ニッセイアセットマネジメントは、経営計画(4カ年)で運用資産残高を現在の10兆円から13兆円へ拡大することを目指す。マイナス金利政策の下で絶対収益型の運用戦略を増やし、投資家ニーズに対応。3月に投資工学開発室を立ち上げたほか、今年度中にも人工知能(AI)を活用したファンドも検討している。

  同社の津田雅義取締役執行役員はインタビューで、一つの戦略や経験だけに頼らず、同じ条件で繰り返し「超過収益を生み出せる複数のエンジンが必要」と話す。1日に大和証券からニッセイAMの上席運用部長兼投資工学開発センター長に就任した吉野貴晶氏は、「マクロ環境の変動が大きい中、有用な戦略を多様化しニーズに合ったものを持っておくことが重要」と言う。

  海外の運用業界でもクオンツ技術の活用や人材を求める動きは広がっている。人間の判断を中心に株や債券に投資してきた米ヘッジファンド、サード・ポイントのダン・ローブ氏も競争力を維持するにはデータとクオンツ技術を使う必要があるとしており、AIを活用したビッグデータ分析のためクオンツアナリストを6人程度採用している。

  ニッセイAMが新設した投資工学開発室は、超過収益を生み出す源泉の開拓に向け、AIも活用する。銘柄選択の際などに重要な情報を取得するツールとして利用する一方、アナリストは分析に特化するなど、「価値の高い情報を運用に結びつけていきたい」と吉野氏は話す。

  京都大学大学院の加藤康之教授は、「マイナス金利下でリスク資産への投資は避けられない一方でリスクを抑制したい投資家も多い」とし、絶対収益型とリスク抑制型投資に2極化する方向にあると指摘。いずれの場合も「超過リターンの源泉を抽出する技術が要求されている」と述べ、AIやビッグデータを活用するなど「資産運用業界も技術開発競争の時代を迎えようとしている」と指摘する。

絶対収益を求めて

  ニッセイAMでは、この5年間で債券やマルチアセットなど絶対収益型の運用を中心に残高が倍増し10兆円になった。津田氏は超低金利の運用下で安定的にリターンが出る商品は限られているとし、「絶対収益を安定的に上げる運用は引き続きニーズに応えられる」と強調する。

  年限6年以下の国債利回りが依然マイナス圏にとどまる中、リターンが1-2%でもマイナスになりにくい商品なら、「今まで預金に安心して預けていた人が第1歩として入ってきやすい」と津田氏は指摘。個人投資家からの資金獲得増にも期待する。

  投資工学開発室は現在、日経ヴェリタス人気アナリストランキング・クオンツ部門で16年連続1位の吉野氏の下にチーフクラスの3人を含めてITに詳しい5人が所属。津田氏は外部からの採用も含めて「良い人材がいればさらに増やす」という。

  海外でも運用業界による人材獲得競争は激化。米シタデルは今年、データサイエンティストの確保に向け、米欧の大学で賞金を賭けてデータ処理と分析を競うイベント「データソン」を18回開催する。政府系ファンドのシンガポール政府投資公社は昨年、クオンツグループを創設しビッグデータの専門家を採用した。

  もっともクオンツ型運用の普及によるリスクもあり、07年には似たような運用手法・銘柄で運用していたファンドが一部投資家の換金売りで一斉に損失が広がる「クオンツショック」があった。ユーリカヘッジによると、クオンツファンドの今年上期(1-6月)の成績は平均でマイナス2.3%にとどまっている。

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