東京電力ホールディングスは、事業遂行の責任と権限を明確化するために導入を検討している原子力発電事業の社内カンパニーで独立採算を目指す。6月に同社会長に就任した川村隆氏が日立製作所の再建時に活用した社内カンパニー制を導入し、費用削減努力による原発事業の採算性向上を目指す。

  川村会長は13日のインタビューで、同社の保有する原発や火力、再生可能エネルギーなど全ての発電所で経済性を見直しており、「原発のうち幾つかは過酷事故対策や使用済み核燃料の再処理などの費用分担を考慮した上でも、経済性が出るものが残る」との見通しを示した。原発カンパニーも「独立してやっていく格好でないと、民間会社の中のカンパニーとしてはおかしい」との考えを示した。

  2011年の福島第一原発事故以降、新たに見直された新規制基準への対応で全原発が停止する中、原発関連費用は増え続け、再稼働を目指す柏崎刈羽原発の安全対策費だけでも6800億円に上る。

  5月に発表した再建計画には、19年度以降の原発再稼働と原発事業などで他の電力会社と連携し、収益拡大を目指す方針が盛り込まれている。ただ、原子力規制委員会や立地自治体から再稼働の理解は得られておらず、再稼働した場合でも原発利用に反対する周辺住民の差し止め訴訟の結果次第では停止を迫られる可能性もある。

原子力は必要

  川村会長は「安全保障上、日本で原子力技術を維持する必要がある」と強調し、「民間企業だけでは国民に理解していただくための運動が足りないかもしれない」と述べた。今後見直しに向けて議論が始まるエネルギー基本計画で、国の原子力発電推進の意向や原発事業者への関与が強まると、国営化という考え方もあり得ると指摘。その場合には、企業として利益を追求し発展していく意欲が失われる恐れを解消する必要があるとの考えを示した。

川村会長
川村会長
Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

  日立の社長兼会長として手がけた再建の実績が買われ東電HDの新会長に就任してから間もなく3週間。原発事故のほか、柏崎刈羽原発の免震重要棟の耐震性不足や防潮堤の液状化懸念など東電HDの引き起こしてきた事態の根底に、情報共有を妨げる組織としての問題があると認識したという。原子力・立地本部と福島復興本社、新潟本社など複数の組織にまたがる原発事業では体制を改め、原発カンパニーに統一する。また「社員の意識も自由競争を経験してきた会社とは違う」と述べ、意識改革を進める方針を示した。

どう対処するか

  川村会長が議長を務める取締役会では12日、早期に解決すべき課題をリストアップし、今後の計画を練り始めた。その課題の中には、原子力規制委員会から早期に意思決定を求められている福島第一原発に溜まり続ける汚染水の海洋放出問題や、福島県から要請を受けている福島第二原発の廃炉問題も含まれる。規制委は、東電HDに再び原発を運営する適格性があるかを見極める上では、どう福島県民と向き合って主体的に対処するかが重要な点だと指摘している。

  福島第一原発から出る汚染水のうち除去が困難なトリチウムを含んだ汚染水は全てタンクで保管しており、2年以内にタンクを増設する土地の余裕もなくなる。規制委の田中俊一委員長は4年前から膨大な汚染水から微量のトリチウムを取り除くのは現実的でなく、海洋放出すべきだと主張。準備には2年程度の時間を要することから、早期に「主体的」な意思決定をするよう同社に迫っている。

  一方、政府は有識者を集めた会合で通じてトリチウム汚染水の処理方法について地層注入や海洋放出など5つの選択肢をまとめ、さらに別の委員会で処理方法の社会的影響についても風評被害、被ばく被害などの観点から専門家に意見を求め最適な方策を探っている。

  川村会長は「われわれが依頼して利害関係者に集まっていただき、国の委員会をもっと早く動かすべきだったと反省している」と述べ、委員会に対しては前倒しで結論を出すよう働き掛ける考えを示した。規制委が委員会に先駆けて東電HDの主体的判断を求めていることに対しては、「事故を起こした当事者の意見だけでは嫌だと言う人もいる」と述べ、委員会の結論を待つ考えを示した。

  福島県知事や県議会から全基廃炉の要請を受けている福島第二原発に関しては、「結論を何年も引っ張ってきているのは申し訳ない」と陳謝し、全発電所の経済性の評価が終わり次第、早期に結論を出したいと述べた。

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