三井物産は投資先からの資金回収の早期化を進める。今後、立ち上がりを予定している独立系発電(IPP)事業では発電設備が完成した段階で出資権益を売却することも検討する。投資の収益性を高めるとともに、回収した資金を新たな投資へと振り向ける。

  松原圭吾最高財務責任者(CFO)が12日、インタビューで述べた。一般的にIPP事業は建設後の運営にまで関わることで、20年など長期にわたり安定的に利益を計上できる特徴を持つ。ただ、今後は案件によって建設完了後など早い段階で自社権益をファンドや電力会社などへ売却することも行う方針。「早期にまとめてキャッシュを回収することで収益性向上にもつながる」という。

  注力するヘルスケア分野でも資金回収を進める。2011年に病院事業を手掛けるマレーシアのIHHヘルスケアに出資して以降、アジアで糖尿病関連事業を強化するため、関連企業への投資を進めてきた。企業価値を高めた上で新規株式公開(IPO)や株式の一部売却を検討する。前期(17年3月期)にはIHH株の一部売却で249億円の資金を回収し、146億円の売却益も得た。

  今期(18年3月期)から3年間の新中期経営計画では、資産売却により7000億円の資金を回収する計画。有利子負債残高を増やさないためにもフリーキャッシュフローの黒字化を掲げており、回収した資金は最大1兆9000億円を見込む新規投資や株主還元に充てる。

鉄鉱石価格は増益要因

  松原CFOは「常に全体のポートフォリオを見直し、戦略的な意義が薄れた投資案件についても早期に資金回収を進めていく」と説明。資源分野では「環境負荷の観点から一部の石炭資産については売却を図っていきたい」との考えを示した。49%を出資するオーストラリアのドーソン炭鉱については、権益の一部売却に向けた取り組みに入った。

  今期の業績は、資産売却に伴う利益計上や資源価格の上昇が寄与して連結純利益で前期比4.5%増の3200億円を見込む。「原油価格は想定内で推移している」として、当面、北海ブレント先物原油は1バレル=45-55ドルの範囲で推移するとの見方を示した。

  鉄鉱石の1ー3月の平均価格は1トン=86ドルと前年同期と比べて8割高い水準だった。鉄鉱石価格は三井物産の業績には3カ月遅れで反映されるため、第1四半期(4-6月)決算に増益要因として寄与すると述べた。

ブラジルでの穀物集荷事業は苦戦

  最重要課題と位置付けるのがブラジルでの大豆などの穀物集荷事業の立て直し。穀物メジャーから人材を引き抜くなどの対策を図り、前期は12億円の赤字とその前の期の302億円の赤字からは改善した。ただ、「マーケットはさらに悪くなっており、輸出マージンが十分に取れない状況。非常に苦戦している」。穀物の主要産地であるブラジルでは競争が激しく、米カーギルなど一部企業を除けば「ほとんど全事業者が赤字の状況」だという。

  三井物産では事態打開に向けて現地の複数企業と提携交渉を進めている。穀物集荷に加えて搾油事業や飼料用の餌となる大豆の搾りかすの生産事業にまで乗り出すことで利益を生み出すことができる提携につなげたい考え。こうした赤字企業の業績改善をてこに非資源分野の純利益を前期の1400億円から20年3月期に2000億円に拡大することを目指す。

  米国の経済状況については「利上げをどんどんできるほど強くはない」と指摘。ドル・円相場は「1ドル=115円を突き抜けてさらに円安が進むのではなく、110円の辺りにとどまり狭い範囲で推移する」との見方を示した。中国については、人民元の管理を強化し海外送金を制限していることからも「いきなり資本が流出して経済が大きく痛むような状況はすぐには考えにくい」と述べた。

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