日本株の年初来パフォーマンスがアジア株に対し劣勢だ。要因の一つに、世界的に高成長のテクノロジー株が買われる流れに追随できていない状況がある。加えて、為替変動や保護主義政策が直撃する自動車株比率の高さも弱み。成長戦略を掲げた安倍政権に立ちこめる暗雲も懸念材料だ。

  グローバル投資家がベンチマークとして使うMSCI株価指数の地域別推移をみると、日本を除く MSCI AC アジアインデックスが年初来から27%上昇しているのに対し、MSCIジャパンインデックスの上昇率は5.3%にとどまる。

  シティグループ証券の飯塚尚己ストラテジストは、「アジアと日本の伸びの違いはハイテクセクターのウエートの大きさ。AIやIoTなどの構造変化が、昨年末ごろからハイテクセクターの企業収益を目に見える形で押し上げ始めてきた」と言う。一方で、日本は「自動車産業が一番強い国。自動車産業がさえなければ、株価も弱い」との見方も示す。

  テクノロジー株の多くを含む情報技術セクターが指数に占める比率は、アジアで30%、日本では12%だ。一方、世界株の値動きを示すMSCIワールドインデックスのセクター別パフォーマンスを見ると、情報技術は年初から23%上げ、全11セクターで上昇率トップ。世界的にテクノロジー株が人気化する中、情報技術ウエートの低さが上昇率格差に直結した。

  また、日本ではトヨタ自動車など自動車株を含む消費財・サービスのウエートが20%を占め、アジアの9.6%を大きく上回っている。日本の消費財・サービスの年初来上昇率は1.8%と指数全体の5.3%をアンダーパフォームし、低調な自動車株が日本株の足を引っ張っていることが分かる。

輸出を待つ日本車
輸出を待つ日本車
Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  シティG証の飯塚氏は、「年初に想定した米国トランプ政権による法人税率引き下げや所得税減税の可能性がなくなり、経済成長見通しもインフレ圧力も低下、FRBは利上げを急がず、ドルが上がりにくい」と指摘。自動車セクターは為替感応度が高い上、「保護主義政策のターゲットとなっており、逆風」とみている。

  こうした日本株の構造的要因のほか、相場の重しとなっているのがここへきての安倍晋三内閣に対する支持率の急降下だ。学校法人「森友学園」や「加計学園」を巡り、政権のガバナンス能力が国会や世論で追及され、7月の東京都議会選挙で自民党は惨敗。28日には南スーダンでの国連平和維持活動(PKO)の日報隠蔽(いんぺい)問題で、稲田朋美防衛相が引責辞任した。ベイビュー・アセット・マネジメントの山口誠グローバル資産運用部長は、国内の政治リスクを「すごく気にしている。安倍政権が倒れれば、日本銀行の総裁人事をはじめ、金融政策もどうなるか分からない」と身構える。

  スイスのプライベートバンクであるボルディエのブライアン・ゴー最高投資責任者(シンガポール在勤)も、「財政政策を迅速に進めるには議会の過半数を得ていることが重要だが、それが難しくなりかねない。アベノミクスの『3本の矢』の3本目は、政治状況に依存している」と警戒感を示した。

第3次安倍第2次改造内閣
第3次安倍第2次改造内閣
Photographer: Akio Kon/Bloomberg

  ただし、投資家らは日本株を売り急いではいない。シティG証は、昨年11月の米大統領選後にオーバーウエートとした日本株へのスタンスを維持している。年末には日経平均株価2万1500円、TOPIX1700ポイントへの上昇を予想。飯塚氏は、「企業の業績発表で自信を深めれば、EPSが切り上がり、株価もついてくる」とみる。

  ベイビューの山口氏は、中国での需要回復を背景にした銅などコモディティ価格の上昇傾向から、緩やかなグローバル経済の回復と米長期金利の上昇を想定。為替は2017年度末に1ドル=120ー125円程度までドル高・円安が進む、との見方だ。国内企業業績の先行きに楽観的なため、「日本株を巡るリスクに警戒感は強めているが、基調は上昇傾向だ」と言う。

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