インド・ラジャスタン州の砂漠のような荒れ地を走る幹線道路のすぐ横に、あり得ないオアシスが出現する。「日本株式会社」専用に設けられた1100エーカー超の工業団地だ。

  トヨタ自動車ダイキン工業日立製作所など、そうそうたるグローバル日本企業がここに集まり、インドの混沌(こんとん)としたビジネスシーンから身を守っている。

  ニューデリーから約3時間のニムラナ日系工業団地なら、電力や水力の供給がほとんど途切れない。認可や承認を得るプロセスも合理的で、時に賄賂を求めかねない現地当局者と関わらないで済む。世界銀行のビジネス環境ランキング130位のインドで、ぜいたくすぎるほどだ。あまりの好評ぶりに、日本企業専用の工業団地を別の場所にも設けようという計画が持ち上がっている。

大日精化工業の工場
大日精化工業の工場
Photographer: Prashanth Vishwanathan/Bloomberg

  日本人駐在員に申し分ない特典もついている。カラオケラウンジが3カ所、日本のテレビや雑誌、風呂、ゴルフシミュレーターがそろったホテル、ラーメンからすしまで何でも食べられる日本食レストランも4軒ある。

  日本からインドへの直接投資は金融危機以降に伸び、2016年に約35億ドル(約4000億円)に達した。インドにとって、日本は10番目に大きな貿易相手国で2国間取引は約145億ドル相当。日本は人口が高齢化しているが技術ノウハウを持ち、新市場を求める優良企業を多数抱える。一方、成長著しいインドでは中間層が増え、高品質の製品需要が拡大。毎月、労働人口に100万人以上の若者が加わる。

  日本貿易振興機構(JETRO)のニューデリー事務所付き海外投資アドバイザー、大穀宏氏はインドには日本にないものがあり、日本にはインドにないものがあると語る。インドはさらに、日本製品を東南アジアはもちろん、アラビア海を越えてアフリカ市場まで届ける低コスト拠点としても期待されている。    

ニムラナ工業団地
ニムラナ工業団地
Photographer: Prashanth Vishwanathan/Bloomberg

  ニムラナ工業団地ではこれまでに、工場で働く約1万人分の雇用が創出された。敷地の9割以上が工場で一杯になり、ラジャスタン州の別の場所やグジャラートなど別の州にも広がる予定だ。インドで働く日本企業幹部は、ニムラナ団地のおかげでインドで工場を設立する際に一番大きい障害を克服できたと語る。それは後でもめる心配なしに適正価格で土地を手に入れることができ、地元の当局者に賄賂を渡す必要もなかったことだ。

  三井化学の子会社、三井プライム・アドバンスト・コンポジット・インド社長の寺田英一郎氏は投資にノーと告げられた翌日に条件付きでイエスと言われることがインドではあると語ったが、ニムラナでは問題にならなかった。JETRO担当者と企業幹部が複数の州政府に約10年前に投資を打診。重工業がほとんどなかったラジャスタンの州政府は工業団地に前向きになった。投資は当初は緩慢なスタートだったが、金融危機後にスズキが56%保有するマルチ・スズキ・インディアがインドの乗用車市場を席巻し、大きく利益を上げるようになると、拍車が掛かった。

  ニムラナでは今、ダイキンが工場を拡張中で、従業員を1500人前後から2000人に増やしている。また、インドのモディ首相の出身地でかつて州首相も務めたグジャラート州の新しい工業団地に注目が集まっているという。

ダイキンのクーラー工場
ダイキンのクーラー工場
Photographer: Prashanth Vishwanathan/Bloomberg

原題:Japan Inc. an Island of Calm in India’s Chaotic Business Terrain(抜粋)

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