インドのモディ政権は先月、債務に苦しむ国営航空会社エア・インディアの一部もしくは全てを売却する計画を基本承認した。

  同社はロンドンのヒースロー空港近くの商業スペースや東京や香港、それにナイロビの土地なども保有する。いずれも最盛期に購入した資産だ。同社は1960年代の古き良き時代、灰皿をデザインするためシュールレアリストのサルバドール・ダリ氏を起用したり、国内の現代アーティストに機体の塗装を委託したりしていた。

  だが今は約80億ドル(約9100億円)の債務に苦しんでいる。赤字の航空事業に加え、子会社5社や合弁、計2万7000人の従業員、労働条件改善を求めストライキを繰り返してきた労働組合を抱えている。

ムンバイ(チャトラパティ・シバジ)国際空港に着陸するエア・インディア機
ムンバイ(チャトラパティ・シバジ)国際空港に着陸するエア・インディア機
Photographer: Dhiraj Singh/Bloomberg

  85年の歴史を持つエア・インディア。その少数株式であっても売却が容易でないことは想像に難くない。政治的な反対が強く、20年近く前に少なくとも1度は断念している。モディ政権はこれから、売却の方法やどの程度売却するかを決める必要があるが、最も重要なのは同社の累積債務をどう扱うかだ。

  インディゴやスパイスジェットという格安航空会社(LCC)に押され、エア・インディアの国内市場のシェアは10年前の35%から約13%に低下した。

  インド民間航空管理局のトップを務めたカヌ・ゴハイン氏は、「エア・インディアの子会社その他を含む全資産の購入に加え、累積債務も引き継いでくれる担い手を見つけるは至難の業だろう。税金がこの組織に投入されてきたが、非効率と無能力を助長させただけで、それこそが最大の負債だ」と述べた。

  エア・インディアの広報担当者はコメントを控えた。プサパティ民間航空相の事務所にインタビューを求めたが返答はなかった。ジャイトリー財務相は5月、エア・インディアにつぎ込んできた資金を教育のために使うことができたと国営放送局に語っている。

ロンドンの空港にエア・インディア機で到着したビートルズのジョージ・ハリスン(1968年1月)
ロンドンの空港にエア・インディア機で到着したビートルズのジョージ・ハリスン(1968年1月)
Photographer: George Stroud/Express/Hulton Archive via Getty Images

  そうした中で、既に1社は動き出している。民間航空でインド最大手のインディゴが6月28日、エア・インディアの国際線業務、あるいは同社全体の航空事業を買収する用意があると表明。政府が売却を承認したまさにその日だ。ただインディゴの株主は喜ばなかった。同社を運営するインターグローブ・アビエーションの株価は29、30両日合わせて約8%下げた。

  投資家懸念を和らげようと、同社のオーナー、ラフル・バーティア、ラケシュ・ガングワル両氏は7月6日に電話会議を開催。低コストの長距離路線をインディゴで始めたい意向を示し、エア・インディアの国際線事業を取得すれば計画の実現が早まると訴えた。買収すれば直ちに海外路線と経験豊富な社員を手に入れることができるからだ。「われわれにとってエア・インディアの国際線事業はカンバスであり、新しい画用紙だ」とガングワル氏は述べた。

原題:Air India’s Salvador Dali Ashtrays and Surreal Debt Cloud Sale(抜粋)

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