かつてヘッジファンドは万物の支配者だった。2005年前後までヘッジファンド・マネジャーらは、巨額な投資を行い高い報酬を得て、昔ながらのバンカーに代わり花形となっていた。

  そもそもヘッジファンドという名称は、相場の上げ下げの双方に賭けるヘッジ取引にちなんで付けられた。伝説的なヘッジファンド・マネジャーたちは豪邸や芸術作品、政治運動に大枚をはたき、連続テレビ番組の生みの親にもなった。ヘッジファンド・マネジャーの中には好機を捉えることで大儲けした者もいたが、その富の源は高額の手数料だった。「オルタナティブ」投資という言葉が持つ一種の神秘性が、より多くの貯蓄家を引きつけた。

  ところが事態は一変した。ヘッジファンド業界は過当競争となり、多くのファンドが利益を上げられなくなった。時を同じくして、ゼロ近辺の金利を背景に世界的な株価が急伸し、投資家はヘッジファンドに背を向け始めた。今では、この3兆ドル規模のヘッジファンド業界は、伝説的投資家ウォーレン・バフェット氏から大学生に至る多くの人から、高額の手数料は暴利だとして悪者扱いされている。

リターンの推移
リターンの推移
Bloomberg

現状

現在、投資家は手数料を引き下げなければ資金を引き揚げると、ヘッジファンドに圧力をかけている。16年には、金融危機後初めてファンドからの資金流出が流入を上回った。流出額は計700億ドルで、資産全体の約2.5%にあたる。イリノイ州、ニューヨーク州、ケンタッキー州、ロードアイランド州など、米国の州の年金基金はヘッジファンド投資を手仕舞うか、縮小した。

  こうした動きのきっかけになったのは、全米最大の年金基金であるカリフォルニア州職員退職年金基金(カルパース)だった。カルパースは、ヘッジファンドは手数料が高過ぎる上にあまりにも複雑だという結論を下し、14年に資金を引き揚げ始めた。大学基金、財団、保険会社も追随したため、閉鎖に追い込まれるヘッジファンドが増えた。

  ファンドの過去数十年間の平均年リターンが15%に達していたベテランのヘッジファンド・マネジャー、リチャード・ペリー氏は自身の投資スタイルがもはや通用しないと述べて、負けを認めた。ゴールドマン・サックス・グループでやり手のトレーダーとして鳴らしたエリック・ミンディッチ氏も、自身のヘッジファンドを閉鎖した。16年までの8年間、ヘッジファンドの平均リターンは株式のリターンの約4分の1にとどまり、主要債券指数も下回った。

  ヘッジファンドの低リターンの理由として低金利、コンピューターが動かす市場、政府規制を挙げる者もいれば、インサイダー取引のスキャンダルを挙げる者もいる。だが、ドナルド・トランプ氏が大統領に就任し、スティーブン・ムニューシン氏を財務長官に起用するなど、元ヘッジファンド・マネジャーを重要ポストに据えた後、リターンは回復した。

背景

  マクロ経済学の始祖、ジョン・メイナード・ケインズ氏こそが世界初のヘッジファンド・マネジャーだったとの見方がある。同氏は1920年代と30年代に通貨、コモディティ、株式に投資していた。1949年に自身のファンドを開設したアルフレッド・ウィンスロー・ジョーンズ氏は、初の株式ロング・ショート戦略マネジャーと考えられている。

  それでも1990年代までは、ヘッジファンドは主に超富裕層向けだったため、一般投資家はヘッジファンドには縁がなかった。その後、ジョージ・ソロス氏が1992年にポンド売りを仕掛け、相場を支えようとしたイングランド銀行(英中銀)に勝ち、ポンドを暴落に追い込んだ。

  1998年には、ジョン・メリウェザー氏が自身のファンド、ロングターム・キャピタル・マネジメントで40億ドルの損失を出し、危うく金融危機を招きそうになった。2000年代初頭には、機関投資家がハイテクバブル崩壊などの混乱の中、元本を守ろうとヘッジファンド投資を開始し、ヘッジファンド人気は高まった。

  ヘッジファンドの一般的な報酬体系は「2:20」と言われる。すなわちファンド利益の20%相当の成功報酬に加え、運用残高の2%の手数料を受け取る(一般的なミューチュアルファンドの2倍余り)。ヘッジファンドの規模が大きくなれば、平凡な運用成績のマネジャーは運用報酬よりも、「2%」の手数料の方が多くなる。

  さらに、複数のヘッジファンドを比較的小口の機関投資家や準富裕層に販売できるよう、「ファンド・オブ・ファンズ」という複数のヘッジファンドに分散投資するファンドが生まれた。これらのファンドは通常、さらに別の手数料を受け取る。

論争

  フロリダ州の年金基金など、多くの大口の機関投資家は、ヘッジファンド投資によりボラティリティー(変動性)が縮小し、下振れから資産を守れるとして、ポートフォリオの分散投資においてヘッジファンドは重要な役割を果たすと主張する。

  ヘッジファンドは、「アルファ(リスク調整後の超過リターン)」追求を通じて「絶対リターン」を目指す。主要株価指数に連動する低コストのファンドでもマネジャーの判断に基づく大半の戦略をアウトパフォームしているため、運用成績低迷に対する批判には、アクティブ運用とパッシブ運用のどちらが良いかという幅広い論争も反映されてきた。

  著名投資家、ウォーレン・バフェット氏は、ヘッジファンドは通常、運用成績が悪い時でも手数料を徴収するとして批判しており、「そうした高い手数料は、魔法のようなことをしてもらえるという考えを顧客に売るのに使われている」と指摘した。大多数の人は、今後ファンド数が減少し、手数料も下がるとみている。ヘッジファンドの唯一の明るい材料は、コンピューターが売買を判断するクオンツファンドが今でも多額の資金を呼び込んでいることだ。

原題:Hedge-Fund Swagger Sinks Along With Profits and Fees: QuickTake

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