アジアでの空港トランジットで数十年にわたり圧倒的な存在感を示していたのが香港とシンガポールだ。だが今は1兆ドル(約110兆円)に及ぶ世界の空港投資が両都市の「アイデンティティー」を脅かしている。

  シドニーを拠点とするCAPA航空センターによれば、その半分はアジアでの空港建設・改修に投じられる見込み。北京では2019年、129億ドル規模の新空港が開港し、中国の首都が世界最大級のハブ機能を持つことになる。バンコクのスワンナブーム国際空港は21年末までの整備に1170億バーツ(約3900億円)を費やし、ソウル近郊の仁川国際空港は5兆ウォン(約4900億円)規模の第2ターミナル建設で、世界を主導する「メガハブ空港」となることを目指している。

北京新空港のターミナルビル(イメージ)
北京新空港のターミナルビル(イメージ)
Source: Methanoia via Zaha Hadid Architects

  コーン・フェリー・インターナショナル(シンガポール)の民間航空実務担当パートナー、トールビョルン・カールソン氏は「世界のハブ空港間の競争だ。問題は誰が大きな勝ちを収めるかだ」と話す。

  フライト・アセンド・コンサルタンシーのアジア担当アドバイザリー責任者ジョアンナ・ルー氏(香港在勤)は、「20年前なら空港側は航空会社がやって来るのをただ待っていればよかったが、状況は極めて急速に変化している」と述べる。

香港国際空港第2ターミナルに到着した乗客 
香港国際空港第2ターミナルに到着した乗客 
Photographer: Xaume Olleros/Bloomberg

  香港に近い深圳には、中国民用航空局が「世界クラス」の空港群を建設する方針だ。対抗する香港の答えは、1415億香港ドル(約2兆円)を投じて隣接する南シナ海を埋め立て3本目の滑走路を造ることだ。ニューヨークのセントラルパークより広い面積を造成し、3.8キロメートルの滑走路を新設、ホワイトハウスの建物群より大きなビルを建てるという。現在のターミナルと結ぶ2.6キロの移動手段も整備し、推計3000万人の新たな利用者に対応する。

  ただインフラ整備と受け入れ容量拡大が、成功を保証するわけではない。CAPAの香港在勤アナリスト、ウィル・ホートン氏は、全ての航空会社が香港の自動チェックイン機を使用したいと考えているわけではなく、セルフ式の入国管理ゲートは十分な監視スタッフがいなければ機能しないと指摘する。香港の空港当局にコメントを求めたが、返答はなかった。

  シンガポールのチャンギ国際空港は、年内にオープンする13億シンガポール・ドル(約1060億円)規模の第4ターミナルをお披露目したばかりだ。自動チェックイン機・手荷物預け機が特徴で、同空港は断層撮影スキャナーを使う世界初の空港となる。つまり、乗客は検査のたびに荷物からいちいちパソコンを取り出す必要がなくなる。チャンギ空港はすでに3本目の滑走路と第5ターミナルの計画に取り掛かっており、20年代後半に完成する予定だ。

シンガポール(チャンギ)国際空港第4ターミナルの「ヘリテージゾーン」
シンガポール(チャンギ)国際空港第4ターミナルの「ヘリテージゾーン」
Photographer: Nicky Loh/Bloomberg

  チャンギ空港の広報担当は事前計画が同空港の支えになると述べた上で、今年の同空港利用者数は6000万人に増えると予想。昨年記録した過去最高の5870万人を突破する見込みだ。

  香港国際空港はウェブサイトで、3本目の滑走路についてハブ空港としてのステータスを守るためには「急務」だとしている。シンガポールとソウル、深圳のみならず、共に5本の滑走路を運用する計画の広州と上海との競争激化を想定している。

チャンギ国際空港第4ターミナルのセルフ式入国管理ゲート
チャンギ国際空港第4ターミナルのセルフ式入国管理ゲート
Photographer: Nicky Loh/Bloomberg

  だが増便や対応能力増強のためのインフラ整備はタイミングが全てだ。コーン・フェリーのカールソン氏は「成長の機を捉えるため早めに建設するだけでなく、早過ぎて成長がランニングコストを賄えないような事態に陥らないようにすることが課題だ」と話している。

原題:$1 Trillion Airport Spree Puts Singapore, Hong Kong on Notice(抜粋)

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