2006年のサッカー・ワールドカップ優勝はイタリアにとって栄光の瞬間となるはずだった。しかし決勝戦の最後でフランスのジダン選手がイタリア選手に頭突きをくらわせ退場となる事件で、その栄光はかすんでしまった。以来、イタリア人の心にはフランスに対する不満がくすぶっていた。

  その不満が新たに燃え上がるような事件が今週あった。フランスのサンナゼールにあるSTX造船所についての対立だ。同施設を買い取ろうとしているイタリアのフィンカンティエリが仏政府と50%ずつの保有という条件を拒否し、ルメール仏財務相は国有化すると言明した。フィンカンティエリ株は27日に一時4.2%下落、26日には13%余り下げる場面もあった。ルメール財務相は「造船業におけるフランスの戦略的権益を守るため」国有化の決定をしたと27日の記者会見で説明。イタリア側は、STXの元の持ち主が韓国企業であることからこの理屈は受け入れられないとしている。

  イタリアのパドアン財務相は26日、同国企業が少数株しか保有できない「理由はない」と主張。カレンダ経済開発相はANSA通信に、ルメール仏財務相は前政権と既に合意済みの条件を変更したとし、イタリア側は買収計画を白紙に戻すことも辞さないと語った。

  マクロン新大統領の下でフランスとドイツの結びつきは強まっているが、イタリアとの関係は悪化の一途のようだ。

  イタリア当局者は26日朝、既に腹を立てていた。マクロン大統領が25日に統一リビア政府のセラジ首相および同国東部の軍事勢力を率いるハフター将軍との和平協議にジェンティローニ伊首相を参加させなかったためだ。イタリアはかつての植民地リビアを自国の勢力範囲と感じている。リビア政府の崩壊はフランスのおせっかいのせいだと思っているイタリア人も多い。ジェンティローニ首相は27日に早速、リビアのセラジ首相をローマに招いてテレビで記者会見し影響力を誇示した。

  「子供っぽいことだ」とボローニャ大学の政治学教授、ソフィア・ベンチューラ氏は話す。個々の国が自国の利益のために行動しているが「イタリアは大国の間で弱く、十分に競争できない」とイタリア人の父とフランス人の母を持つ同氏は指摘した。

  イタリア人の不満の根源はここにある。過去10年、イタリア経済は衰退傾向にあり、同国企業は諸外国の餌食になりがちだ。フランス企業は特に積極的に買収している。ここ5年に発表されたフランス企業によるイタリア企業買収は420億ドル以上。イタリア企業による仏企業買収の6倍だ。

  サッカーでもイタリアは06年のワールドカップ以降、衰退傾向。1990年代にイタリアリーグを欧州一にした資金は枯渇し、ベルルスコーニ元首相の政治的成功にも寄与したACミランは今年、外国人投資家に売却された。

  地政学においてイタリアは弱く「陶器の花瓶が鉄の花瓶にぶつかるようなもので、どちらが壊れるかは自明だ」とベンチューラ氏は話した。

原題:Macron Unleashes a Decade of Italian Anger Since Zidane Headbutt(抜粋)
Macron Stokes Decade of Italian Anger Since Zidane Headbutt (2)

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