産相は同日、パリ協定で約束した温室効果ガスの削減目標について「従来の取り組みの延長では実現困難」と説明し、技術革新や投資加速を議論するエネルギー情勢懇談会を新たに発足すると述べた。エネルギー政策の土台となるエネルギー基本計画の見直しも含め、環境省に議論への参加を求め、年度内に一定の成果を出すことを目指す方針だ。

    最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中
    LEARN MORE