安倍晋三政権の内閣支持率が低迷する中、今年度補正予算を視野に積極財政を求める声が早くも政府・与党の一部から上がり始めている。ただプラス成長下での追加歳出の効果を疑問視する指摘もある。税収落ち込みにより財源確保も困難で、財政再建とのジレンマも見え隠れする。

  内閣官房参与の藤井聡京都大学大学院教授は10日の取材で「財政拡大は必ず国民の評価を得る。景気の回復を通して結果的に支持率回復にもつながっていく」と主張した。10兆円超の大型経済対策が「効果的だ」とし、補正予算の必要性を指摘。財源は国債発行で補うとの考えを示した。

  2日の東京都議選は、加計学園の獣医学部新設問題などの影響で内閣支持率が急落した直後に行われ、自民党の議席は57から23まで半減した。その後、実施された世論調査でも、軒並み30%台となり、第2次安倍政権発足後の最低水準を記録した。2012年12月の第2次安倍政権発足後、7度にわたり補正予算を編成した度に支持率が回復傾向を示したことも、大規模経済対策を求める背景となっている。

  三井住友アセットマネジメントの渡辺誠シニアエコノミストは6日の取材で、憲法改正など政権がやりたい政策は支持率が回復しないとできないと指摘。安倍政権は「支持率回復のためには景気を良くしなければならず、現状の拡張的な財政金融政策を進める」と予想する。

  積極財政を求める意見は自民党の若手議員からも出ている。衆院2回生らによる「日本の未来を考える勉強会」は5日、萩生田光一官房副長官に財政拡張を求める提言を提出し、消費増税凍結か税率5%への引き下げ、20年度基礎的財政収支(PB)黒字化目標撤廃などを求めた。

  同会呼び掛け人代表の安藤裕衆院議員は7日の取材で「まだデフレから抜けきっていない。今は積極財政の時期だ」と語り、国債を財源に10兆円規模の補正予算を編成する必要性を訴えた。

  安倍首相はまずは内閣改造と役員人事を行い、政権の立て直しを図る。共同通信は12日、首相が8月3日にも実施する内閣改造で、閣僚19人の半数以上を入れ替える方向で検討に入ったと報じた。麻生太郎副総理兼財務相、菅義偉官房長官は留任させる意向を示している。

景気は好調

  足元の景気状況は悪くはない。1-3月期の実質国内総生産(GDP)は、輸出が堅調な中で消費が持ち直し、5期連続のプラス成長となった。5期連続はリーマンショック前の06年4-6月期以来約11年ぶりだ。3日発表の日銀短観(6月調査)の大企業・製造業の業況判断指数(DI)も3期連続で改善した。

  第一生命経済研究所の星野卓也副主任エコノミストは6日の取材で、「景気も良い状況。財政出動の理由付けが難しい」と述べ、補正予算を編成しても前年の経済対策の剥落による影響を抑える程度のインパクトにとどまるとの見通しを示した。人手不足の状況で、公共投資の上積みはしずらいこともあり、「大規模にするにしてもやることがない。効果が見込みにくい」と指摘した。

  財源も悩みの種だ。財務省が5日公表した16年度決算概要によると、税収総額は7年ぶりに前年度を下回り、補正予算の財源に充てられる純剰余金は3782億円にとどまった。国債発行に頼らざるを得ないとの見方もあり、財政健全化は遠のく。

  第一生命経済研究所の星野氏は「財源がない。財政健全化の中間目標も来年には控えている。そこにジレンマがある」と述べた。国債費の使い残しなど、今年度予算の不用額1兆円弱を想定しても補正予算の規模は「3兆出すのもしんどい」とし、前年度第2次補正(3兆2869億円)を下回るとの見通しを示した。

  政府は財政健全化のため、20年度までの基礎的財政収支(PB)の黒字化を掲げる。中間目標として、18年度に収支の赤字を国内総生産(GDP)比で1%程度に抑える方針も示している。自民党内には、財政規律を重んじる意見もある。  

  「日本の政治が一番やらなければいけないことは財政と金融の立て直しだ」と自民党の村上誠一郎元行政改革担当相は強調する。「財政も金融も社会保障も全部、次世代へのツケでやっている」とし、安倍政権が消費税率引き上げを2度にわたり延期したことを「何も分かっていない」と批判した。

 
 

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