政治リスクは安倍晋三首相が2012年に政権に返り咲いて以来、最も高まっているが、ブルームバーグ・インテリジェンス・エコノミクスによる内閣リスク指数でみると、それでも直ちに倒閣につながる状況にはまだ至っていない。

  安倍首相は内閣支持率回復に向け、来週にも内閣改造を行い、場合によっては秋に向けて補正予算での景気刺激策を言明するだろう。一時的に支持率は上昇し、足元の景気ももう一段上昇するかもしれない。政治や経済の不確実性が高まると人々は「理のある近視眼(Rationally Myopic)」志向-将来より現在の利益を重視する傾向-の選択を支持しがちだ。

  しかし、持続的な支持を得るために必要なのは、成長戦略・構造改革といったアベノミクスの原点回帰だろう。長期的視点から、果実も痛みも分け合うように丁寧に説明していくことが、経済成長と信頼回復のための唯一の道かもしれない。

  • BIエコノミクスの「内閣リスク指数」は、首相が辞職する確率を評価している。同指数が20に達すると、首相が辞職する傾向が過去の実績では見られる。7月時点での安倍政権の値はまだ2であり、倒閣リスクを過大評価する状況ではない。
  • 内閣リスク指数の推移と景気循環との関係をみると、景気後退期に同指数が上昇し、首相の辞任につながるケースが多い。
  • 内閣リスク指数は、NHKの政治意識月例調査による内閣支持率と与党支持率を足した値-青木率とよばれる場合もある-を用いて、プロビットモデルで1998年4月から2017年7月の期間で算出した。指数の範囲は0から100である。日本の議院内閣制において、首相の交代は内閣支持率だけでなく、与党の政治的パワーも影響する。
  • 安倍政権の内閣支持率は急速に低下しており、危険水域と一般的に言われる30%に近づいている。しかし、先週末の日本経済新聞社とテレビ東京の調査では39%、毎日新聞の調査では26%といずれも前回調査から10ポイント低下しているものの、水準には幅がある。つまりリスク評価には内閣リスク指数のような標準化した指標の活用の余地がある。
  • 昨年8月に安倍首相が28兆円の経済対策を正式に決定した後、内閣支持率の各社平均が50%を超えたことを思い起こせば、支持率が低下する中で、秋の補正予算で景気刺激策への言明や19年に予定される消費税引き上げ延期の可能性も高まりつつある。
  • しかし、日本銀行と内閣府の算出する需給ギャップがいずれもプラスにある状況、つまり、景気が拡大している中で行う景気対策の効果は、限定的もしくは、景気の一時的な過熱後の急速な景気悪化につながる可能性が高いとBIエコノミクスでは考える。
  • 経済的・政治的に不安定な状況では、有権者は「理のある近視眼」的選択をしがちである。高い不確実性が将来の収入への評価を大幅に割り引くのだ。つまり、今の国の借金を増やし、将来世代へ負担を先送りすることに疑いを持たなくなる。丁寧な説明で長期的な視点を有権者が持つように誘導し、経済回帰を強調することが、最終的には信頼感を回復し支持率上昇につながる。
  • 内閣改造は一時的な効果しかない。過去20年間の主要な内閣改造後の内閣支持率の変化をみると、直後の調査では支持率は平均で3.5ポイント上昇するものの、その翌月の調査では2ポイント、翌々月には5.4ポイント低下している。根本的な問題を解決しない限り、支持率は回復しない。
  • 15年から審議が始まった労働基準法の一部を改正する法律案は、連立与党が国会で圧倒的多数を維持しているにも関わらず、いまだに成立していない。一方で、「共謀罪」の趣旨を含む改正組織的犯罪処罰法は6月に成立した。その後の都議選での大敗を考えれば何を「ファースト」とするかは自明かもしれない。

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JAPAN INSIGHT: Cabinet Risk Index Shows Abe May Survive for Now

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