日本銀行は20日、金融政策決定会合を開く。金融政策は現状維持という見方が大勢。物価目標2%達成時期が変更されるかどうかに加え、指数連動型上場投資信託(ETF)の買い入れや異次元緩和の出口論についての黒田東彦総裁の発言に市場の関心は集まっている。

  ブルームバーグがエコノミスト43人を対象に7-12日に実施した調査では、全員が金融政策の現状維持を予想した。黒田総裁の任期中に長期金利の目標を引き上げるという予想は4人と、6月の前回調査から減少した。

  ゴールドマン・サックス証券の馬場直彦チーフエコノミストは12日付のリポートで、「今後、物価上昇モメンタムが再び弱まるリスクもあり、引き続き、少なくとも2017年度中に関しては金融政策は維持される」と予想していた。

  日銀は昨年9月、金融調節方針の操作目標をお金の量から金利に転換する長短金利操作を導入したが、目標の2%へ向けた物価上昇の歩みは遅い。7日には欧米の金融引き締め観測を受けて長期金利が上昇し、指定した金利水準で金額に制限を設けずに国債を買い入れる指し値オペを5カ月ぶりに実施して上昇を抑える場面もあった。

ブルームバーグの事前調査の結果はこちら

  金融政策決定会合は従来、おおむね正午から午後1時の間に終了する。黒田総裁は午後3時半に記者会見を行う。今会合の注目点は以下の通り。

2%達成時期

  日銀は経済・物価情勢の展望(展望リポート)で、生鮮食品を除く消費者物価指数(コアCPI)前年比の新たな見通し(政策委員の中央値)を示す。

  5月のコアCPI前年比は0.4%上昇とエネルギー価格の押し上げにより徐々にプラス幅を拡大しているが、生鮮食品とエネルギーを除くベースでは横ばいと低迷が続く。日銀の4月時点の見通しは17年度1.4%上昇、18年度1.7%上昇。物価目標の2%に達するのは「18年度ごろ」との見通しは据え置かれた。

  岩田規久男副総裁は6月22日の会見で、日銀の見通しを大きく下回っている民間の物価予想は今年から来年にかけて「日銀に近づいてくる」と言明。前年比2%台後半まで上昇した非正規労働者に続き正社員の賃金も上昇し、「物価はだんだん2%に近づく軌道に入ってくる」と語った。

  元日銀理事の早川英男富士通総研エグゼクティブフェローは日銀の見方に批判的だ。14日のインタビューでは「物価はがく然とする弱さだ」と指摘。異次元緩和の出口は「早くても2020年度以降になりつつある」とした上で、出口の前に景気後退に見舞われる可能性が高まっており、日銀は「土俵際」に追い込まれているとの見方を示した。

ETF

  日銀の金融政策に詳しい複数の関係者によると、年6兆円のETF買い入れの持続可能性について日銀内で懸念の声が上がっている。現行の買い入れ額を減らす可能性は低く、株価水準が高い一部の銘柄に影響を受けやすい日経平均連動型ETFの買い入れを減らし、TOPIX連動型を増やすことが選択肢の一つとして挙がる。

  全国銀行協会の平野信行会長(三菱UFJフィナンシャル・グループ社長)は13日の会見で、流動性の低下により日銀保有比率が大きな銘柄や浮動株が少ない銘柄の価格変動が大きくなることや、日銀が実質的な大口株主となることによる企業統治のゆがみなど、日銀のETF購入には「さまざまな課題も指摘されている」と述べた。

  BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは調査で、ETF購入は「弊害が大きく、べき論で言えば見直す必要がある」と回答した。しかし、日銀が「特定の株価水準を目標としているわけではなく、あくまで2%目標を早期に実現するために実施している」と説明している以上、「物価に大きな改善が見られる前に縮小することはないだろう。政治的にも容認されにくい」としている。

出口論

  黒田総裁の任期満了まで1年を切ったが、物価上昇の足取りは重く、2%達成は見えてこない。日銀の資産規模は5月末に500兆円台に達し、13年4月に量的・質的金融緩和を導入してから3倍に膨らんだ。資産規模が膨張する中、国会でも金融緩和の出口戦略に関する説明を求める声が出ていた。

  黒田総裁は6月16日の会見で、中央銀行には継続的に通貨発行益が発生し、「長い目でみれば必ず収益が確保できる仕組みとなっている」と説明。短期的に収益が下振れても「中央銀行や通貨の信認がき損されることはない」と述べた。

  一方、日銀OBである中央大学の藤木裕教授(52)らは、2%の物価上昇率が実現した場合、出口で年最大約10兆円の赤字が発生する、という試算を示している。元日銀理事の早川氏は、出口が遠のくにつれて赤字額は拡大する可能性があり、通貨発行益があるから問題ないという日銀の説明は「何の根拠があって言えるのか」と疑問視している。

最新の情報は、ブルームバーグ端末にて提供中 LEARN MORE