三菱自動車を傘下に収め、世界最大級の販売規模を手に入れたルノー・日産連合(アライアンス)CEOのカルロス・ゴーンは今後、自動運転や電気自動車(EV)など旧来の自動車業界の勢力図を一変させる可能性を秘めた新たな領域で生き残りをかけた競争に挑むことになる。

カルロス・ゴーン氏
カルロス・ゴーン氏
Photographer: Luke Macgregor/Bloomberg

  ゴーンは早くから究極のエコカーとしてEVを推進し、2010年に世界初の量産型EV「リーフ」を発売している。16年度までに累計販売150万台としていた当初の計画を大きく下回っているが、自動車メーカーにEVやプラグインハイブリッド車(PHV)の販売を義務づける環境規制が今後、米国や欧州、中国でも順次導入されていくことから普及が進むとみられている。

  ゴーンは、ルノーがインドで販売する小型車をベースにアライアンス3社で共通の車台(プラットホーム)を使うことでコストを抑えた低価格EVを中国で投入すると明らかにした。目標はあくまで「マスマーケットを変える」ことだとし、米テスラのような高級車志向と一線を画すとしている。

新型「セレナ」
新型「セレナ」
Photographer: Tomohiro Ohsumi/Bloomberg

  自動運転に関しては日産自が昨年国内で投入した新型ミニバン「セレナ」で単一車線での自動運転を実現しており、ここでもボリュームゾーンでの販売拡大を狙っている。

  アライアンスで先端技術開発を担当するバイスプレジデントの浅見孝雄(日産自専務)はアライアンス全体として自動運転とコネクティッド、電動化の3つの重点領域への投資額が「今後3、4年で考えられないほどの比率になっている」と予想し、全体の半分程度を占める可能性があるとの見方を示した。

膨らむ研究開発費

  研究開発費については、日産自が16年度で4904億円と5年間に15%増えている。これに対し、トヨタとホンダはともに同期に33%の増加で、絶対額でも日産自を上回っている。VWは国内勢で最大のトヨタのさらに上を行く。

  SBI証券のアナリスト、遠藤功治は、自動運転など未知の分野への巨額投資が負担となり「既存の自動車メーカーの収益は非常にきつい」と話す。米グーグルなどIT企業との競合も見込まれ、「10年ぐらい、ひょっとしたら一生利益が出ないかもしれない」という状況の中で投資を続けざるを得ない先の見えない消耗戦になるとみている。

  特に日産自の場合は1台当たりの利益が10万円程度とトヨタの半分程度で収益性に劣っている点が大きな課題だと遠藤は指摘する。一つにはブランド力の不足で売値が低くなり、利益が上がらないとみている。ブランド力は「耐久性、信頼性、デザイン、質感、そういうのが全部集まってできる」もので、「新しい車が良くてもそれが本当に2世代、3世代、いいのが続かないとだめ」と改善には時間がかかる見方を示した。

  ゴーンの経営手腕については、「地に落ちた会社をリバイバルすることにかけては100点満点だった」 とする一方、買収による拡大以外で、既存事業を地道に成長させていく点においては「まだまだ」と評価した。

「ゴーン後」に備え

  独立した企業同士の協力体制であるアライアンスは一歩間違えると利害の衝突が相互不信を招いて機能不全に陥る危うさもはらんでいる。日産自社長兼最高経営責任者(CEO)の西川廣人はアライアンスはトップダウン型の組織であり、「ロジカルなサイエンスではなくて経験に裏打ちされた仕組み」で動いていると語る。

  それは「容易にコピーされない強みがある」反面、「強いリーダーがいなければ機能しない」ことになり、ゴーンや自身なき後を見据えた次世代リーダー育成に乗り出しているという。
  
  今後の先行きが不透明な中でも日産自は今秋に発表予定の今後5年間の中期計画で、営業利益率を「適正」な経済状況下において8%とする目標を掲げる。ゴーンはアライアンスのDNAともいえるコミットメント重視の経営は変わらないとし、「長期の経営目標の数値を公表する大手自動車メーカーは少ないだろう」と笑う。

  「唯一無二のものであり今だに完成途上。われわれは日々試行錯誤の上、決断を下して実行に移す。ここを切り離してあそことくっつけたらどうか?いやそれでも十分ではない、といった具合に。それは一種の職人技のようなものだ」。ゴーンは自らつくり上げたアライアンスの本質について話した。「それは絶えず進化するものであり、今後も進化していく。別の会社が新たに加わることもあるかもしれない」
(敬称略)

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