出光興産の公募増資による新株発行の差し止めを求めた出光創業家の仮処分申し立てに対し、東京地方裁判所は18日、請求を退ける決定を下した。

  決定要旨によると、東京地裁は、支配権を巡る争いにおいて出光の経営陣が自らを有利な立場に置くとの不当な目的が存在したと一応認められるとした上で、新株発行の主要な目的であるとまでは断定できないと指摘。新株発行が「著しく不公正な方法」により行われたものであるということはできないと判断した。昭和シェル石油株取得のための借入金の返済期限を12月に控えているため、返済資金を新株発行により調達する合理性が認められるとしている。

  出光創業家は決定を受け、東京高裁に即時抗告の申し立てを行ったと電子メールで報道陣に通知した。その理由として、新株発行は既存株主の議決権比率を「希釈化する目的で行われるものであることを看過した不当なものであり、到底容認することができない」とコメントした。

  出光興産は3日、発行済み株式総数の3割に相当する4800万株を発行して資金を調達すると発表。新株が発行されれば、かねてより昭和シェル石油との合併計画に反対していた創業家の持ち株比率は33.92%から26.09%に低下し、合併決議を単独で否決できる比率を下回る。創業家は、新株発行は現経営者の支配権維持を主要な目的としており、「著しく不公正な方法」と主張し、発行差し止めを請求していた。

  出光興産は、調達資金のうち255億円をベトナムのニソン製油所など海外投融資に充当するほか、112億円を国内投資、155億円を研究開発資金に振り向け、残りを昭シェル株取得時に調達した短期借入金の一部返済に充てる計画としている。出光は12日、公募価格を1株2600円に決定し、調達額は1186億円となる。払込期日は20日。

昭シェル株は上昇

  出光興産の終値は前週末比3%安の2646円と、約8カ月ぶりの安値。公募増資発表前の3260円から約2割下げた。一方、昭シェル株は4.3%高の1175円と、この2週間で1割強上昇。調査会社スマートカルマでアナリストを務めるトラビス・ランディ氏は、出光との合併の可能性が高まったことにより、昭シェル株は上昇したと解説した。

  過去に株主側のアドバイザリーとして、第三者割当増資の差し止め仮処分事案を手掛けた経験を持つAIP証券の澤田聖陽代表取締役は18日、今回の地裁決定について「予想通り」と指摘。情報量の限られた株主側から、会社の主張する資金使途の非合理性を明らかにするのは容易でなく、「こういう判決が極めて出やすい」という。その上で、希薄化の目的が明白な中で「裁判官が形式主義に陥ってしまうと日本のコーポレートガバナンス(企業統治)上問題になる」と説明する。

  ジェイ・キャピタル・パートナーズの田中博文社長は、高裁でも地裁と同じ決定が出た場合に、「このまま創業家が黙っているとは思えない」と述べた。公募増資後に創業家が株式公開買い付け(TOB)で従来の議決権比率まで買い戻すという発想は「十分あり得る」とし、そのための資金の出し手も「間違いなくいるだろう」と指摘。その結果、公募増資が実施されたとしても、「創業家との対立構造は変わらない」との見方を示した。

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