トランプ米大統領は米株価の高値更新を好んで吹聴してきた。

  大統領からは7月に入り株式相場に関して8回のツイッター投稿があり、そのうち12日には「前向きな活気と熱狂にあふれ、株価は最高値を更新した」とツイートした。

  だが、株価に比べパフォーマンスで見劣りするトランプ氏の米国のもう一つのバロメーターであるドル相場について、大統領がツイートしたことはほとんどない。トランプ政権が発足してドルは大幅に下げ、為替トレーダーは現在、さらなる下落も見込んでいる。

  米国の経済力の世界的な象徴であるドル相場にとって、トランプ氏は必然的に「マイナス」なのだろうか。恐らく株価に「プラス」であるというのと同程度の話だろう。そして、6年ぶりの長さとなっている現在のドル安の多くの部分は金融政策と金利の変転によるものだとみることも可能だ。

  しかし、ワシントンの政治ドラマがますます中心的なテーマとなりつつある。国家の情勢について投資家が見解を示す上で、1日当たり5兆1000億ドル(約564兆円)の取引が行われる世界の外国為替市場に勝る場はない。

  クレディ・スイスの為替戦略世界責任者、シャハブ・ジャリヌース氏は「為替の素晴らしさは相対価格であることだ。ある国が他の各国と比較してどのように受け止められているかを示してくれる」と語った。

  他の全ての価格に影響する交換手段である通貨は経済であれ政治であれ、一国の見通しを最も純粋に反映するものであり続けてきた。債券市場や株式市場をゆがめてきた量的緩和(QE)の時代にあって、こうした関係は強まる一方だ。世界中の金融当局が金利を過去最低水準に押し下げる中で、金利差が以前よりもずっと狭まったことが一因となり、為替トレーダーは政治情勢に一段と敏感に反応するようになった。

  UBSウェルス・マネジメントのグローバル最高投資責任者(CIO)を務めるマーク・ハーフェラー氏は「非常に多くの政策決定やリスクイベントが為替市場に反映されるようになっているこのところの状況が最も興味深い」と話した。

  昨年11月の米大統領選でのトランプ氏当選を受け、減税とインフラ支出拡大による成長促進の公約を歓迎し、為替トレーダーの間ではドル買いの動きが広がった。主要10通貨に対するドルの動きを示すブルームバーグ・ドル・スポット指数によれば、ドルは昨年末に少なくとも2005年以来の高値を付けた。

  その後、株式投資家が企業業績に注視して政治情勢は度外視する中で株価は最高値の更新を続ける一方、ドルは反落して下落幅は8%余りに達し、大統領選後の上げを消したばかりかさらにドル安が進んだ。多くの人々にとって、それはワシントンを取り巻く混乱で、トランプ大統領の野心的な経済課題が切り崩されているとの懸念の深まりを反映したものだ。そして混乱の多くはトランプ氏自身が招いたものといえる。

  一例を挙げれば、トランプ陣営とロシアとの関連に対する捜査がトランプ氏の金融取引にも拡大されたと報じられた7月20日、ドルは直ちに11カ月ぶりの安値に沈んだ。

  UBSウェルス・マネジメントのハーフェラー氏はドル弱気派で、先週時点で1ユーロ=1.1751ドルだったユーロ相場が、今後1年以内に1.20ドルに達する可能性もあるとみる。ユーロは年初段階で1.0341ドルと14年ぶりの安値を付けており、大幅な転換となる。

原題:Trump’s Dollar Mess: Losses Pile Up as Political Drama Mounts(抜粋)

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