日銀が掲げる物価安定目標について、安定的に2%を超える状態は「実現しない」とみるエコノミストが6割に達することがブルームバーグの調査で明らかになった。

  消費者物価指数(除く生鮮食品、コアCPI)前年比の実績値が安定的に2%を超える状態が将来的に実現するかと聞いたところ、回答した42人のうち「はい」は16人にとどまり、26人が「いいえ」と答えた。43人を対象に7-12日に調査した。

  19、20両日の金融政策決定会合は全員が現状維持を予想。黒田東彦総裁の任期中に長期金利の目標(10年物国債金利がゼロ%程度)を引き上げるという予想は4人と6月の前回調査から減少した。

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  日銀は昨年9月、金融調節方針の操作目標をお金の量から金利に転換する長短金利操作を導入したが、物価上昇の歩みは遅い。7日には欧米の金融引き締め観測を受けて長期金利が上昇したため、指定した金利水準で金額に制限を設けずに国債を買い入れる指し値オペを5カ月ぶりに実施し、上昇を抑えた。

  シティグループ証券の村嶋帰一チーフエコノミストは、目標達成までの道のりが険しい中、長期金利の引き上げといった「政策変更は難しくなる」と指摘。日銀は現在の政策で「持久戦を戦っていく方針とみられる」と分析する。

コアCPI

  日銀は今会合で新たな消費者物価前年比の見通し(政策委員の中央値)を示す。4月時点の見通しは2017年度1.4%上昇、18年度1.7%上昇。物価目標の2%に達するのは「18年度ごろ」との見通しは据え置かれた。

  5月のコアCPIは0.4%上昇とエネルギーを除くと横ばいにとどまっており、調査では17、18年度の見通しは下方修正されるとの見方があった。

  2%達成時期については、維持か先送りかで見方が分かれた。野村総合研究所の井上哲也金融ITイノベーション研究部長は「19年度のどこかとした上で、実質的には半年程度先送りされる可能性がある」という。

  東海東京調査センターの武藤弘明チーフエコノミストは、現時点で18年度は「夢を語れる」ため、同年度の目標達成を「メインシナリオとして維持してくるだろう」とみる。

公約

  2%目標の達成が長引いた場合、金融緩和の出口時点の損失への懸念が増大する。コアCPIが安定的に2%を超えるまで、日銀が供給するお金の量であるマネタリーベースの拡大方針を継続するというコミットメント(公約)を見直すという見方もある。

  三菱UFJモルガン・スタンレー証券の六車治美シニアマーケットエコノミストは「マネタリーベースを拡大していくと、日銀の負債サイドでは当座預金残高が膨張を続け、潜在的な出口のコストが大きくなる」と指摘する。

  大和証券の野口麻衣子シニアエコノミストも「あまりにも長期にわたり実現しないことが確認されることで、あらためて『総括的な検証』を実施し、コミットメントを見直さざるを得なくなる可能性もあるだろう」という。ただし「黒田総裁の任期中に見直す可能性は極めて低い」とみる。

ETF

  日銀が年6兆円ペースで指数連動型上場投資信託(ETF)を買い続けていることについて、株式相場をゆがめているという批判も出ている。黒田総裁は6月16日の決定会合の会見で、物価目標2%の達成前に購入を減らす可能性について「理論的にはあり得る」との見方を示した。

  クレディ・スイス証券の白川浩道チーフエコノミストは、ETF購入額は18年度から減少し、19年度に購入を停止すると予想。ETF購入減額の表明は18年1月会合になるとみる。ソニーフィナンシャルホールディングスの菅野雅明チーフエコノミストも、株価が年初来高値を更新することを前提に、「黒田総裁退任前の1月に年間3兆円に減額する可能性が高い」と分析する。

  こうした見方はまだ少数派にとどまっている。三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小林真一郎シニアエコノミストは、日銀に「ETF購入が株価を適正価格以上に押し上げているとの認識」はあっても、見直しが政策変更ととられかねないことや、一時的な株価の下落を誘発するリスクがあるため、「目先は見直しの可能性は低い」としている。

都議選

  2日の都議選で自民党が大敗したことが、日銀にも影響を及ぼすとの見方もある。明治安田生命保険の小玉祐一チーフエコノミストは「都議選は日銀総裁人事に少なからず影響を及ぼす可能性」があると指摘。安倍晋三首相のカラーを抑え各方面に配慮した人事を行う必要上、黒田総裁の再任の可能性は低下したとみる。首相と近く経済政策の助言役を務める本田悦朗駐スイス大使も「あまりに『お友達色』が強すぎることから難しくなった」との見方を示した。

  BNPパリバ証券の河野龍太郎チーフエコノミストは、自民党内で安倍首相と距離を置く議員を中心に「効果が小さく弊害の大きい異次元緩和は手じまいすべきとの意見が聞かれるようになっている」と指摘。首相の求心力低下でアベノミクスの修正機運が広がり、「物価が上昇する前に日銀がマイナス金利や長期金利の誘導目標の修正を迫られる可能性も排除できない」という。

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