東京高等裁判所は19日、出光興産の計画する公募増資の差し止め請求を却下した東京地方裁判所の仮処分決定に対し、出光創業家が申し立てた即時抗告を棄却する決定を下した。高裁によって公募増資が認められたことにより、出光にとって昭和シェル石油との経営統合への道が開かれることになる。

  決定要旨によると、東京高裁は、新株発行の主要な目的が資金調達でなく、経営陣が自らを有利な立場に置く不当な目的とまでは断定できず、「著しく不公正な方法」ということはできないとし、東京地裁と同じ結論を出した。公募増資は、第三者割当増資に比べて経営陣に反対する株主の支配権を弱めさせる確実性が低く、出光は借入金の返済資金を用意する必要性が高いことなどを理由に挙げた。

  出光は3日、発行済み株式総数の3割に相当する新株を発行して資金を調達すると発表。新株が発行されれば、昭シェルとの合併計画に反対していた創業家の持ち株比率は3分の1を下回り、合併決議を単独で否決できなくなる。創業家は4日、新株発行は経営陣の支配権維持を主要な目的としており、「著しく不公正な方法」と主張し、発行の差し止めを求めていた。

  調査・コンサルティング会社サークルクロスコーポレーションの塩田英俊シニアアナリストは、今回の高裁の判断により出光と昭シェルの「統合の可能性は非常に高まった」と評価する。塩田氏によると、公募増資の払込期日を20日に控えており、増資計画を「ひっくり返す望みは、ほぼなくなった」と指摘した。

  出光は12日、公募価格を1株2600円に決定し、20日に1186億円を調達する予定。調達資金のうち255億円をベトナムのニソン製油所など海外投融資に充当するほか、112億円を国内投資、155億円を研究開発資金に振り向け、残りを昭シェル株取得時に調達した短期借入金の一部返済に充てる計画としている。

  東京高裁に先立ち新株発行の差し止め請求を認めない決定を下した東京地裁は18日、出光は昭シェル株取得時の借入金の返済期限を12月に控えて、新株発行による資金調達の必要性が認められる一方、支配権を巡る争いで経営陣が自らを有利な立場に置く不当な目的が存在したと一応認められると指摘した。

  高裁の決定を受け、出光創業家代理人の鶴間洋平弁護士は電子メールで、新株発行を計画している出光の経営陣に対し「強く抗議」するとともに、昭シェルとの経営統合には「断固として反対し続ける所存」との声明を発表した。ただし、最高裁への抗告はないとしている。

最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE